《第三回偽物川小説大賞》

『枝は腐っちゃただの土か』

 企画URL:https://kakuyomu.jp/user_events/16816700427048998198

 結果&講評URL:https://note.com/tantankyukyu/n/n68e177cbdaa5


 作品URL:https://kakuyomu.jp/works/16816700427049168906


 これは【日本人の一生と神様】をテーマにしたオムニバスのお話です。

 1話目の後日譚に登場する店長の同級生たちにスポットを当てる形にしています。

 主な登場人物は、店長、バイトくん、謎の女性、ひょっとこ、自由研究の女の子、委員長、絵が好きだった女性、オカマ氏、オカマ氏と仲良い人、店長の母、店長の息子(富喜生)の11人です。


 私の書く癖だけでなく、めっちゃくちゃにネタをぶちこんでいるので、大変困惑させたかと思います。一応、工夫も凝らしたつもりだったんですけど、あまり作用しなかったようで、私の技量不足が申し訳ない…。


 では、『神』のネタについて。

 神の種類について、感想で触れてる方もいらしたので、私も自主企画のテーマが『神』だからこそ取り入れたネタを下記にあげます。

 ①聖書

 ・大見出しや作品名の『土』『林檎の実』『無花果の木』『葡萄の枝』

 ・小見出しの『門』

 ・『惟神』の「狭き門」

 ・『後日譚』の「バベルの塔」

 ・『前日譚』の「アダム」と「イヴ」、「土くれ」、「光あれ」

 ②陰陽道

 ・小見出しと『前日譚』、『神様は…』の色、『青』『黄』『朱』『白』『玄』

 ③中国神話

 ・『神無月。』の月の兎と蛙

 ④ギリシャ神話

 ・『前日譚』の「誰でもない」「人喰い巨人」「英雄冒険家」「大洋」

 ・『神楽坂。』と小見出しの「黄の林檎」

※『前日譚』はオデュッセウス関連だったので、「冒険家」という言葉を混ぜました。


 次に全体の構成について。

 大見出しとタイトルでしりとりをしていることと、小見出しの色で、【人間の一生】を暗示しています。『前日譚』の序盤で色に触れたり、「ぐるぐる回る」と言っているのはそのことです。

 小見出しの色はそれぞれ、【青春】【朱夏】【白秋】【玄冬】を表しています。章ごとに四つの人生の時期での感じる苦悩を描こうとしました。

『青』では、多感な時期であることと、学校という狭い世界故の人間関係での苦悩を描こうとしました。

 ふたりの少女の自殺の原因を明言しなかったのは、“大したことのない小さな苦痛”の積み重ねがだったからです。明確なきっかけではなく、じんわりと限界を迎えました。本人たちにもハッキリ説明は出来ません。また、“ストレスの積み重ね”というテーマについて、『白』を少し関連した話にしました。

『朱』はより広い世界、社会に出たあとのこと。『青』からいろんなことが変化して、少しそれにも慣れてくる時期。その中で、特に年齢に依らない個々の能力を意識して、自分と向き合う苦悩を込めました。

『白』は『青』『朱』の後にあるもの。この時期には、それまで生きてきた証や結果のようなものが現れている頃だと私は思います。その結果を客観的かつ感情的に描くことで、『白』の時期にある父親の【身から出た錆】をより明白に表現しようと思いました。

 この話で、父親と息子の関係を取り上げたのは、子どもの成長過程における父親への意識についても取り上げたかったからです。

 心理学の話で、幼少期に子どもと絶対的な上下関係を気づいてしまうと、成長して能力的に同等、もしくは追い抜かれたときに良好な関係が築けないというのがあるそうです。結局、親も神ではなく人間だからしょうがないということです。

 また、前述したように苦痛をハッキリ明言できなかった『青』の少女たちに対して、こっちのオカマ氏はハッキリ父親を罵ります。これは彼が成人していることが大きな要因のつもりで書いていたのですが、そのストレスを抱え続けたままでも、成人まで生きられたのは、母親や友だちといった他の人との関係があったのからかなとも思っています。

『玄』は【人生の終わり】を。ただ、死ぬ本人ではなく、遺される人に焦点をあてるため、あの二つの話を書きました。

 私は命は廻るものだと思います。それは魂の話ではなく、社会や共同体としての話です。その人が死んでも、後には遺される人がいて、その人のことはなくなりません。その人の何かが他の人の一部を形成していたりします。という意味を込めて、富喜生くんにミミズの本の感想を書いてもらいました。

 最後の『かみ』という題は、感想文女性の長髪神?謎の女性という私の言葉遊びです。

 ちなみに、この女性は『後日譚』の女性や『前日譚』『神無月。』の語り手と同一人物的な存在で、『前日譚』でいう通りの「箱」でした。


 そして、『黄』。黄色は五行陰陽道で、季節の節目を指しますが、この作品では人生で耐えられなくなって、自殺するタイミングとしての意味を込めました。

 なので、『神無月。』の小見出しに『黄』と『死』が入っています。

 また、人称をややこしくしていたのは、『僕』をこの『神無月。』で自殺したキャラクターということにしたかったからです。

同じく『僕』という一人称ですが、店長、バイトくん、富喜生は生きています。

 でも、自由研究の女の子と委員長、あと絵が好きな『僕』は死んでいます。ただ絵が好きな『僕』はその女性の一側面なので、何度殺されても甦って、また殺されています。

 つまり、実際に自殺したのは『青』の女の子二人だけともいえるので、彼女たちの話の後に『神無月。』を置きました。

 また、9話中5話目の話に置くことで、【死は人生の中にあって非現実的なものではない】という気持ちも込めています。

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