第五十一話 今後の話(3)


 円香さんから、真子さんを連れてソファーに移動するようにやんわりと言われました。

 多分、真子さんに聞かせたくない話なのでしょう。おそらくは、孔明さんが貴子ちゃんに打ち明けるのでしょう。信頼を得るために必要な事などは思いますが、賭けの要素が大きいように思えます。

 今までの言動や行動から、貴子ちゃんがギルドというか、組織という物をあまり信用していないのは解っています。ギルドを信用してくれとは言いませんが、私たちを信用して欲しいとは思います。私は、貴子ちゃんの味方になろうと思います。

 そして、私の腕に掴まって・・・。胸を押し付けてきている、真子さんも同じ気持ちなのでしょう。


 そして、もう一つだけ・・・。汗の匂いは少なくなっていますが、凄くいい匂いです。抱きしめたくなってしまいます。

 年齢は、聞いた話では、私の方が上だと思います。しかし、年齢以上に開きを感じます。寝ていた時には、真子さんの方が上に思えましたが、今は貴子ちゃんと同じだと言われても信じてしまいそうです。正直な気持ちとしては・・・。羨ましいです。


「真子さん」「ちゃん!」


 訂正されてしまいました。”ちゃん”付けにしないとダメなようです。そして、雰囲気でわかります。真子ちゃんは、こちら側の人間です。身体を寄せてきています。


「えぇ・・・。真子ちゃんは、どの辺りがいいですか?」


 真子ちゃんは嬉しそうに地図を見ています。

 そして、無かった指を誇らしげに出して、指で・・・。私の指に絡めてきます。嬉しいからいいのですが・・・。


「貴子ちゃんの家の近くを希望します!なんなら、一緒の家でもOKです」


「え?」


 想像の斜め上の提案ですが、真子ちゃんが一緒なら私が入り込むことも出来そうです。

 問題は、貴子ちゃんが承諾してくれるか・・・。ですが、持っていき方で、大丈夫な気がします。


「茜さんも一緒に住みますか?」


 それは、考えていますが、今の部屋からユグドたちを移動できるのか?

 多分、できるでしょう。そのうえで、一緒に住む?


 メリットしか無いように感じてしまうのはダメですね。


 私にメリットはあります。真子ちゃんにもあるでしょう。

 問題は、貴子ちゃんにあまりメリットがない事です。何か、メリットを考えなければ、受け入れてくれないでしょう。


「ユグドに相談しなければならないですし・・・。貴子ちゃんにも・・・」


「・・・」


 真子ちゃんの雰囲気が変わります。


「ん?どうしたの?」


「いえ、いえ。それよりも、貴子ちゃんの希望を聞いていると、高くなってしまいますよね?」


 静岡市内で、市街地から外れていると言っても、大きく離れているわけではない場所です。

 真子ちゃんが気にするのは当然なのですが、杞憂です。間違いなく、問題はないです。希望通りの物件がなければ、立ててしまえばいいのです。


「そうね。でも大丈夫だよ」


「え?」


 私は、ソファーの端にいるライに話を振ります。


「ね。ライ。大丈夫よね?」


「はい。お姉ちゃんからは、2億までなら使っていいと言われました」


 2億と来ましたか?

 一回目のギルドからの報酬を全部突っ込むつもりなのですね。


「へ?」


「それだと、いくつかの空き家を買い取って、大きな敷地にしてしまうほうが早いかもしれないですね」


「お姉ちゃんは、”茜さんに任せる”と言っています」


「えぇ・・・。何か、希望はないの?」


「”本邸は別にあるので、拘りは無いです”です」


 一番、困る話です。

 面倒な知り合いと食事に行くときのような感じです。”なんでも”いいと言いながら、提案すると文句を言い出す。貴子ちゃんは、そんな事をしないでしょうけど、思い出してしまいました。


「茜さん。この売り物件とこの売り物件と・・・。繋げて・・・」


 真子ちゃんの提案は理にかなっています。残念なことに凄くいい提案です。


 問題は、家を作り直す必要があることです。


「茜さん。真子さん。お姉ちゃんが話をするそうです。驚かないでください」


 後ろを振り向きますが、円香さんと孔明さんと貴子ちゃんの話は続いています。


 平行存在が可能なのでしょうか?


「真子さんの提案でお願いします」


 貴子ちゃんに変わるわけではなくて、ライのまま、貴子ちゃんが話すのですね。

 本当に、なんでも”あり”になってきました。


 真子ちゃんの提案は、ギルドの位置から見て、浅間神社を越えた反対側の街道沿いです。

 大きな通りに接していますが、後ろは、浅間神社に繋がる山がある場所で、貴子ちゃんが望んでいる広さと環境です。


 道路に面していますが、間口が狭く細長い感じの家です。門を作れば、外からの視線を遮ることができます。

 それでも、車が入っていける幅はあるので、この家を取り壊して、奥にある山に接している家を購入すれば、貴子ちゃんが望む感じになると思います。


「茜さん。静岡市は、木を植えるのに制限がありますか?」


「うーん。無かったと思うよ?」


「それなら、家の子たちを移植しても問題はないですよね?普段は、動かない子たちなので・・・」


「えぇ・・・。侵入者対策?」


「はい。道路には、門を作りたいです」


「あっ!貴子ちゃん。離れでいいから、私も一緒に・・・」


「いいですよ?誰かがいてくれた方が、訪問者への対応が出来ますよね?」


 いい考えです。

 貴子ちゃんへの連絡は、眷属を通して出来ますが、建前が必要です。


 真子ちゃんが”秘書”の役割を持ってくれるのなら、ギルドから出向しているという言い訳も成り立ちます。貴子ちゃんの別邸にギルドの出張所を作ってもらいましょう。眷属を遊ばせておく場所も必要です。


「茜さん」


「え?なに?」


「茜さんも、一緒に住みませんか?」


「え?」


 願ってもない申し出です。


「多分ですけど、真子さんも、茜さんも、寿命が伸びてしまっていると思います」


「え?」「え!」


 真子ちゃん。喜ばない。


「不老ではないとは思いますが、老化が遅いと思います」


「へ?」「おぉぉ!!」


 真子ちゃんを見ればなんとなく想像が出来ます。

 もう人間では括れなくなってしまっていそうです。この話が、知られた時には、間違いなく、私たちは実験動物なみの扱いになってしまうでしょう。


 あぁそれで、貴子ちゃんは私たちを守る意味で、一緒に住もうと言ってくれているのでしょうか?


「それに、茜さんと、真子さんは、私の眷属になるのを拒否した子たちと相性がいいみたいなので・・・」


「・・・」「あっ!」


 眷属が増えるのですか?

 もう、人間を辞めていそうです。


 魔物にはなっているとは思えませんが、”人”の括りからは外れていると考えた方がいいかもしれないです。


「それと、今後の話として、本邸の裏山と別邸の裏山が購入できないか、確認をお願いできますか?」


「山を?」


「はい。家族や、家族が連れて来る子たちが安心して生活できる場所を確保しておきたいのです」


「ねぇ貴子ちゃん。そんなに多いの?」


「多いですよ。スズメとか、椋鳥とか、百舌鳥とか、蝙蝠は、既に数えるのを辞めました」


「全部が、貴子ちゃんの眷属?」


「え?違いますよ。私の眷属は、フィズやダークやアイズやドーンの下に入ることを承諾した子だけです。群れとして、行動をしている子たちは、別ですね」


「ねぇ貴子ちゃん。その子たちも、魔物化しているの?」


「どうでしょう?ライ。知っている?」


「え?」


「魔物になっている者たちもいれば、まだスキルを得ていない者たちもいますが、許可を頂ければ、すぐにスキルを与えます」


「うーん。群れの長だけにしておこう」


「はい。他の氏族も同じでいいですか?」


「うん。お願い」


 何か、貴子ちゃんとライが何かとんでもないことを流れるように決めたように思いますが、気にしないことにしておきます。

 裏山の確保は必須ですね。


 そして、貴子ちゃんが所有する山は出入り禁止にします。ギルドからも通達を出します。いや・・・。出さないほうがいいかもしれないですね。

 そもそも、入れない可能性もありますが、出入り禁止が決定しました。


 別邸の裏山は難しいかもしれませんが、由比の山は持ち主を調べて交渉すれば、可能でしょう。貴子ちゃんの家に行ったときの感じでは、裏山は放棄されている感じがしました。農家があるか確認は必要ですが・・・。あとは、鉄塔でしょうか?観測所とかが無ければいいのですが・・・。

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