第三十六話 治療(8)


「あっ最後のデメリットですが・・・」


「え?はい」


 真子さんが、姿勢を正して私を見てきます。


「”再生”のスキルが発動している状態で、快楽が身体を襲います」


「え?」


「本来、”再生”は、記憶を再生するので、痛みも再生されます」


「・・・」


「”治療”のスキルは、治療中の痛みを快楽に変えます」


「え?」


「これは、私が試せなかったので、デイジーに聞いた話です」


「治療中?」


「この辺りが微妙なのです。痛みが必ず快楽に変わるわけではないようです。スキルで与えられた痛みが、快楽に変るようなのです」


「・・・。それが、デメリット?」


「はい」


 私が孔明さんを見ると、円香さんが私が懸念していることが解ったようです。嬉しいです。


「孔明!茜。リビングに戻るぞ!貴子さん。真子が、治療を受け入れた場合には、どのくらいの時間が必要だ?」


「わかりませんが、概算で良ければ・・・」


「概算で構わない」


「予測では、5ー6時間程度、8時間はかからないと思います。あっ。”再生”のスキルが芽生えてからなので、モモちゃんから考えると、60分くらいの誤差は出ます」


「貴子さんがついていてくれるか?」


「真子さんが、私で良いと言ってくれたら、結晶の提供もありますので、”再生”が終わるまでは、居たいと思います」


「孔明。いいよな?」


「あぁ貴子嬢。ライ殿。お願いする」


「貴子さん。あと、音を遮断する結界をお願いしたい」


「わかりました」


 円香さんが、茜さんと孔明さんを連れて、リビングに移動します。

 ライには、スライムになってもらいます。


 少しだけ恥ずかしい話をしなければならないのです。


「真子さん。恥ずかしいことを聞きますが許してください」


「はい?」


「真子さん。男性との経験は?」


 私の言っている意味が解ったのでしょう。徐々に顔を赤くして、真っ赤になった状態で首を横に振ります。


「一人では?」


 真っ赤な状態から、さらに赤くなって、あわあわして、恥ずかしそうにしてから、首を縦に振ります。

 モモちゃんで顔を隠すようにしているのが、可愛いです。


「ありがとうございます」


「・・・。いえ」


「それで、快楽が身体を数時間に渡って襲い続けます。真子さんが、快楽を感じた時に、どうなってしまうのか解らないので、孔明さんには部屋を出て行ってもらいました」


「あっ・・・」


「最大のデメリットです」


 解ってもらえたようです。

 恥ずかしそうにしながら考えていました。覚悟が決まったのでしょう。真子さんは、私をまっすぐに見てきます。


「貴子ちゃん。治療をお願いします」


「はい。ライ。モモちゃんにも確認して」


「うん!」


 ライがモモちゃんと話を始めます。

 説明が長くなりそうです。


「貴子ちゃん。あのね」


「はい?」


「私、気持ちよくなると・・・。その・・・」


 恥ずかしい話のようです。

 私も経験がないので解らないのです。


「私も経験がないので解らないので、はっきりと聞きます」


「・・・。うん」


「タオルが必要ですか?」


「・・・。うん。あのね。いま、私、こんな・・・。状態でしょ?」


 欠損している方の腕と足を上げて見せてくれました。


「お兄ちゃんには黙って居て欲しいけど・・・」


「大丈夫です。絶対にしゃべりません」


「ありがとう。あのね。私、おむつ・・・。履いているの」


「そうですか・・・。合理的ですね」


「え?あっ。うん。だから、タオルは・・・。ないけど、おむつのままなら・・・」


「そうですか?おむつを交換しながらにしますか?」


「え?」


「妹が生きている時に、おむつを交換していましたし、おばあちゃんが倒れた時にも、病院でおむつの交換を看護師さんに教えてもらったので、出来ます」


「お願いしていい?汚いかもしれないけど・・・」


「大丈夫です。気にしないでください。あっ。孔明さんに内緒だとしたら、大量の使用済みのおむつができると大変ですね」


「・・・。うん。でも、しょうがないよね。その時には、お兄ちゃんに正直に話すよ」


「大丈夫です。ライ!まだ、アイテム袋ある?」


「うん!あっモモは、大丈夫だよ。真子さんと一緒に居られるのなら、何でもOKだって」


「わかった」


 ライから、アイテム袋を受け取ります。

 アイテムボックスよりも、容量は小さいのですが、持ち運ぶのならアイテム袋の方が便利です。時間停止もつけています。


「真子さん。これに、真子さんが汚したおむつやタオルを入れます」


「え?小さいのに入るの?」


「はい。あとで、真子さん専用にしますが、今は私も使えるようになっています。ゲームとかのアイテムボックスはわかります?」


「うん」


「あれだと思ってください。中に手を入れると、中に入っている物が頭の中に浮かびます。取り出したい物を考えると、取り出せます。入れるのは、袋の入口の大きさまでなので、タオルやおむつなら入ります。あとは、どこかに捨ててください。時間停止もついているので、中に入れておけば、匂いが漏れることは無いので、安心してください。このアイテム袋は、真子さんにプレゼントします」


「え?え?よく解らないけど、わかった。私は、他には何をしたらいい?」


「はい。指にはめている義指や、義足の接合器具や、怪我を隠している物を外してください。難しければ、ライが手伝います。あと、汚れると困る物は脱いでくれると嬉しいです。かなりの汗が出ると思います。水分補給が必要になりますが、何かありますか?無ければ、孔明さんに買ってきてもらおうかと思います」


「そうか・・・。汗も・・・。全裸でいい?恥ずかしいけど・・・。貴子ちゃんならいいかな・・・」


「ライ。結界は、外から見えないようにして」


「わかった」


 ライが結界の属性を変更します。


「これで、外からは見えません。安心してください。でも、私とライには見えてしまうのは、ごめんなさい。マナの量が減ってきたら、結晶を追加しなければならないです。結晶は、体内に入れないとダメだと思うので、乱暴にしてしまうかもしれません。先に、謝っておきます。それと、おむつやタオルの交換をしなければならないので・・・」


「うん。わかっている。恥ずかしいけど・・・。あんまりじっくりは見ないでね?」


「そうだ!私も一緒に全裸になってもいいですよ?スライムの姿なので、全裸に価値があるとは思えませんが?」


「え?いいよ。その方が恥ずかしい」


「そうですか?私の身体を見て、あの部分を見て欲しかったけど・・・。自分では、よくわからないから・・・」


「あっ・・・。でも、それは恥ずかしいかな」


「わかりました。諦めます。ライ。最初は、任せていい?」


「うん」


「真子さん。治療を始めます。まずは、真子さんには全裸になって、タオルの上に寝てもらいます。替えのタオルとか、孔明さんに聞けばわかりますか?」


「うん。脱衣所にタオルがあるよ」


「わかりました」


 真子さんが服を脱ぐのを手伝って欲しいというので、手伝います。

 おむつは、パンツ型のおむつなので、履いていた物を脱いでもらって、新しいおむつを下に敷きました。履いてもらってもいいのですが、新しいおむつにかえるのが面倒なので、真子さんと話をして決めました。

 真子さんが、汚れを気にされたので、ライに”浄化”と”洗浄”のスキルを使って真子さんの身体を綺麗にしました。気にするほど汚れていなかったのですが、気になったようです。あとは、事故にあってから、ムダ毛の処理をしていないから恥ずかしいと言い出しました。前向きな気持ちになってくれたようで嬉しいです。でも、さすがに私がムダ毛の処理をするのは違うと思いますし、恥ずかしさの限界を越えてしまいそうなので、治ってから自分でして下さいと言ったら、笑いながら”そうだよね”と言ってくれました。

 初めて、真子さんの笑顔を見た気がします。


 真子さんは、全裸になって横になってもらいます。綺麗な身体です。私よりも少しだけ大きなおっぱいです。大丈夫です。私は、スライムなので大きさは自由自在です。もしかしたら、再生で小さくなってしまうかもしれません。デメリットの一つとして伝えた方がいいかもしれません。


 ライが、モモちゃんにスキルの取得を教えています。


「真子さん」


「はい」


「一つ、デメリットになる可能性がある事に気が付きました」


「え?」


「再生は、簡単に言えば、身体を元に戻すスキルです」


「はい」


「事故から、おっぱいの大きさが変っていたら、元のサイズになってしまいます」


「・・・。え?あっ!大丈夫。元々、このサイズだよ。ブラのサイズもBカップのままだし・・・。あ!お腹のお肉が減る?」


「あっ・・・。減ります。多分、大きなデメリットですね」


「そうだね。迷ってしまう位のデメリットだ!どうしよう!?お腹の肉が減ったら嫌だな!!」


 二人で笑い合います。

 大丈夫なようです。


 モモも順調な様子です。

 もう少しだけかかりそうなので、その間に、飲み物とタイルの準備を行います。


 やっと治療が始められます。

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