第三十七話 治療(9)


 ライがモモちゃんにスキルを取得させている間に、結界から出て、リビングに向かいます。


 茜さんが私に気が付いてくれました。


「貴子ちゃん?どうしたの?何か、問題?」


「貴子嬢。真子は?」


「大丈夫です。デメリットの説明が終わって、真子さんの治療が始まった所です。それで、孔明さんに、お願いがあります」


「なんでも言ってくれ」


「この辺りの地理に詳しくないので解らないのですが、スポーツドリンクを買ってきて欲しいのです」


「わかった。真子が飲むのか?」


「はい。治療時に汗とかで水分が出てしまう可能性が高いこともあり、補給の為に、飲み物が欲しいのです」


「貴子さん。飲み物だけでいいのか?食べ物は?」


「食べられる状況になれるとは思えませんが、治療が終わった時に、食べられる物は有ったほうがいいかと思います」


「わかった。孔明。スーパーがあるだろう?私を連れていけ」


「円香を?」


「そうだ。茜では、料理は不可能だ」


「え?」


 茜さんを見ると、恥ずかしそうに視線をそらしました。本当に、料理ができないのかな?

 料理が出来そうな雰囲気があるのに・・・。そして、円香さんが・・・。料理ができる?不思議な感じがします。


 円香さんは、立ち上がって、冷蔵庫をのぞいています。

 何もないと言っているので、本当に食料が無いのでしょう。考えてみると、真子さんの部屋には、菓子パンの袋やお菓子の袋がありました。食器が使われた形跡がないので、食事は・・・。


「孔明。行くぞ、あと、ゼリーとか、流動食に近い物も買って来よう」


「あっ!円香さん。孔明さん。私たちの食料もお願いします!勝手にお寿司を取ったら怒りますよね?」


「怒らないが、美味しくないぞ?」


「それなら、ピザにします」


「わかった。何か買ってくる。孔明の財布からでいいな」


「あぁ。貴子嬢はどうする?何か必要か?」


「私は・・・。そうですね。何かあれば摘みます。今は、好き嫌いは無いので、何でも大丈夫です。お肉があると嬉しいです」


「わかった。丁度、富士宮には、美味しい肉の店がある。高級肉を買い占めて来る」


「ははは。お願いします」


 円香さんが孔明と買い物に行ってくれるようです。

 結界が有効な間に、車につけられている盗聴器を探すようです。信頼できる車の整備工場があるそうなので、買い物が終わったら、孔明さんは車を整備工場に持っていくようです。円香さんが、私を見ながら言ってくれたので、真子さんから距離を開けてくれたようです。

 確かに、食事の補助は私だけでは難しい可能性があります。でも、全裸の状態の真子さんと孔明さんは会わないほうがいいでしょう。なんとかしましょう。頑張ってみます。


 茜さんだけが残りましたが、今は話をしている時では無いでしょう。


 脱衣所にあるというタオルを・・・。ん?


 そうか、おむつもタオルも・・・。


 ライに、真子さんを飲み込んで貰えば、中で何を出しても大丈夫です。

 でも、ライは大丈夫だとしても、真子さんが恥ずかしさを越えてしまいそうですね。辞めておきましょう。ライの中で大量の汗や涎や排泄をしたとわかったら、真子さんが恥ずかしさで死んでしまうかもしれません。


「茜さん。真子さんの部屋に戻ります」


「うん!わかった。何か、注意することはある?」


「結界で、中が見えないようにしているので、何かあるときには、私かライが連絡に来ます」


「わかった。結界がある限りは大丈夫だと話しておくね」


「ありがとうございます」


「いいよ。貴子ちゃんも無理はしないでね」


「はい。ありがとうございます」


 茜さんは、私をしっかり見て、無理をしないように言ってくれました。

 嬉しいです。


 私を見てくれる人です。


 茜さんは、私が動き出したのを見て、視線をパソコンに戻します。

 何か資料を作っているのでしょうか?

 何か、私が手伝えることがあれば、いいのに・・・。無理ですよね。高校も卒業していない人間に手伝えることは無いのでしょう。


 部屋に戻ると、モモちゃんが少しだけ苦しんでいます。

 身体が魔物に変っているので、当然の反応です。


 真子さんが、モモちゃんを抱きしめています。

 モモちゃんも大丈夫だというように、真子さんの手を舐めます。


 私が来てから2分くらいして、モモちゃんがぐったりしています。


「貴子ちゃん?」


「大丈夫です。真子さん。モモちゃんを呼んでください。あっ。すぐに呼ばないで、ライ。お願い」


 ライが、優しく、モモちゃんを真子さんから離します。

 すぐに始まるとは思えないのですが、始まってしまうと、モモちゃんを傷つける可能性があります。


「!!」


 真子さんとモモちゃんにはしっかりとした絆があるようです。

 眷属になる前にもはっきりとした絆が・・・。


「真子さん。モモちゃんに、真子さんの全ての感情をぶつけるように、呼んであげてください」


「わかった。モモ。モモ。大好き!これからも一緒に居ようね。ずぅーと一緒だよ。私の、私の友達で、大切な大切な・・・。モモ!」


 モモちゃんがライの手の上で立ち上がります。

 解っているのでしょう。パスがしっかりと繋がって・・・。いきなり、モモちゃんが光りだします。

 こんなことは初めてです。


 モモちゃんは最初から真子さんに全てを与えるつもりなのですね。


「ライ!」


「うん」


 介入させてもらいます。

 モモちゃんは、真子さんを助けたい。でも、真子さんは、モモちゃんの犠牲の上に治りたいとは思っていない。


 凄くいい関係です。

 だから、私も全力で支援します。


 真子さんを見ます。

 ”再生”が始まります。


 汗が吹き出します。

 悶え始めます。凄いです。腰が浮いて・・・。絶頂を迎えます。


 おむつとタオルを交換します。


 既に、2回目です。

 まずは、指が復活します。


 モモちゃんが激しく暴れますが、ライがしっかりと抑えています。


「ライ。結晶をお願い」


「うん」


 口だけでは間に合いません。

 ごめんなさい。恥ずかしいとは思うけど、許してください。

 指で広げて結晶を押し込みます。悶えが、激しくなります。声も凄いです。ライに、腕を肩と腰を抑えてもらいます。


 マソが復活したのか、少しだけ落ち着きます。

 足の復活は、まだ始まりません。


 指が先なのでしょう。

 手は殆どが治っています。内部の再生がおこなわれているのでしょうか?


「ライ。結晶を、お願い!間に合わなければ、効率は悪いけど、モモちゃんにも協力をお願いして!」


「うん」


 モモちゃんは、真子さんの状態が解るのでしょう。

 自分のマソを渡そうとしています。全部を渡してしまうと、モモちゃんが気絶してしまいます。そうなると、再生の時間が伸びてしまいます。真子さんの負担が大きくなります。モモちゃんにも頑張ってもらうしかありません。


 昔の欠損を治すのには時間が必要なのですね。そして、それだけ大変なのですね。これは、”治療”がない状態で”再生”を行ったらどうなるのか・・・。

 ゴルフボールくらいの結晶を口に2つともう一つの場所に5つ。モモちゃんに、親指サイズの結晶を20個。


 時間は?


 既に2時間が経過しています。既に、数えるのが面倒になるくらいの絶頂を迎えています。


 一度、リビングに戻って、飲み物を貰ってきましょう。


「ライ。お願い。結晶は、暫くは大丈夫だと思うけど、見えなくなったら、口に入れてあげて」


「わかった」


 真子さんは恥ずかしがると思うけど、結晶を押し込む都合上。足を閉じないようにしている。本当に、ごめんなさい。


 リビングに戻ると、円香さんと孔明さんが言い争いをしています。

 茜さんは、リビングのテーブルではなくてソファーに移動していました。


「あっ貴子ちゃん。こっちこっち」


 茜さんに呼ばれてソファーに移動します。


「どうしたのですか?」


「ん?あぁあの二人?」


「はい」


「円香さんが、孔明さんのカードを使って、凄く沢山のお肉を買ったらしくて、その言い争い」


「え?大丈夫なのですか?」


「大丈夫だと思うよ。どうせ、孔明さんが折れることになって終わりだよ」


「そうなのですか?」


「うん。それよりも、真子ちゃんは?」


「そうでした。ゼリーと飲み物を持っていきます」


「そっちの袋に入っているよ」


「わかりました」


 中身を見ると、飲むゼリーが二つとスポーツドリンクの500mlが2本入っています。

 よく見ると、袋が10袋あります。中身は同じように仕分けされています。


 袋を持って、部屋に戻ります。

 三つもあれば足りるかな?

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