第二十七話 治療(1)


 皆を見送りました。


 ユグドの分体で覆う計画は、主殿が来てから、他に何か方法がないか聞いてからにします。ユグドに負担をかけたくないこともあるのですが、ギルドにはギルドで、主殿に依頼をしてでもセキュリティを高める方法を考えて欲しいと思います。お金しっかりと払いましょう。


 孔明さんが内通していた組織があるのです。情報管理は、これからはもっと厳しくした方がよいと思います。

 孔明さんが横流ししたアイテムが、ギルドから安く売り出されれば、自分たちが騙されたと考えるでしょう。

 あの手の組織は、”ドラマ”では自分たちが下に見ていた者たちから反撃されると、自分たちがやってきたことを棚に上げて、暴力的な手段を使ってくる可能性があります。狙われるのは、円香さんかな?私がターゲットになるとは思えない。弱い所から攻めてくる。私か千明が候補かな?それとも、真子さんの状況を確認して・・・。真子さんがターゲットになるのかな?


 リビングで、資料の作成を行って、主殿とライの到着を待っていることにしました。

 蜂蜜は、ギルドに売るのですが、全部ではありません。2瓶は私が確保しました。私が適正価格で買い取ります。必要な事です。後で、主殿に言わなければなりません。


 ポーションを作るために必要になってきます。

 主殿のレシピにも、蜂蜜を使うことで、”味”が変わると書かれています。”味”は大事なことです。ユグドの協力で、ポーションの”素”は入手できそうですが、それ以外の素材にも気を使わなければなりません。

 そして、問題はポーションの効き目を確認する方法がない事です。ポーションの取り扱いも考える事が多く存在します。


”クォ”


”クフォ!”


 クシナとスサノが、ベランダで鳴いています。

 主殿が到着したのでしょうか?


「お姉ちゃん!」


 ベランダに居たユグドが戻ってきました。


「どうしたの?」


 どうやら、主殿が到着したみたいだな。ベランダに、2匹の猛禽類が増えている。

 クシナとスサノと何かを話している。なんか、家庭訪問みたいになっている?


「うん。『”玄関に回る”と伝えて欲しい』と言われた」


「わかった」


 言い切った直後に、チャイムがなった。


 玄関に出ると、可愛い制服を着た女子高校生と、弟と言っても大丈夫な小学生くらいの男の子が立っていた。一瞬、男の娘?と思えてしまうくらい可愛い。本当に可愛い。スライム補正がかかっているからなのか、肌が凄く綺麗。


「茜さん。急にすみません」


「いえ、主殿。ライ。歓迎します」


 主殿を部屋に招き入れる。

 本当に可愛い。あの学校の制服は、男子は学生服だけど、女子はブレザーだよね。それで、どこかのマンガに出てきそうな可愛い制服になっている。ほぼ、男子校だった工業高校に女子を招き入れるために行った施策の一つらしいけど・・・。


「あの・・・。茜さん。この姿の時には、”貴子”と呼んでもらえると嬉しいです。今、名前を呼ばれることもないから・・・」


「ごめんなさい。わかりました。いえ、わかった。貴子ちゃん。よろしくね」


「はい!」


 主殿。改めて、貴子ちゃんの笑顔が可愛い。抱き着きたくなってしまう。

 ライは、ライのままでお願いしますと、頭を下げました。


 二人を、ユグドの部屋に招き入れます。

 この部屋の方が落ち着くと思ったからです。


「ユグド。貴子ちゃんとライに挨拶をして」


「初めまして、主様。ライ様。聖樹です」


 ユグドの挨拶から始まって、クシナとスサノも挨拶を始める。クロトとラキシも挨拶をした。皆が、”主様”と呼ぶのは、しょうがないのだろう。貴子ちゃんも受け入れているみたいだから、私から何かを言うのはおかしいだろう。ライもどこか、嬉しそうな雰囲気がある。


「そうだ!茜さん。お土産があります!」


 嫌な予感がします。

 確実に爆弾です。


 でも、受け取らないという選択肢はありません。


「気にしなくてよいのに・・・」


「いえ、知り合いの家に遊びに行くなんて初めてで・・・。嬉しくて・・・。ご迷惑ですか?」


 こんな事を言われたら、断れません。


「貴子ちゃん。本当に、気にしなくていいですよ。でも、お土産は嬉しいですよ」


「本当ですか!ライ」


「うん」


 ライが、アイテムボックスを取り出します。


「アイテムボックスのままで申し訳ないのですが・・・」


 やはり、アイテムボックスもお土産なのですね。

 嬉しいです。これは、本当に嬉しいですし、覚悟も決まりました。


「茜さんが家に来てくれて、皆が喜んで、いろいろ持ってきてくれたのですよ」


「え?」


 どうやら、主殿の家族は、人と魔物が”敵”という認識を持っていたけど、私が家に来て、主殿に優しく接した事で、認識が変わったようなのです。それだけではなく、主殿の話を聞いてくれる人だと解って、私の所に行くと決まった事で、主殿の家族が、来られる者が全員で私の家に来ようとしたようなのです。

 それを、パロットが制してくれて、その代わりにお土産を持たせて、お礼にすればいいと言い出してくれたようなのです。


 アイテムボックスの中身は、アイテムボックスだった。

 果物が大量に入っている。蜂蜜も入っている。ローヤルゼリーまで入っていた。


「そうだ!茜さん。ポーションの素材も入っていますので、試してみてください。聖樹の樹液を使わない方法もまとめました。あと、薬草の作り方も確立しているので、持ってきました」


 ニコニコ顔をした主殿が可愛いです。

 これ以上ない爆弾です。薬草は、簡単に説明してくれました。草は何でもいいようですが、青汁に使うような青草の方がいいようです。これは、ギルドで研究してもらいましょう。聖樹を使うのは、欠損が治るようですが、薬草を使う場合には、欠損は無理そうだという話です。作り方は、簡単でした。魔石を砕いた土で育てた草を、魔石を浸した水を入れて、ミキサーにかける。この時に、スキルを使えればより効果が高いようです。スキルが使えなければ、ミキサーで飲み物にして、後は蜂蜜や砂糖で調整すればいいようです。


 効果は、ギルドで調べて欲しいと言われました。

 主殿が持つ”鑑定”で調べているだけなので、解らないと言っていました。


「ありがとう。調べてみるね。そうだ。貴子ちゃん。お金が沢山入ると思うからびっくりしないでね?」


「え?本当ですか?」


「うん。多分、貴子ちゃんが思っているよりも、二桁くらい多いかな?」


「え?100万くらいって事ですか?凄いですね」


「え?え?違うよ。違う」


「そうですよね。10万くらいですよね。びっくりしました。10万かぁ何を買おうかな?パロットがチュールをもっと欲しいと言っていたから・・・。免許はまだ取れないか・・・。うーん。どうしよう。もっと頑張らないと!」


 頑張らないで欲しい。


「貴子ちゃん。あのね」


「はい?」


「まだ、概算だから、正確じゃないけど・・・」


「うん」


「最低で、1億円くらいにはなるよ?」


「え?いちおくえん?宝くじの当たりですか?」


「それは、10億円だけど、最終的には、そのくらいになってもびっくりしないよ」


「えぇぇぇぇ!!嘘だぁ!茜さん。冗談が上手いです・・・。本当ですか?」


 主殿を驚かせることに成功しました。

 魔石の値段から考えれば、当然だと思うのですが、あまり調べていないのでしょうか?


 驚いた顔も可愛かったです。

 いえ、違います。


 主殿も、私の表情を見て、本当だと悟ったのでしょう。


「本当だよ。あっ税金の処理は、ギルドで行うから安心して」


「え?あっ。そうだ。税金もあったのですね。よかった。解らないから・・・」


 高校生なので、税金の処理まではできないでしょう。

 千明の担当ですが、主殿の税金に関しては、サポートを申し出てもいいかもしれないですね。

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