第十三話 眷属


 いろいろありすぎて、本来の目的を忘れそうになっていました。

 頭陀袋に入っていた物は、”プレゼント”だと言われた物以外で、同じ素材が複数個ある物は質がな物を受け取ります。主殿が、悪い物で、値段を算出して欲しいと言っていたからですが、良い物でも悪い物でも、大きくは違わないように思えます。

 委託販売の件では、値段は気にしないと主殿は言っています。

 気にしないと言われても・・・。他のギルドメンバーに知られたら、ギルドが叩かれてしまいます。

 そうならない為にも、しっかりとした値付けが必要になってきます。


 受け取ったリストを見ても、値付けができるとは思えない。


 円香さんに殺されてしまうかも・・・。


 さて、主殿に時間を貰った。

 メモで残しているが、記憶が残っている間にしっかりと確認をしておきたい。


 主殿に縁側を使わせてもらうことにした。

 クロトとラキシは、庭で主殿の家族と遊んでいる。主殿とライは、ライの身元に繋がりそうな情報を書き出してくれている。


 まずは、海の魔物だ。

 海底火山は完全に盲点だ。

 今まで、議論に上がっていないと思う。海の魔物に関しては、議論されていたのだが、実際に発見されたわけではない。そして、火山から海までの距離から、世界中でも数か所にしか存在しないのではないかと言われている。

 しかし、主殿の家族には、”タコ”や”ウツボ”が居る。確実に、海洋生物だ。

 そして、3,000メートルを越える火山は存在している(はず)。

 この情報は、このまま流しても問題はない。ワイズマンに情報を提供すれば、各国のギルドで検証を行ってくれるだろう。


 次は・・・。

 そうだ!蜂蜜だ。完全に忘れていた。蜂の魔物が花の蜜を集めていた。花も、季節感を無視したような物が多かったが気にしない事にしている。

 あの蜂蜜が食べられるのか?

 美味しかったけど・・・。大丈夫なのか?売れるのか?価値は?

 蜂蜜に関しては、食品衛生法の関係もあるかもしれない。孔明さんに丸投げでいいだろう。


 アイテムボックスの話は、報告だけを行えば大丈夫だ。大丈夫だといいな。


 魔石の合体と変形は、私でもできるようになったから、実践して見せれば・・・。

 あとは、円香さんが処理をしてくれるはずだ。多分。

 技術的には、主殿は公開してもいいと言っているので、やり方を公開して、あとは、ギルドの上層部に任せる方法もある。問題があるとしたら、ギルドの上層部が日本に来て、主殿の所に突撃してしまうことくらいだ。

 主殿の言い方では、招かれざる客は、主殿の家に辿り着けないだろうから、問題はない。問題がないから、ギルド日本支部への風当たりが強くなりそうで怖い。やはり、判断は円香さんにお願いするのがいいだろう。


 魔力の放出は、クロトとラキシがアトスに教えられたら、私と千明で試してみる。

 その後に、蒼さんができるのか試してもらって、出来たら、ワイズマンに登録しても大丈夫だろう。スキルに頼らない攻撃方法になれば、ギルド員の生存率があがる。他にも、研究が進む可能性がある。


 スキルと属性は、主殿がまとめてくれた物があるから、これを円香さんに渡して終わりにしよう。

 スキルの融合とか・・・。私が抱えるには重すぎる。話が大きくなりすぎる。


 魔石を漬けた水で植物が急成長する問題は、聞かなかったことにしたいけど、蜂蜜の話をするので、ダメです。

 秘匿しても意味がありません。

 害虫を寄せ付けないとか、植物が”意思”を持つことに繋がる情報です。

 追試が必要な情報ですが、まずはギルド内で試してみてから考えればいいので、他の情報に比べたら気が楽です。

 私が帰った後で、主殿が新しい発見をしなければ・・・。ですが、何か”怖い”ことを言っていたような・・・。


 聖樹は、報告だけで何ができるのか解っていないので、問題は無いでしょう。

 魔石水?を与えたら、おかしな方向に成長した木があると報告すれば・・・。ごまかしは難しいでしょう。正直が一番ですね。


 スキルを付与した杖の問題もありました。

 これも、追試が必要です。これは、蒼さんと千明を巻き込めればいいと思っています。

 魔石にスキルを付与する方法も確立しないと、クロトとラキシが魔石にスキルを付与し続ける状況になってしまいます。それは、不本意ですので、主殿が言っていた方法を試してみようと思います。


 委託販売は、ギルドに訪問してきてからなので、今は保留です。棚上げ案件です。円香さんと千明に丸投げです。あと、孔明さんも巻き込まれてください。

 私を一人で主殿の所に送り出したことを後悔させましょう。


 私が担当するのは、ライの身元調査です。

 どこまで遡ればいいのか解らないのですが、私の責任でライの身元を探します。行方不明者から探していけばいいとは思いますが、戦中とかだともう不可能でしょう。主殿も、難しければ諦めると言ってくれていますが、出来る限りのことをしようと思う。今の姿は、主殿に引っ張られていると言っているので、元に近い姿を主殿が撮影して送ってくれることになっています。


「茜さん」


 主殿が飲み物を持ってきてくれました。

 日本茶だと思いますが、落ち着きます。


「はい」


「ライの情報をまとめました」


「わかりました。お預かりします」


「お願いします。でも、無理はしないで下さい。白骨でしたし、着ていた服もかなり昔のデザインだと思うので・・・」


「大丈夫です。ギルドなら、ある程度の情報にアクセスができます」


「あっ!忘れていました!」


 あっ・・・。

 ダメな感じです。


 主殿のこの感じは、爆弾の可能性が高い。


「?」


「ライ。彼女を連れてきて!あと、クロトちゃんとラキシちゃんも!」


「わかった!」


 ライは可愛いです。

 連れて帰りたい。


 中学生くらいの制服を着せたら可愛いだろうな。

 学生服よりは、ブレザーかな?でも、学生服で袖が長い感じも可愛い。似合いそうだ。女顔なのは、主殿に引っ張られているからだと言っていたけど、そのおかげで、姉弟に見えます。

 並んでいても違和感がない。


 やっぱり、ダメな感じがします。

 梟?

 静岡に梟が居るの?


「茜さん」


 聞きたくないけど、聞かないとダメなのでしょう。


「はい」


「この子たちは、少しだけ事情がありまして・・・」


「え?”たち”」


「あっ。今は、この子だけなのですが、もうすぐ、帰ってくると思うのですが・・・。話を進めますね」


「はい」


「私の家族には迎えられないので、茜さんの家族眷属にしてもらえないでしょうか?」


 やっぱり・・・。

 でも、主殿の家族に迎えられない?


「理由をお聞きしても?」


「はい。この子たちは、天使湖の近くに居た子たちなのです。あの時に、魔物になってしまって、身を委ねてはくれていますが、自分たちは捕虜だと・・・」


「え?」


「クロトちゃんとラキシちゃんとの相性から、茜さんになら任せられると・・・。それに、私たちとの連絡の方法が、この子たちを使えば広がります」


 メリットはあるのか・・・。


「それに、クロトとラキシが持っていない属性を持っているから、魔石の付与の追試には役立つと思うよ」


 ライからの助言が的確過ぎて怖いです。

 確かに、ギルドのメンバーが持っているスキルよりも、豊富な属性を持っているのでしょう。


 全属性が揃えば、できることが増えます。


「わかりました。名前は・・・」


「無いので、茜さんが付けてください」


「え?あっ。もう一人は?」


「そうでした。ここに居るのが、メスです。もう一人は、オスです」


「うーん。メスは、クシナ。オスは、スサノ」


 私の前に来ていた梟が光りだします。

 契約が結ばれたようです。


 私も、人外になってきた。

 オスも帰ってきて、同じように私の前で頭を下げます。


 もう一度、名前を呼んであげたら契約が結ばれました。


 よかった。よかった。


 スサノとクシナから感謝の気持ちが伝わってきます。

 クロトとラキシも喜んでいます。


 夫婦だと思って名付けをしたら、本当に夫婦だったので良かったです。


 千明に押し付けるのは無理そうです。

 食事代を稼ぐために仕事を頑張ろう。


 梟(オオコノハズク)も可愛いです。モフモフは正義です。主殿の家族に居るコノハズクよりも少しだけ大きいサイズですが、小型の部類でしょうか?

 帰ったら、生活環境を整えないと・・・。


 電車に乗らないで、飛んでギルドまで来てくれるようなので、良かったです。

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