第14話

 ウンディーネが我が家に居候を始めた翌日、俺は教室に一番乗りで入っていた。


「……流石に早すぎたか?」

《いや、5時登校は小学生か朝練のある部活動生でもしないと思うが?》


 一人呟くと、影の中から冷静なミラにツッコまれた。……うん、主人公の朝のイベントに巻き込まれたくなかったんだよ。


「それに、もう習慣になっちまってるしなー……」


 俺は机の上に上体をぐで~っと投げ出しつつミラに向けてそう言った。


《……まぁ、未就学児時代から邪魂狩りをしていたからな、主殿は》


 こころなしか、ミラから労りの念を感じた。その優しさがオレの心にしみた。

 そうこうしていると、次第に他の生徒たちが教室に入って来た。

 その中にはツキハナのヒロインキャラなんかも居たが、俺とは関係が築かれていないので、無視でいいだろう。と、俺は再び体の力を抜いて机に上体を投げ出そうとすると、


「あ、おはよう明人。朝早いんだね」


 と言いながら、前の座席へと座ったのは、ツキハナの主人公様たる御剣翔さんだった。


「まぁ……うん、そうだねぇ」


 俺は曖昧に頷き返事をすると、顔を下に向けた。そうすれば当たり前のように視界いっぱいに広がるのは机の天板だ。意外な事に傷が少ない為、前の使用者は落書きとかする奴じゃなかったんだなぁと思いながら翔をスルーする。翔は暫く俺に話しかけてきていたが、返事が帰ってこない事に、俺が居眠りしたのだと勘違いして別の級友と話し始めた。うん。俺のことはほっておいていいよー。


《このままいくと、主殿はボッチになるぞ》

(喧しいわ)


 呆れたように言うミラに対して、念話でエセ関西弁で反論した。

 そうこうしていると、遂に先生が教室へと入ってきた。俺はのっそりと身体を起こすと、やる気なさげに先生の話を聞くのだった。

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