第8話

「それで、瀬戸大将は何処ら辺に出没するんだ?」


 気を取り直し、話題を変えると、笹山は軽く頭を掻くと自身のスマホを見せてきた。


「一応ここを本拠地にしてるっぽいんだよね~」


 覗き込んでみると、笹山のスマホの画面にはマップが映されており、指し示されている場所は近くのスクラップ工場だった。


「……なんとまあ」

「古い道具が成る付喪神だということは分かっているが、なんの意外性もないな」


 場所を確認した俺とミラの言葉に笹山は苦笑しつつ、スマホを引っ込めた。


「まあ、ある程度の広さはあるから少しなら派手にやっても構わないよ」

「私か主殿が派手にしたら辺り一帯吹っ飛ぶぞ?」

「いや、加減はしてよ」


 笹山の言った冗談にミラは素で返してしまい、笹山は苦笑いしていた。


「そんな事はいいから、早く行かないと見失うぞ」


 俺はそう言い残して、二人を置いて民家の屋根伝いに走り出した。


「ちょっ、待ってよ!?」

「主殿、こんな奴と置いてかないでくれ!」

「こんな奴とは酷いな!?」


 俺が走り出すと、慌てたミラと笹山が言い争いをしながら俺と同じように屋根を走り始めた。

 暫くは二人の言い争いを放置していたが、次第にヒートアップして行き、声が段々と大きくなっていったので、


「……夜中なんだから大声で言い争いすんなよ。気づかれるだろ」


 と首だけを後ろに向けて言うと、「……すみません」と気落ちした二人の声が重なって聞こえた。

 そうこうしているうちに、河川敷へと辿り着き、その対岸に目的地のスクラップ工場があった。


「スクラップ工場が向こう側なら、なんでこっちで集合だったんだ?」


 笹山に尋ねると、いい笑顔で「俺の自宅から近いから」と答えられた。


「なんなのだ、その理由……」


 ミラも流石に呆れ果て、ガックシと肩を落とした。笹山はそれを気にぜず、手を叩き、鳴らした。


「はいはいはい、さっさと動いて片付けようか。夜ふかしはお肌の天敵だからね☆」


 最後に星を飛ばしながら、笹山はウインクしつつ言った。俺とミラは目を合わせ、頷きあうと、笹山を無視して河川へと近づいた。


「おいおいおーい。無視はひどいジャーン」


 そう言いつつ俺の背中を人差し指でデュクシッ!デュクシッ!(決してツンツンなどと可愛いものではない)と背中を突き始めた。

 俺はそれすらも無視して、ミラを横抱き……所謂お姫様抱っこし、走り始めた。

とっとと笹山から離れると、笹山は慌てて俺達の後を追い、河川の上を走り始めた。


「ちょっ、ちょ待てよ!」

「「ヤダ」」


 俺とミラは笹山の言葉に同時に拒否を示すのだった。

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