第7話
深夜。俺とミラが今いる住宅街は、周囲の家の明かりは一切無く、静寂に包まれている。
「それで、今度の邪魂は何に取り付いたのだ?」
「
昼間着ていたシンプルな白のワンピースから、黒のゴスロリっぽいドレスに着替えたミラに尋ねられ、笹山から送られた情報を伝えると、ミラは嫌そうに顔をしかめた。
「瀬戸大将……名前からして思い切り武闘派の怪異では無いか。周囲を傷付けずに祓うのは骨が折れるぞ」
「因みに瀬戸大将はミラみたいな伝説クラスほどじゃないが、中級ぐらいの強さはあるぞ」
「更に面倒じゃないか!」
追加で伝えた情報にミラが頭を抱えていると、
「ごっめ~ん☆待った~?」
後ろから男の声が聞こえた。振り向くと、髪を茶髪に染め、ピアスやネックレス等のアクセサリーを身に着けた、チャラチャラした格好の男がいた。
「相変わらずふざけた格好だな」
男をジト目で睨みつけたミラが辛辣にそう言うと、男は「どこがふざけてるっていうのさ~」と呑気に返した。
「その裾が乱れている『I♡舞妓』と書かれた服とか、その上に着ている猫耳の付いたそのオレンジ色のパーカーとか、更にその上に着ている前の開いた学ランとかだ!」
「これは乱れてるんじゃなくて、わざと着崩してんだよ~」
ミラがそう言うと、ヘラヘラと男は反論した。その態度を見て、ミラは「ハァー」と、ため息を吐いた。
「まったく。何でこんなのが凄腕祓魔師と呼ばれているのやら」
「こんなのとは酷いなー」
そう、目の前にいる男、笹山裕介は祓魔師なのだ。それも凄腕の。
祓魔師というのは、この世界では人に仇なす凶悪な怪異を退治したり、人に紛れてしまった怪異を保護したりする存在だ。その殆どはとある秘密機関に所属している。目の前の笹山もその機関に所属している一人なのだ。
俺とはとある怪異事件で共闘する事になり、そこでつい全力を出してしまったのだ。
笹山には、俺の能力を秘匿する代わりに、厄介な怪異事件があった時にバイトとして雇われているのだ。もちろんバイト代も出る。
「ところで明人君は入学したんだってね。これで俺たちも先輩後輩だね~」
「……え?」
笹山が呟いたその言葉に、俺は思わず詰め寄ってしまった。
「今、なんて?」
「あ、あれ?言ってなかったっけ?俺って月谷学園の2年生だよ?」
笹山の台詞に、俺は膝から崩れ落ちてしまった。
「まさか、こんなのと一緒だなんて……」
「いやだからこんなのは酷いでしょー」
まさか、任務前にショックな事実を知る事になるなんて……。
「……取り敢えず、仕事行くよあーいぼう♪」
笹山はorzの体制で項垂れている俺の肩を軽く叩いてそう言った。俺は、ため息を吐くとのろのろと立ち上がった。そして、
「あんたと相棒になった覚えはない」
取り敢えず、これだけは否定した。
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