第6話

 自己紹介や学園内の施設の説明やらが終わり、俺は家へと戻っていた。


「いやはや……。主殿の通う月谷学園?とやらはいささか大きすぎる気がするのだが」

「そりゃあ、進学校だからな」


 俺の影から出て、ポテチをモシャモシャと食うミラに適当に返事をしながら、スマホをいじっていると、


「げっ……」


 少し面倒な奴から連絡が来た。


「どうしたのだ主殿。まるで面倒な奴から連絡が来たときのような顔をしているぞ?」

「そうだよ。そのままの状況でこの顔をしてるんだよ」


 俺はそう返しつつ、ミラにスマホの画面を見せた。ミラはポテチを口に加えながら顔を近づけ、そこに出ている送り主の名を見て「うげっ」と淑女が出してはいけない声を出して顔を顰めた。もちろんポテチは部屋の絨毯へと落ちた。


「笹山からの連絡とか、面倒事の匂いしかしないぞ」

「だよなぁ……」


 ミラが嫌そうに呟いた言葉に俺はしみじみと同意する。笹山には何回か世話になったが、それを差し引いても厄介事に毎度毎度巻き込まれているのだ。


「それで、今度は何だって?」

「……いや、入学おめでとうの祝辞だな」


 恐る恐る開いたメールの内容をミラに伝えると、ミラはホッと一息ついていた。しかし、


「それと、今夜仕事があるって内容だ」

「………」


 続けて言ったもう一つの内容を聞くやいなや、ミラは思いっきり顔を顰め、俺をジト目で睨んだ。


「上げて落とすとは……。中々嫌らしい手を使うではないか主殿」

「はいはい。それは今はどうでもいいから、早く食事とか済ませるぞ」


 俺はミラのジト目睨みを無視しつつ、キッチンへと向かった。ミラは拗ねて唇を尖らせながら、机の上に置いていたポテチの袋の口を閉じると、テキパキと机の上を片付けた。


「それで、何が食べたい?」

「ニンニクが入ってなければ、何でもいい」


 いつも通りの注文に、俺は苦笑しつつもフライパンをガスコンロの上に置くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る