1-4
「高校では部活、何するの?」
夕飯を食べていると、唐突に母が聞いてきた。
「・・・何も。帰宅部でいいよ」
そう返すと、母は少し寂しそうに笑った。
「そっか」
それだけしか、言わない。
本当は、高校でもフルートを続けてほしいと思ってるんだろう。
でも、それは決して言わない母。
私がフルートを吹くことを辞めて早半年。
それまで毎日のように、必ず忙しい日でも1時間は吹いていた。
「私、あなたの音色、好きだったわ」
私がフルートを辞めてから、そう母は独り言のようにぽつりとこぼすことが増えた。
私は、毎度その言葉を無視する。
「・・・ごちそうさま」
それだけ言い、階段を上って自分の部屋に向かう。
その途中にある、一つのある部屋。
私は、見向きもせず、通り過ぎる。
あそこは、思い出がありすぎるんだ。
自分の部屋に入って、ベッドに横たわる。
「・・・はあ」
___『なんで、ここに来たの?』
___『部活見学、してかないの?』
倉田颯馬の何気ない言葉。
その言葉の真意は、「なんで、吹奏楽の名門に行ってないの?」、「なんで、音楽室に行かないの?」ってとこだろう。
彼が発した言葉は、私の心を引き裂く。
なぜ、私のことを知ってたのだろう。彼も、中学で吹奏楽をやってたからだろうか。
それぐらい、聞いても良いだろうか。
「・・・もう寝よ」
明日も学校だ。
私は明かりを消し、眠りに入った。
輝ける場所を目指して 水野雨音 @ui_313912
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