第10話 扉
一つしか現れない筈の扉が二つも顕れ、その扉を見た3人は口をポカーンと開け、唖然としていた。
表記はひとつが6階層へ
もう一つが出口(二人まで)だった。
「何故だ!どういう事だ!」
ライは危機を感じ唸っていた。自分はともかく、メアリーとユリカ、この2人の命が最優先だ。このダンジョンに入る時、この2人の事は命に代えてでも守ると己自身に誓っており、頭の中に警報が鳴り響いている状態だ。
一瞬二人をこの出口の方に向かわせ、自分だけ6階層に行く事も考えた。しかし3階層の扉の事もあり、違和感があり、嫌な予感しかしなかった。
あの三人は無事に地上に戻れたのだろうか?ライは確信が持てなかった。ひょっとするとあの扉は罠で、死地に送られ死んでいるのではないかと嫌な予感がしてならなかった。出口とはあったが、どこに出るのかは記載がなく、一階層の時のように出口(地上へ)との違いに違和感が有ったのだ。
そう、3階層のあの扉と同種なのだ。行かせたら死ぬと、行かせてはならないと頭の中で警報がこだましている感じだった。
その頭の中に鳴り響いていた警報から、こちらの扉に2人を行かせてはいけない予感というか、確信をしていた。確信に従うかどうするか悩んでいたが、杞憂であった。
「ねえライ。勿論6階の方に3人で行くんだよね?私達が離れ離れになるなんて有り得ないわよ!」
「勿論私もお供いたします。さっきメアリーさんと話しましたが、あの扉の方を見ると寒気がするのです。笑わないでくださいね。あちらは怖いのです。嫌な予感がするのであちらの方には行きたくはないのです」
ライは嬉しかった。一緒に来てくれるというのと、一緒に来てと、危険を犯してくれと頼まなくても良くなった。それにこの2人と一緒にいたかったのだ。
それとなんとなくだがそれが正解だという気がした。3人一緒にいなければならないと。確か文献にもあったよなとライは思い出した。仲間と離れるなと記載があった事を。また、共に行動せねば不幸な結果が待っているともあった。最後に文献にはこうあった。ダンジョンからの生還者は第三者に大事な事を伝えられなかったと。筆記も駄目で、こういった曖昧な表現が限界だと。
それを踏まえ、ライは頭を働かせていた。「さてどうしますか?ちゃんと考えようか!」そんなふうに呟きながらこのまま6階層に行くか、一旦ギフトをいくつか解放し、万全の態勢で挑むか考えていた。
2人に分かっている事を伝え、どうすべきかを一緒に考えねばと思った。自分にこの先の事を委ねてくるにしても、事実を先に知って貰いたかった。
「一緒に来てくれるって嬉しいよ。ギフトを開放してから向かった方が良いかもだけど、ギフトを解放すると確実に気絶するから」
「そういえばライってライオットを解放したんだよね?」
「うんそうなんだ。あれのおかげで5階層のボスを倒せれたんだよね。ただ、今ある僕の未開放ギフトってさ、名前からは戦闘に直接役に立つとは考えにくいんだよね。ただ、何となくクリエイティブとか看破が気になるんだよね」
「そうですわね。私もこの絶対防壁というのがかなり気になっております。文献の通りであれば物凄い能力だと思います」
「そうよね。私も矢避けの加護のギフトが気になってしょうがないの。これがあっても攻撃能力が上がるわけではないけども、防御面でかなり役に立つよね?」
あっさりと開放してから行く事に意見が一致した。
「じゃあどうする?誰から先に行く?」
「ライのクリエイティブが最初でどうかしら?その名前が気になるの。文献にもなかったからかなりのレアスキルじゃなくてギフトだと思うのよね。それって5階層のギフトなのよね?」
「はい、私もライ様のクリエイティブでいいと思います。その後は私達が続こうかと思います」
「分かったよ。じゃあどれぐらい気絶しているか見ておいて欲しいのと、5階層のボスを倒したと思われる後、特に他の魔物に襲われる事がなかったから大丈夫だとは思うけれども、一応警戒はしておいてね」
そう言うとライとユリカはメアリーに床に座るように言われた。
言われるがままに床に座るとメアリーが積極的な行動に出た。
ライの肩を掴み、押し倒したのだ。するとライの頭はユリカの膝の上に来た。ライが見上げると、ユリカの顔がすぐそこにあった。
「ユリカの膝枕で寝かせてあげるんだから感謝するのよ!」
ライ以上に真っ赤なユリカであった。
「あっ、その、固くないですか?私なんかの膝枕でごめんなさい」
「あ、あ、あ、あう。その、とっても気持ち良いでヒュ。」
たじたじなライは下を噛んでいた。
「あっ、その、次は私の番よ」
「う、うん。ありがとう。じゃあ後を宜しくね!我の求めに応じその力を開放せよ。ギフト開放!クリエイティブ!」
そうするとギフトを開放した旨のアナウンスが聞こえ、ライは意識を手放した。
先程ライは2人に、呼び方を改めるようにとお願いをしていた。逆にユリカからは、自分に対する呼び方についてお願いをされ、ユリカと呼ぶ事になった。
メアリーはライの求めに応じライ君改めライになったが、何故かユリカはライ様と言う呼び方に固執しており、改める事を拒否していた。
普段人の意見に左右され、自己主張の少ないユリカが強く主張していた為、ライは気圧されうんと頷いていたのであった。
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