第9話  5階層のギフト

 3人は今自分達がダンジョンにいるのだというのをついつい忘れ、再会の喜びから我を忘れて話に花を咲かせていたのだが、いち早く正気に戻ったのはメアリーだった。


「ねえライ君。そろそろギフトを取った方が良いと思うけど、どうなの?」


「あっ!そうだったよね。いきますか!?誰からいく?」


「あのう、3人で同時に触れるのはどうでしょうか?」


 ユリカが遠慮気味に提案をしたが、2人がハモった。


「これは名案だ!」

「これは名案ね!」


 そしてせーの!の掛け声と共に3人が同時に宝玉に触れた。


 そして取得したギフトはこうなった。


 ユリカ  神の眼千里

 メアリー 神の眼鑑定

 ライ   神の眼看破


 冒険者達に知られている中ではこの神の眼シリーズはかなりレアなギフトだった。数年から10数年に一度取得者が出るのだ。ライ達の学園にも過去に取得した者がいるらしく、ライもその記述をダンジョンに入る前に文献で見たのだ。


 今回得られたギフトが文献の通りだとすると、千里というギフトは離れた所の様子を見ることができるかなりのチート能力だ。しかもシリーズと言っているのは、今回のライ達と同じような感じで、仲間内の3人がそれぞれを取得し、常に3人ワンセットで取得者が出るのでシリーズと言われているのだ。例外なくこれらの3人組はパーティーを組んでいると言う。共通事項はそこだった。


 次に鑑定というのは文字通りよく分からない物や植物、例えば薬の成分が分かったりと物や植物に対して鑑定を行う事が出来る。また、その物の価値の鑑定ができたりする。例えば宝石類が模造品か本物かを見極めたりするレアなギフトだ。


 そしてライの看破。これはかなり特殊で、例えばトラップがそこにあるというのを看破したり、魔法で隠蔽されていたり、遮蔽物等の先に何かが隠れ潜んでいてもそこに何かがいる事が分かる。そして極め付けは目の前にいる相手の能力が見れる事だ。そもそも普通、例えば今回ユリカが事前にそうしたように、ステータスを見ようとする場合は、冒険者ギルド又はギルドのない町や村では領主や村長の所に行き、そこでお金を払ってステータスを見る魔道具を使い、専用の紙にステータスを転写する方法しかないのだ。


 1回につき金貨10枚が掛かる。その金額とは即ち一般人の月収が飛んで行く額なのだ。その為おいそれと見れないのだ。


 ステータスを転写する紙が魔力を織り込んだ特殊な紙を使うのだが、その紙がかなり高価なのだ。その様な訳でステータスは一般の冒険者は滅多に見る事が出来無い。


 そのように滅多に見る事が出来ず、自分の今の強さが分からず、成長している筈と思い込み過信から命を落とす冒険者が後をたたない。


 なのでスキルを簡単に見る事ができる仲間がいれば、頻繁にステータスを見て貰えるので、現在の強さが分かる。結果として生存率が上がる事に繋がる希少なギフトである。


 3人は手を取り合い喜びあっていた。大当たりのギフトである。確かに戦闘には直接役には立たないが、これらのギフトのおかげで生存率がグッと上がるのだ。


 例えば鑑定は戦闘に関係ないと思われがちだが、水溜りがあったとして、そこに毒が含まれている場合、知らずにそこに足を踏み入れれば命に関わる。しかし、事前に危険だと判れば避けて通る事ができる。もしくは取り除き安全な状態になってから進む事ができる。更に頭が回れば、トラップとして敵をそこに誘い込んで撃破する事も可能なのだ。


 看破で出来無い事を補う形と文献には有った。看破はあくまでも生き物が絡んでいないと発動しないが、鑑定は動物以外でも使えるのだ。ライはそれを読んだ時、違和感を感じた。どれも主役を張るギフトだ。鑑定が看破を補うのではなく、3つを上手く組み合わせる事で最適解に導いてくれると感じていた。


 今回得たギフトが凄いものだと理解してはしゃいでいたが、ライの目に、ふと扉が一つ出現したのが見えた。ライはそれを見て、やれやれこれで漸く無事とは言えないが地上に出られる!と思ったのだがそうではなかった。


 その一つ出現した扉にはこう記されていた。5階層ボス部屋行き(クリア済)


 その表記を信じたものかどうか迷った。ただひとつ言えるのは、3階層の時に扉をよく見ていなかったが、扉の表記に嘘偽りはなかったのだ。


 どう判断するか意見を聞くもメアリーとユリカの2人は扉の表記を信じていた。


「やはりライ様は5階のボスをお一人で倒されたのですわね。流石ですわ」


「やっぱりライ君っていつか大物になるって信じてたの。さすが私のライ君」


 そんな感じでお花畑の2人は、扉の表示を微塵も疑ってなどいなかった。そしてお気軽なノリで、さあギフトを貰いに行こう!レッツラゴー!となった。

 更に2人は手を繋ぎルンルンにスキップをしかねない勢いだった。ライは不思議だった。この2人の仲が良かったのを、このダンジョン行きが決まるまで知らなかったのだ。


 そんなお気楽な2人とは対象的に、ライだけは警戒しつつ扉を潜ったが、扉の表記は間違っていなかった。5階層と書いてあったのは嘘偽りなく、扉の先は本当に5階層のボス部屋だったのだ。


 最後の者が扉を出ると、その扉はすっと消えていった。そしてそこで見えたのは新たなボスが出現しているわけでもなく、ボスを倒した後に出ている宝玉がその場にあったのだ。要はライがそこを離れた時のままだった。


 2人は躊躇う事もなく宝玉に手を触れていた。すると2人は嬉しそうに同時にギフト名を叫んでいた。ユリカが絶対防壁、メアリーは矢避けの加護と。


 これも文献に有った。やはりかなりレアなギフトであり、絶対防壁は術者の魔力が続く限り、何人たりともどのような攻撃をも跳ね返す。魔法も一切通じないのだ。直径3 m 程のドーム状の防壁を張り、その中にいるものはその恩恵を受けられるのだ。


 矢避けの加護もかなりのチート能力である。ありとあらゆる飛び道具から身を守れるのだ。特筆すべきは半径10 m 以内にいる味方にもその恩恵が与えられる。ただし半径10mを超える部分には恩恵が働かないので注意が必要だとあった。


 ライもその二つのギフト名には覚えがあった。文献で読んだ覚えがあったのだ。   


 また、2人は凄い凄いとまたもやはしゃいでいた。


 この時僕はこれで地上に戻れる!ダンジョンをクリアしたんだ!と思っていたんだ。そこには地上へ行く為の一つの扉が現れる筈なので、それを待っていたんだ・・・

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