第5話

 今日はカナは友達と出掛けていて夕方まで帰らないと言っていた。

 俺はたまに行くバイクのカスタムパーツ屋へ行くことにした。

 

 一人乗りのシートのボバーカスタムしたバイクに乗って一時間位に掛けてカスタムパーツ屋へ行った。

 店先にはバイク乗り達が屯していて目つきの悪い奴等ばかりである。

 店内に入りマフラーやエキパイを見ているとシートコーナーで二人乗用のコブラシートを見つけた。

 俺は自然とカナと二人乗りしているのを想像していた。

 湖の畔を二人乗りで走っている。

 田舎道の電話ボックスの脇に停めて休憩している。

 京都行ったり海に行ったりとカナと二人乗りしている創造が停まらなくなっていた。

 自然とコブラシートを買ってしまった。


「ナオヤ君」

「なんすか店長」

「一人じゃなくなったの?」

「あぁ、何となくっす」

「まずは此処に連れて来いよな!シートの付けたかもあってるか見てやるよ」

店長はサングラスの下でイタズラに微笑んでいる。


 俺は二人乗りのシートを付けたことが無かったからかなり苦戦してしまった。

 辺りが薄暗くなってきてやっとシートを取り付けた。バイクのフォルムを見ると少し微妙なスタイルになったがカナと二人乗りしてるのを想像してニヤけてしまった。


「何笑ってるの?」

カナが後ろに立っていた。

 俺は驚いて振り返った。

「笑ってねぇよ」

「声出てたよ」

「え?」

「あ!シートかえたの?」

「あぁ」

「これ二人乗り?」

「あぁ」

「アタシの為に?」

「あ、いや、気分転換に」

「そっか、二人乗りは出来るの?」

「できるよ」

「乗せてもらえますか?」

「あぁ、いいよ。何処に行きたい?」

「ドンキホーテ!」

「いま?」

「うん!あ!でも、ヘルメットないや、残念!」

「荷物置いて来いよ」

「え、うん」

カナは部屋に荷物を置きに行った。

 少ししてカナは新しいヘルメットを抱いて戻ってきた。

「ナオヤありがとう!」

「パーツ屋の店長がくれたんだよ」

カナは俺に抱き付いてきた。

「嬉しいよ」

「ドンキホーテ行くんだろ、かぶってみろよ」

カナはヘルメットをかぶり喜んでいる。

 俺はバイクのエンジンを掛けて錆び付いた後ろのステップを出した。

 カナは緊張しながら後ろに跨がって俺の腰をギュッと抱き締めた。


 初めての二人乗りで向かうのは近所のドンキホーテだが風を切りながら走りカナの鼓動を背中に感じて腰に回るカナのか細い腕からのカナの命を感じた。

 この命の責任を俺が握っている。


 前に進むに連れて今までの過去が薄らいでゆく。


 カナと二人で走る夜の国道は俺達のこれからの道なのかも知れない。


 後ろなんてたまにミラーで確認しておけば良いのかもしれない。


 こうして二人で前に進んでる。


 二人で闇を裂いてー。


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闇が裂ける時 ワッショイ勝ち知らず(長谷川けろ) @kaburemono

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