第4話


 アタシがしなくちゃいけないんだ。


 ナオヤの背負っている悲しみや失望感や絶望をアタシしか祓えない。


 あの時に出逢ったのはアタシがナオヤを引き寄せたんだ。


 ナオヤは慈愛があって心が澄んでいて濁っていない。無表情を装って居るけど怖いだけなんだ。人を信じて裏切られてきたことで“また繰り返す”と思って本当の自分を素直に出すことが出来なくなってる。

 アタシが本当のナオヤを取り戻さないといけない。ナオヤを愛しているアタシの愛情表現だ。


 公園の一番大きな桜の木の下でコンビニのサンドイッチとコーヒーを食べた。

「ナオヤ」

「なに」

「心配しなくて良いよ」

「なにを」

「アタシは居なくならないからね」

「あっそ」

「うん」

「どうでもいいよ」

「でも伝えておくよ」

「ありがとう」

「うん。忘れないでね」

「約束は出来ないな」

「結婚しない?」

「紙なんか信用できないね」

「でも、一枚の紙に二人の名前があるだけで嬉しいじゃん」

ナオヤはアタシをジッと見ている。

「今だけだよ。その気持ちは」

「5年後も同じ事を言ってるよ。10年後も20年後も、それでまた此処ではしゃいで腰を痛めるの、それをナオヤは苦笑しながらアタシを病院へ連れて行ってくれるの、アタシにはそういう未来しか見えてないの、ナオヤが見ている未来とは違うけどアタシの未来のナオヤはいつも笑ってるの、そういう未来をナオヤとしか見れないの、だからアタシは居なくならないからね」

アタシは涙が出ていた。

 コーヒーに涙が落ちていた。


 ナオヤはアタシの手を握りながら流れる雲を見上げていた。


つづく

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