第2話

 ベランダで抱き合って舌を絡ませた。


 カナの細い身体は熱くなっていて血の流れを感じ取れた。

「怖かっただろ」

「うん」

カナは俺の腕を噛んだ。

「痛てぇよ!」

カナは泣きながら血が出るほど噛み付いてきた。俺はカナの頭を撫でながら“信じていいのかなぁ”と痛みを堪えた。

「好きなだけ噛み付けよ。それでいいよ」

カナは噛むのを止めて少し離れて俺の脇腹にパンチした。パンチ何てものでは無かったボディブローであった。俺は息が出来なくなって蹲った。

「ナオヤが居なくなったらアタシの心はそれよりも痛いし苦しいんだからね!」

俺はカナを見上げながら小刻みに頷いた。


 カナを見る度に深く好きになっていく自分をハッキリと感じ取れていた。

 朝起きて隣で寝ているカナを見てハートが一つ。コーヒーを煎れているカナを見るハートが一つ。振り向くカナにハートが一つ。コーヒーをこぼすカナにハートが二つ。着替えを見ないでと言うカナにハートが3つ。

 一つ一つのカナの仕草に惹かれていった。


 それが毎日続いた。


 カナのハートが一千万個付いた頃に喧嘩した。

 車を買うのに俺はビートルがいいと言った。カナはミニがいいと言った。俺達は対立した。俺はビートルの良さをググって伝えた。カナは俺をBMWへ連れて行きミニを見せてきた。

 そしてこの喧嘩は俺が負けた。カナにハートが百個付いた。


 俺の中の闇に薄らと切れ目が入っている。嵐の中を歩いていた。見上げることも出来ないくらいの嵐の中であった。そこに切れ目が出来て竜の泳ぐような光が見えている。それを信じていいのか、また居なくなるのか、心に渦ができている。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る