第6話
ふう。
私は、全員が出て行って一息ついた。テーブルに置いてある本を開く。
――この世界を守る為に神は、龍を召喚した。龍は、人々に崇められ世界を豊かにする。龍は、平和の象徴。
「うん? 平和の象徴? なのに倒して英雄になるってどういう事?」
レイリーの記憶が間違っていたって事?
『その文字を読めるのね』
「え?」
いつの間にかルブックバシーが傍にいた。私は、猫のルブックバシーを抱っこする。う~ん。モフモフ。幸せ。
「この本ってここで使われている文字じゃないの?」
『古代語と言われる文字よ』
「そうなんだ。じゃルブックバシーのおかげね」
『なぜ私のおかげなのかしら?』
「なぜって契約したから読めるようになったのでしょう? 暗闇でも見えるようになったように」
『暗闇でも見えるようになったのは、私と契約というか怖がっていたからそうしたけど、読めるようにはならないはずよ』
「え!」
じゃ、召喚された事により文字も読めるようになったって事? しかも現代使われている文字だけじゃなく……。
「ねえ、今使っている文字ってどれ?」
『どれと言われてもねぇ』
「そうよね」
あ、そっか。だからクリーチュさんは不思議そうにしていたんだ。年齢に関係なく、この本が読めないのになぜここにあるって。
という事は、クリーチュさんは嘘と気が付いたかも。でもたしか抜けた人だったっけ。はぁ……。
きっと今までも気が付いてくれなかったのね。
だからって、召喚を自分の為に使って私と入れ替わらなくても……入れ替わる……あ!
「そうだった。龍よ。龍はどうなるの? 本来はそれを異世界に飛ばすんでしょ。それができないなら英雄が倒しちゃう?」
『龍を倒すですって!?』
「あ……そっか。ルブックバシーは知らなかったね。でも私がレイリーじゃないと気が付いたわよね。そっくりみたいだけど、どこらへんでわかったの?」
『見た目で気が付いたわけじゃないわ。素質よ。そうね。彼女は交換召喚を持っていたわ。でもあなたは、言語理解を持っているのよ。まあどっちも異質だけどね』
「え? わかるの? って、私は言語理解というのを持っているの? だからかぁ」
なるほど。それで古代文字も読めちゃったのね。
まあそれはいいとして、龍の事よね。
「この世界に龍っているんだよね?」
『そうよ。この世界の邪を浄化してくれる存在よ』
「そ、そうなんだ……」
それをなぜ英雄が倒す事になったのか。というか、小説ではその龍を異世界へ飛ばしちゃうなんて、英雄どころか悪役じゃありませんか!
「もしその龍がいなくなったらどうなるの?」
『邪がはびこる世界になっていくでしょうね』
「………」
なんというか、私たちの住んでいた世界ではそんな事しなくてもはびこらってなかったと思うけど、邪とは一体何?
「どんな事が起こるの?」
『天変地異が起こるでしょうね。ここは元々そういう世界だったそうよ。それを抑える為に龍を召喚した』
『黒龍と聖剣』の本の内容と一緒。じゃこの本を読めば何が起こるかわかるかも。
『それで龍を倒すとはどういう事? あなたがここにいるのと関係があるの?』
「そうだった。私は、レイリーが持つ交換召喚で呼び出されて、入れ替わった存在なの」
ため息交じりにそう伝えると、察したのかすりっとしてくれた。かわいい!
「レイリーによるとこの世界は、私がいた世界にある小説の内容と同じみたいなの。レイリーがそのままこの世界にいれば、英雄に言われるまま龍を交換召喚で異世界に送る事になるんですって」
『なんですって! そんな事をしたら世界は破滅へ向かうだけじゃない』
だよね……。私もそう思う。でもおかしな事にその龍は世間では倒された事になり、倒した者は英雄となる。う-ん。本当に同じ世界なのかな?
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