第3話
なんか凄い大変な事になったみたい。バタバタしているよ。便箋はこっそり枕の下に隠した。そしてベッドに横になり辺りを見渡す。
なんというか、絶対に日本じゃないわね。というか、家の作りも家具もそして人の作り? も日本というより地球と違う。
最初に会った侍女……メアリーさんが、茶色い髪だったから気づかなかったけど、この家に来て周りの人の髪がカラフルで驚いた。
レイリーのお母さんは、赤い髪と瞳。お父さんにはまだ会ってないけど、黒なのかな? 私は、髪も瞳も黒。それは、ここにきて鏡を見て確認したよ。
さっきまでお医者様がいて帰っていったけど一安心とはいかないか。だって名前すら覚えてない事になってるから。しかも、服装が違う。私を見たレイリーの母親が私に抱き着いて泣いた。そりゃそうだ。着替えさせられていたんだから。
とりあえず何もされていなか隅々まで確認されてちょっと恥ずかしかったんですけど。
ひと段落つき私は一人で寝ていた。というか、寝たふりをしていて本当に寝ちゃったみたい。ふと目を覚ますと、私を覗き込むレイリーの母親がいた。
「………」
「まったく。今回は違うのに疑われちゃうじゃない。まあいいわ。お仕置きが必要よね」
私が起きた事に気づかずに独り言をつぶやいている。
くるっと背を向けると、怖い事を言って静かに部屋を出て行った。
やばい。かなりやばい。お仕置きされちゃう。
いやいや夢でしょう。
私はがばっと上半身を起こした。
「……夢よね?」
夢なのにそこで寝ちゃった……。
いや、そういう事もあるわよ。でも夢でも怖いのはいや。
私は、枕の下に手を入れた。
あった。彼女が残した手紙。確か人物紹介みたいのもあったよね。
――母親の名前は、マリッタ・イヤーレッド。うざい。
うん? うざいだけ? もっと何か書く事あるでしょうに。
で、父親は?
――クリーチュ・イヤーレッド。どこか抜けた人。
「………」
なんだろうか。この説明。もうちょっと役に立つ説明はないの?
――ルーク・イヤーレッド。一つ下の弟。
「………」
ない! あとはメアリーさんが私の専属侍女という事と、英雄が銀の髪と瞳としか書いてない。なんなのよこれ! なんの役にも立たない。
――最後に、小説の通りのストーリーにならないでしょう。また親の事は、小説には出て来ていないのでこれ以上わかりません。
って、なんですとー!!
いや言われてみればそうかも。この子は主人公ではないんだから。きっと小説ではどうやって知り合ったかくらいしか描かれていなかったんだ。
だったら専属侍女のメアリーさんに色々聞いてみるしかないか。
って、夢ならその小説のストーリー解説どこかでいれてよ。
かちゃ。扉が開いた。
うん?
「起きたようね」
あ、母親のマリッタさんだ。
「連れて行って」
にっこり微笑んだと思ったら一緒に来た侍女にそう言った。なんだろうと思ったら手を引っ張られる。
もしかしてお仕置き?
「あの……」
引っ張られ連れていかれたのは、建物内の端の扉の前。その扉を侍女が開けた。薄暗い部屋。しかも他と違って掃除がされていないみたい。もしかして……。
「きゃ……」
思った通り、その部屋に入れられた。
「そこで反省なさい」
扉が閉まる前、マリッタさんが冷ややかな瞳で見下ろして私に言った。
ぱたんと扉が閉まると真っ暗だ。
何これ夢だとしても怖いのは嫌なんだけど。
『あらまたお仕置きされたのね。ってこの子……』
声が聞こえてゆっくりと振り返るも何も見えない。
や、やめてよね。
『あれ? もしかして声が聞こえている?』
「ぎゃ~」
幽霊がいる! ここ幽霊がいるよ!
ドンドンドン!
私は、慌てて扉を叩いた。
「開けて、出して! お願い!」
私は必死に扉を叩いて気が付いた。
手が凄く痛い。もしかしたら夢じゃなくて現実かもしれない……。
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