第53話 挑戦(レナ視点)
第八階層を越え、第九階層でさらに一泊し、第十階層へ足を踏み入れる。
前はあたしたち三人の連携を試行錯誤しながらだったけど、今のあたしたちはばっちり連携できるようになったし、相手のモンスターとも一度戦っているから、余裕を持ってここまで来ることができた。
クロトが何も言ってこなかったから、及第点を取れてるんだと思う。
師匠のくせに全然アドバイスしてこないけど、目に余るようであれば、さすがに何か言ってくる……はず。
このままあたしたち三人でボスを倒せれば、第六階層以下のフロアも、きっと三人だけでの冒険を許可してくれる。
次もまた三人分の地図を作れって言われるんだろうか。それとも、三人のうちの一人分だけでいいって言われるんだろうか。
作ってみないと誰のフロアが一番いいかわからないから、あたしとしては三人分の地図を作りたいと思ってる。二人はどう思ってるのかあとで聞いてみなくちゃ。
そんなことを考えながら、第十階層の攻略を開始した。
前回一度攻略しているから、少しは気分的に楽だった。ゴールがわかっているのは大きい。
とはいえ、さすが第十階層は
ボスがいる以外は第九階層と変わらないのに、なかなか倒せない。
「ぐっ」
スケルトンメイジの魔法を避けたら、スケルトンから攻撃を受けてしまった。
左腕が縦にバッサリと裂け、血が噴き出す。
ポーチのポーションに手を伸ばすよりも前に、シェスの詠唱が聞こえてきた。
痛みを我慢して両手剣を右手で振り回し、スケルトンを倒すと、回復魔法が完成して傷が癒える。
「……大丈夫?」
「うん。ありがと」
フォローに入ってくれたティアにお礼を言い、次の敵へを狙いを定める。
ほどなくしてその部屋のモンスターは全滅した。
「今のはちょっと危なかったわね」
いけると踏んだけど、思ったよりも苦戦した。あたしが大きな怪我をしたのもよくない。
「……三体」
「ええ、スケルトンメイジ三体を一度に相手するのは危険ですわ」
「部屋に飛び込んだりしないで、外から少し削るべきかしら。もしくはおびき寄せるとか」
部屋の外を警戒しながら、三人で話し合う。
「前回のように時間制限があるわけではないですが……でも挑戦はしたいですわよね」
「……うん」
安全は最優先だ。
だけど、少しは無理をしないと、成長もしない。
今まで三人だけで潜ってた時だったら絶対そんな冒険はしないけど――今はクロトがいる。
もし本当に危ない事が起きれば、あの時みたいに助けてくれるはずだ。……たぶん。そこはさすがに、あたしたちの師匠だし。
なら、今は挑戦をした方がいい。
「……先」
「そうね。先にスケルトンメイジを倒しちゃった方がいいのかも。遠距離攻撃の敵がいると
「レナさんとティアさんで、一気に倒しに行くわけですね」
「気づかれてない状態からなら、スケルトンメイジだけ狙って戻ってくることはできると思う。シェスに防御魔法をかけてもらえば、多少他のモンスターからの攻撃を受けたとしても、なんとかなるしね」
あたしがちらっと見ても、ティアやシェスがじーっと見ていても、やっぱりクロトは何も言わない。
「じゃあ、次に同じような状況になったら、それでいくわよ」
「……うん」
「わかりましたわ」
方針を決めたすぐその後、移動した先の部屋で、またスケルトンメイジ三体を含むモンスターたちと遭遇した。
「こんなに早く試せるなんて、あたしたちツイてるわ」
あえて明るい声を出して、思い出しかけたさっきの傷の痛みを吹き飛ばす。
シェスに防御魔法をかけてもらい、耐火ポーションを飲んでから、ティアと二人で部屋の中へと躍り出る。
ゴーレムやスケルトンの横を駆け、一気にスケルトンメイジの前へ。
周囲に展開される炎の壁は耐火ポーションの効果ですり抜けて、剣を
その勢いのままもう一体へと駆け寄り、そちらも
シェスの所に戻ろうと振り返れば、ティアも一体倒した所だった。
目の前に立ちはだかったゾンビを上に跳び上がって避け、着地点にいたゴーレムは頭の上から一刀両断にする。
横から向かってきたゾンビにはシェスがファイア・ボールをぶつけた。
その隙に部屋の出口まで駆け抜ける。
ティアに続いて通路に出た所で
他のモンスターは部屋の中でこちらの様子を
「……行く」
ティアの声に
残っていたモンスターを一気に掃討する。
「ふぅ……」
さっきより、ずいぶん楽に倒せた。
「……良かった」
「スケルトンメイジを先に倒すのは有効ですわね」
シェスがゾンビがドロップした魔石を拾う。
心なしか残念そうに見えるのは気のせいだと思いたい。腐った肉を期待してるなんてこと、ないわよね?
今回はちゃんと
ティアに目を向けると、何となく嫌そうな顔でシェスを見ていた。たぶんあたしと同じことを考えてる。
あえてシェスに確かめるのもどうかと思っているうちに、あたしたちはボス部屋の前までやってきた。
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