第7話 デモンストレーション
「隊長……本当に無防備な相手に発砲しても問題ないのですか?」
「上からの命令だ。それに相手も同意しているそうだ」
おい。
聞こえてるぞ。
俺はそんな事を思いながら声の聞こえた方に視線をやる。
そうすればそこには迷彩服を着た人間が五人立っていた。
しかもその中の四人は銃を持っており、俺に向かって構えている。
あれから俺達は会議室でなく一番近くにある自衛隊の駐屯地に来ている。
理由はとても簡単で、俺達と日本……正確には俺達以外の国との力の差を見せつける為だ。
そしてその為にこちらからの条件として、報道陣の撮影を許可することを提示してある。
その為に自衛隊から少し離れ場所には報道カメラ、そこから更に離れてネーナ達と日本の総理達が居るという感じだ。
撮影の許可を条件として盛り込むよう提案したのはネーナだ。
地球における情報伝達の方法について事前に色々と説明していたところ、「そんな便利な物があるなら最大限活用すべきです!」とのことでこうなった。
そして最大限活用する為にはわかりやすい力の方がいいということでブラムではなく俺が行うことになった。
実際問題魔法をどこまで認識できるかわからないうえに、わかりやすく演出するということであれば俺以上の適任はいないだろう。
とはいえここに至るまでにネーナがかなり煽った影響もあり、使ってくるかはわからないが戦車まで用意してるんだよな。
俺はそう思いながら視線を後ろの方にやる。
そうすればそこには綺麗に整列した迷彩服を着た人間と、戦車やタイヤのついた大きな大砲のような銃まである。
とはいえ生前の知識から考えても今の俺にはそんな兵器の攻撃は全く通用しない。
これから行われるのはデモンストレーションでしかないのだ。
現代兵器では太刀打ちできない存在を知らしめるための。
「では始めます!」
総理大臣の近くにいた自衛隊員がそう言った直後、真っ直ぐ綺麗に手を上げる。
それを見た銃を持つ自衛隊の四人が俺に対して照準を合わせる。
「撃てぇ!」
銃を構えていない自衛隊員がそう言った直後、凄まじい炸裂音と共に俺に向かって無数の弾丸が連射される。
俺はそれを見て、心の中でため息をつく。
あまりに遅い。
これなら【思考加速】を使う必要はなかったな。
俺はそう思いながら俺の近くまで飛んできた弾丸を見つめな、ワザとらしく右腕を軽く上に上げる。
そうすれば俺に向かって飛んできていた弾丸がまるで何かに止められたかのように俺の前でピタリと静止する。
そしてわかりやすく俺は上げた右手をくるりと円を描くように回す。
そうすれば宙で止まっていた弾丸が一瞬にして一箇所に集まり、まるで液体かのようなウネウネとした変則的な球体状になる。
その球体に視線が集まってるのを確認してから、俺は勢いよく右手を握る。
すると先ほどまでテニスボール程の大きさだった球体はまるで何かに押し潰されるかのように一瞬にして収縮し、目視できない程の小ささになる。
「私に傷をつけることすらできないのなら、魔物に対してかすり傷すら与えられないだろう」
俺は騒然とする周囲に対して拡張魔法を使い、周囲に聞こえるようにそういう。
正直この程度では全くもって魔物の脅威をアピールは出来ないだろう。
不意打ちで空爆なり戦車なりで攻撃してくれれば更に力をアピールできるのだが、そこまではしてくれないだろう。
そしてここまではネーナの思惑通りに進んでいることから、次のステップへ移行だ。
ここからは本格的に力を示す。
相手がこれ以上をしてくれないうえに、こちらから攻撃すれば耐えられない可能性がある。
なら耐えられる相手に対して攻撃して力を示せばいいのだ。
「ブラム!! 側に来い!」
「お側に!」
俺がそう言った直後、一瞬にしてブラムは俺のそばで膝をつき大声でそう答える。
ここからがデモンストレーションの本番だ。
「あれでは魔物の脅威が伝わっていないだろう。故に私と手合わせをして、この程度戦えないと魔物には太刀打ちできないというのを見せるべきだと思わないか?」
「陛下のおっしゃる通りでございます!」
「では相手をしろ、ブラム」
「かしこまりました」
遠くにいる総理達が慌てているが、これも全てネーナの計画の内だ。
この映像は恐らく生中継されていることだろう。
ならネットを通じて自然と全世界に伝わるはずだ。
アイツらに手を出すのはマズい。
アイツらが警告する魔物とはどれだけ危険なのだ? と。
俺はそう思いながらブラムに目配せをする。
そうすればブラムは俺から距離を取る。
そして先ほどよりも早い速度で俺に向って殴り掛かっってくる。
速度が早すぎて目視できないかもしれないが、カメラで撮っている以上再生速度を下げるなりして認識する事はできるだろうから、問題は無い。
俺は殴り掛かってくるブラムの攻撃を右手を軽く上げ白っぽい半透明の盾を出し防ぐ。
ただ攻撃自体は防げても余波までは防げないので俺の後ろを凄まじい風圧が抜けていく。
その風圧で後方で綺麗に整列して待機していた自衛隊の体が後ろに押され、顔を歪める。
「剣の舞・演舞」
俺がそう呟くと同時に、空中に数十本の剣が生成される。
しかもその剣はそれぞれ火や水、土や氷と言った様々な属性のもので構成されている。
この魔法は俺の中で派手で一番好きな魔法だ。
俺はそう思いながらこの魔法を操る為に、【思考加速】と【並列処理】を同時発動する。
そして生成した剣一本一本をそれぞれ操作し、ブラムに向かって攻撃する。
ブラムは切りつけてくる攻撃や飛んでくる剣を全てギリギリのところで躱していく。
しかも飛んできた剣の属性によっては素手で殴り砕いている。
まぁブラムならこれぐらいは余裕だよな。
何せ戦争の際は前線でかなり無双してたからな。
とはいえそろそろいいだろう。
このままダラダラと長引かせても飽きられるだけだ。
俺はそう思いながらネーナの方を見れば、俺の意図を察してくれたのか軽く頷いてくれる。
俺はそれを見てわかりやすく右手を素早く上から下に下ろす。
そうすれば今まで自由自在に宙を舞っていた剣がそれぞれ地面に突き刺さる。
そして数秒後に何もなかったかのように消え去った。
異世界で魔王に転生して大陸を平定したら、元の世界に大陸ごと召喚されました 黄昏時 @asa
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