その他

@Karauti

第1話

小倉倉庫に来てから結構経った。田舎から上ってきて三日目のこと、電車に揺られボックスで何となく外を見ていた。

「となり、よろしいですか?」

男とも女とも取れない声が聞こえた。見ると夕陽が僕を見ていた。周りを見ると満席だった。

「どうぞ」

「どうも」

また、外を見ると海が見えた。テトラポッドが山積みされている。

「……」

「……」

夕陽は本を開き、黙っている。僕も外を見て黙っている。

「すわっていいですか?」

幼い声が聞こえた。見ると小さい書生の服装をした子供がいた。

「どうぞ」

「どうぞ」

「ありがとうございます」

また、2人は同じ姿勢を取り、子供は周りを物珍しそうに見回している。

「電車、初めて?」

夕陽が子供に声をかける。

「はい、初めててです!わたし母さんがいて、今日会いにきたんです!」

「そっか」

またぼくは外に目を向け、夕陽は本を開く。

子供は肩から下げていたポーチから飴を出し頬張った。


・・・


「間もなく、終点鏡原、鏡原。御出口は右です」

アナウンスがなり、降りる支度を始める。


さよなら、名前も知らない2人。

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