4 第三回 暗黒闘虫遊戯大トーナメント大会 初戦VSバタフライ笹傘
第三回暗黒闘虫遊戯大トーナメント大会の本戦の第一回戦が始まる。
あたしはAブロックの初戦で直ぐに試合だ。
ちなみに、予選が終わった時点でベスト16だぜ。
『さあ、いよいよ第三回大会の本戦が始まります。実況は、6年2組の水沢 誠一がお送りします』
『今大会は、早速大番狂わせが有りましたから、非常に楽しみですね~。解説の6年1組、河北 潤です』
実況と解説は、お昼の放送や体育祭などでお馴染み、水沢先輩と河北先輩の水河コンビがする様だ。
『トーナメント初戦はバタフライ笹傘と、闘虫四天王の一人ベルゼブブ矢野を破った超大物ルーキー狂犬玉瀬ですが、この戦い如何思われますか? 解説の河北さん』
『そうですねぇ~。笹傘選手は、毒鱗粉使いとして名を馳せる注目株です。玉瀬選手は、驚異的な力を持つ大カマキリと、詳細不明のオオスズメバチの闘虫を使うようですが。玉瀬選手の闘虫が、果たしてどれだけの毒耐性を持っているのか、それが鍵ではないでしょうか?』
『なるほど。バタフライ笹傘の毒鱗粉が決まれば笹傘有利、毒鱗粉が効かなければ一気に玉瀬有利と言う事でしょうか』
『そう言う事ですね。この試合は初手で決まると思いますよ~』
ふむふむ、対戦相手のバタフライ笹傘は毒使いなのか。
『カマ助とさっちゃんは、毒鱗粉、大丈夫そうか?』
『お嬢。某はお嬢のお力により、只のカマキリを超越したので候。そんじょ其処らの毒など、拙者に通じるはず無いで御座ろう』
『お嬢、あたいもオオスズメバチって言う毒使いなのよ? 勿論平気に決まっているでしょ』
話し合いの結果。今回もカマ助で行く事にする。
「選手入場!」
「ひぃーがしぃぃー!! バァタフライ、SA SA GA SAァァァアアア!!!」
登場コールの癖が変わりやがったぞ。
右目が隠れる程前髪が長く、それなりに整った顔立ちのダンスクールに通って良そうな服装をした男子が、何故か赤い薔薇を口に啣え軽やかなステップを踏みながら、蝶達と共に闘技場に姿を現す。
「やあ、ごきげんようレディの皆さん。今回も僕達の華麗かつ優美な舞をお見せしよう!」
キレッキレの動きでポーズを決めながら、笹傘が観客にアピールすると。
数少ない女子の観客が、キャーキャー黄色い歓声を上げる。
何だこいつ? 観客の女子がキャーキャー言ってるけど、女子受けがいいのか?
「に――しぃ――!! クレイジィィイ、ドォッグ! TA MA SEェェエ!!」
登場コールうっせぇ! 呼ばれたあたしは、闘技場に入場する。
「玉瀬ー!! 期待してるぞぉー!!」
「笹傘、涙目にしてやれぇーい!」
「イケメンを潰せー!!」
なんか笹傘の奴、男子にメッチャ嫌われてるぞ?
男子のイケメンへの憎しみ半端ないな!
まあ取り合えず、あたしを応援してくれているので、軽く手を振って置く。
「うおぉぉぉ!! あんな美少女の玉瀬ちゃんが、俺に手を振ってくれたぞ!!」
「違う! 俺に手を振ってくれたんだ!!」
「性格はアレでも、美少女に手を振って貰えた俺は勝ち組!」
「あっ? てめぇ。さっきからいい加減にしろよ!」
「ああん? お前こそいい加減にしろ! 玉瀬ちゃんはなぁ、俺に手を振ってくれたんだよ!!」
あたしが気軽に手を振ったせいで、新たな骨肉の争いが。何かすまん。
「やれやれ、顔が醜いと心まで醜くなる。そうは思いませんか? フロイライン玉瀬?」
「いや、お前そんな事言ってるから、あの男子達に嫌われてるじゃね?」
「はっはっはっ、冗談がきついですよ。彼らは最初からああでしたよ」
「え? そうなの?」
あたしが観客に聞いて見ると。
「うんな訳ねぇだろ!」
「あいつは最初っから、俺らを見下してやがったぞ!」
「そうだな。笹傘は初めから俺らと話す気も無かったな」
どうも彼らは、普通に笹傘とコミュニケーションを取ろうとしていた様だが。
「と、言ってるが?」
「僕が話すのは美しい女性達だけさ、当然でしょう?」
笹傘はキザなポーズを決め、さも当然の様に男子とは話さないと言う。
うん。こいつはダメなヤツだ。ボコス!
あと、その薔薇棘で、血が出て痛そうだけど平気か?
もちろん、直接は言わないよ。言ったらうざそうだもん。
「そろそろ、宜しいですか?」
審判の人が闘虫を出す事を促してくる。
ふふ、そうだな。直接ボコスんじゃなくて、闘虫の試合でボコさないとな!
『カマ助、あのキザ男をボコしてやれ』
『あのような不埒者には、身の程を思い知らせてやる必要が有りそうですなあぁ』
カマ助の鋭い眼光と鎌が一瞬キラリと光、遊んでやろうと言う意思を感じる。
虫籠から闘技場に、カマ助を解き放つ。
「おやおや、この美しい僕相手にも、大カマキリ一匹とは舐められたものです。……あ、玉瀬さんが本当に舐めたいなら行ってくださいね」
「キモいわっ!」
うわっ! キモっ、マジでキモ!!
あたしにだけ聞こえる様に、舐めて良いですよ発言マジキモっ!!
キモ過ぎて鳥肌ったわー。うちの小学校変態多すぎない?
「それでは、第三回暗黒闘虫遊戯大トーナメント大会本戦第一試合、闘技開始!」
「さあ行け、僕を彩る美し蝶達よ! 『
笹傘の蝶達が、キラキラと光る鱗粉をカマ助に浴びせ掛ける。
鱗粉を受けたカマ助が、蝶の毒鱗粉が効いてしまったか、ふらふらと足元がおぼつかない様に為る。
「ふふっ、フロイライン玉瀬。如何やら勝負は決した様ですが、サレンダーしても構いませんよ?」
「ふっ、それはどうだかな?」
『おおっと! バタフライ笹傘の毒鱗粉が決まってしまったぁー!!』
『これは不味いですよ! 笹傘君の蝶達の毒鱗粉は幻惑するだけに留まらず、確かに殺虫する力を持った神経毒でもあります!』
※この毒鱗粉は人間には無害です。
『へぇ~、そうなのか。で、カマ助効いてるのか?』
『はははっ、かような蝶の鱗粉など、拙者には微塵も効いておりませぬ。蝶共も、某が何時まで経っても死なないのを、不思議に思っておるようですな』
蝶の一匹が痺れを切らしたのか、カマ助に不用意に接近する。
『大鎌切流
毒鱗粉が効いた振りをして、蝶をだましたカマ助の大カマキリ伝統の技が炸裂する!
『ああっとぉー! これは捕食だ! 大カマキリの捕食だぁー!!』
『何とあの大カマキリ、毒が効いてる振りをしてたんですか! なんてクレバーなカマキリなんでしょう驚きましたねぇ!』
実況も大盛り上がりだ。会場を見事に欺き、ムシャムシャと蝶を喰らうカマ助。
「なんだって!? 僕の蝶が、ただの大カマキリに捕食されただとぉー!!」
『馳走になった。では次は不埒者に目にもの見せようぞ』
カマ助は、毒鱗粉が効いていないと周囲の皆が分かっているのにも拘らず、ふらふらと毒が効いている振りをする。
「Σはっ、そうか! 致死には至らないが毒自体は効いているんだな!? ならば他の毒が効く可能性がある筈だ! 僕の蝶は複数の毒鱗粉を作り出せるのだからな!」
そんな起るはずの無い奇跡を語る笹傘。
いや、無理だろ。うちのカマ助、お前の蝶喰ってるんだぞ?
「カマ助。毒が効いてキツイかも知れないが、真空死鎌鼬で攻撃だ!」
『御意』
もちろん、毒が効いてるなんて嘘だ。
カマ助は、そもそもあたしがテイムをした時に、そこら辺は克服してるしな。
カマ助が、ワザとふら付きながら、真空死鎌鼬を放つ。
笹傘が口に啣える薔薇の花がポトリと落ちる。
あたしは、笹傘に見える様にニヤッッと笑う。
あたしの意図を察し、サッと顔が青く為る笹傘。
「し、しんぱ……!」
「すまんすまん。うちのカマ助、毒鱗粉の所為で上手く狙いが付けられない見たいなんだ。でも、あたしも勝つためには、カマ助に攻撃して貰うしかないんだ。許せよ笹傘君?」
あたしは笹傘の発言を遮り、ニヤニヤと表情を作り話をする。
そして、そのままカマ助に攻撃の指示を出す。
「や、やめ、ヒィィィ――!!」
そこからはもう、女子受け第一主義の笹傘君のストリップショーの開幕だ。
笹傘の服が、一枚一枚剥がされて往く度に会場は大盛り上がりだ。
え、訴えられたりしないかって? 大丈夫大丈夫、これは試合中の不慮の事故。人の言う事を聞かない虫がやった事だよ?
まあそれは兎も角、性根の腐ったイケメン何ぞ全裸にしてくれるわ!!
「しょ、勝者! 狂犬玉瀬!!」
審判からあたしの勝利がコールされる。カマ助は、何事も無かったように虫籠に戻る。
『いやー、凄い戦いでしたね。河北さん』
『ええ、本当に色んな意味で凄い戦いでした。結局、玉瀬さんのカマ助君は毒は全く効いて無かったようですしねぇー』
『本当ですよ。見事に騙されました(笑)』
実況と解説の水河コンビの二人にも楽しんで貰えたようだ。
「玉瀬ちゃん俺らの為に……」
「玉瀬さん……。いや、姉さんと呼ぼう!」
「玉瀬ちゃんの凶暴な笑顔、色んな意味でドキドキすますた」
笹傘に因縁のある男子も恨みが晴れて良かったな!
ストーカーに為らないなら、あたしのファンに成っても良いぜ!
「玉瀬さん、良い物見せてくれるじゃない!」
「イケメンのストリップショー最高だったわ!」
「玉瀬お姉さま、素敵ですわ~」
ほほぅ、これが女子受けって奴か!
女子は敵に回すと厄介だからな、ファンができるのは良い事だぜ!
次回予告
本戦トーナメント二回戦に駒を進めたあたしは、技巧派幼虫使いのキャタピラー柄巻と対戦する! 柄巻技に苦戦を強いられるあたしだが、果たして勝利は……。
と言う訳で次回もよろしくな!!
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