戦神とは
神是:お前が………戦神の斑鳩だと?そんな筈はない、もしもそれが事実ならお前は何故生きている。生きていられる筈がない……!
斑鳩:そんなに驚かれるとは心外だな。
一ノ瀬:樹がそんなに狼狽えるの、初めて見たよ。何かおかしいの?
神是:こいつの身体には、魔導力誘導増幅装置がついていない。
一ノ瀬:……………え、何だって!?あの装置が、ついてないの?それホントなの……?
神是:これでも医者として連中の身体を調べてんだ、見逃すほど落ちぶれちゃいねぇ。
斑鳩:(置いてきぼりを食らってる気分だな、一体何の話をしてるんだ……?)
神是:おい、斑鳩とやら。てめえなんで装置の助力なしに生きていられる?いつからだ?
斑鳩:………………俺に聞かれても分からない。その機械は何の役に立つのかも知らないから……
神是:とぼけるのも大概にしろ。魔導力誘導増幅装置ってのは……てめえらに仕掛けられた安全装置。
ぶっ壊れたら即死する。それに生命力を魔力へと強制変換する機能もあるから、てめえの存在自体が矛盾してんだ!
斑鳩:……………そうなのか。
月:そう怒鳴るな、赤髪。斑鳩は普通の手順を経た戦士ではない。
斑鳩:月(ゆえ)………?
月:赤髪の言う通り、斑鳩の存在はあり得てはならない……。斑鳩の正体は、強大な力を封印する人柱だ。
一ノ瀬:ひ………ひとばしら?
神是:どういうことだ。封印でありながら力を操る事が出来るわけ……
月:少し語弊があるが間違いない。斑鳩は…………自らの意思で"破滅の力"をその身に宿し、天使に悪用されぬよう一人で闘っている。
神是:なら先の質問に話を戻すが、その破滅の力とやら……どうやってコントロールしている?
月:並外れた精神力だ。怒り、憎しみ、悲しみ………それら負の感情が今の斑鳩を支えている。
斑鳩:……………俺じゃないんだよ、この力の持ち主は。
一ノ瀬:斑鳩君……?
斑鳩:俺の弟だった、愁の力なんだ。俺が無力だったから愁は………!
月:力をコントロールできず、自ら放った魔力で消し炭になった。天使でももてあますような力だ、人間ごときに操れる訳がない。
だが弟を目の前で失った斑鳩は……無我夢中で力に飛び込んだ。
斑鳩:…………笑ってたんだよ、あいつら。あんまりどんくさい死に方だから傑作だとか言いやがった!
実体がなくて触れないと分かってたけど俺は、その力の塊に殴りかかって。それから……
月:偶然か必然か、めでたく適合したという訳だ。
一ノ瀬:………………そんな。これが戦神の、僕たちが恐れてたものの正体なの……?
神是:(俺の気のせいなんだろうが、この月とかいう従者……随分と辛辣な言いぐさだな。どことなく喜んでいるようにもとれる)
光と闇を湛えて 限前零 @rieru_sai
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