生死の境

月:……俺は………生きてるのか……?(あの時、俺と奴は……死んだはずなのに…)


一ノ瀬:お、月君!目が覚めたんだね……良かった……!


月:……一体何があった………?あれが撃たれた後の記憶が……あやふやだ…


一ノ瀬:当たり前じゃん。君、ずっと実体を保てなくなってたんだもん。


月:(ということは……奴は"死んでしまった"のか?でも、まだ微かに気配を感じる……)


あれは……何処だ?


一ノ瀬:隣の部屋で寝てるよ。生死の境をさ迷ってるから予断を許さない状況だけど……


月:会わせてくれ。


一ノ瀬:うん、そばに居てあげて。(彼が目覚めたということは、主人である斑鳩君もあるいは……?)


?:そこの君、何処に行くつもりですか?


(斑鳩はその問いかけには答えなかった。身体を引き摺るように、おぼつかない足取りで歩くのみだ)


無視ですか、いい度胸です。肉体を置き去りにして……死にたいのですか?


斑鳩:……………もう、使い物にならない。


?:いいえ、まだ間に合います。私についてきてください!


斑鳩:……………離……せ!


(謎の人物は、斑鳩の腕をつかむと逆方向に走り始めた。振りほどこうにも力が強くて、今の斑鳩にはどうしようもなかった)


斑鳩:やっと柵から解かれたんだ…もう放っておいてくれよ……!


(そう叫んだあと、斑鳩は意識を失ったようだ)


日向:………捉えた!やっと、やっと捕まえました……。もう…離しませんよ………(死なせてたまるものですか、敵味方の区別なく……私を助けてくれたのだから…)


一ノ瀬:………様子はどう?月君が目覚めたから連れて来たんだけど。


日向:そう…ですか。


月:斑鳩………(声が、聞こえねぇ……)目を、覚ませ!


日向:ほら、戻りなさい……斑鳩君。私だけじゃないんです、貴方の帰りを待っているのは…!


だから、死なないで……!


<2日後>


斑鳩:…………う……ん…


(斑鳩が目を覚ますと、何処かで見た顔がそこにあった)


…………あんたは……夢にいた…?


月:大丈夫か?


一ノ瀬:斑鳩君!良かった、助かった………


斑鳩:…………すまなかった。俺ともあろうものが………


日向:………全く……貴方って人は!


斑鳩:え……?だ、誰だ………あんた。(つい最近、何処かで声を聞いたような……)


日向:私は…………


斑鳩:そういやあんた……あの時俺を死なせてくれなかったな。何故だ?


月:あ、あの野郎………!(やっぱり引っ張られてやがったか…)


一ノ瀬:え。どゆこと?(月君は驚いていないようだし、話がさっぱり読めない……)


日向:私が、日向だからですよ。確かにこの姿では初めまして……ですが。


友を死なせまいとすることが、そんなにおかしな事でしょうか。身を挺して助けてくれたからこそ……


私だって、助けたいと……


なのに、貴方は……!


斑鳩:………嘘、だろ。あんたが日向さんだって?俺はまだ…夢を見ているのか?


なんで、会った事もないのに……生き写し、じゃねーか……


月:(それより斑鳩が言った、死なせてくれなかったの件が気になるな。)


一ノ瀬:(ソレもそうだけど、日向君の事、声で気付きそうなものなのに……どうして?)


月:(声……声、か。言われてみりゃ確かに俺は、日向の姿が変わっててもすぐ理解できたからな)


一ノ瀬:(とにかく、今の僕らはお邪魔みたいだ。二人に任せよう。)


斑鳩:なぁ……さっき、なんで俺の夢に出てきたんだ?しかもその姿で…


日向:夢じゃありません。直接貴方の中に入って、捕まえに行ったんです。


斑鳩:…………え……まさか俺は…?

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