接触

斑鳩:…………この人を…助けてくれないか?足を怪我してるんだけど…さっきから元気がなくて。


?:ふむ、怪我人とあらばしょうがないな…奥にどうぞ。(このプレッシャーは…光の騎士か。どうやって此処に?)


斑鳩:(入るまでは分からなかったけど……この場所、闇の魔力に満ちてるんだな。別に苦しくはないけど不思議な感じだ。右腕の"これ"と同じく…)


………うっ!?おい、あんた……身体が…重い!


(背負っていた彼の姿が、闇の眷属である本来の姿に戻る。斑鳩はなすすべなく下敷きになってしまった)


?:………あ。怪我人ってまさか、卯月君だったの?しっかりしてよ、姿戻っちゃってるよ!


斑鳩:…………いてて………突然どうしたんだ?(急に慌て始めたな、あの人。そんなヤバい状態のか…)


?:とにかくありがとね、君。この子の身柄は確かに引き受けたよ。是非君とも話がしたいから…良ければ待っててくれないかな?


斑鳩:………あ、ああ…分かった。(せっかくだから、待ってる間に武装してみるか…)


(身柄を委ねた後、待合室で武装した斑鳩。右腕だけが光と闇を湛えた斑な見た目になっている事に気づく)


ふーん。光に打ち消される訳でも、これ以上侵食する訳でもないのか。剣の見た目もいつもと変わらない…ちょっと拍子抜けだな。


(やや残念そうな様子で、武装を解いた斑鳩。椅子に腰掛けるとそのまま待つことにした)


?:………終わったよ、君もおいで。


斑鳩:…………ん。(俺としても、聞きたい事が色々とある。付き合うしかないか…)


(部屋に入ると、人の姿に戻った彼が横たわっていた。手当ては終わっているようだが……)


……あの人は、無事なのか?


?:うん。斬られた傷口に残ってた光の力のせいで……もうしばらくは意識が戻らないと思うけど。


斑鳩:…………………そう、か。(もう少し早く止められていれば…)


?:聞かせてくれないかな、あの子と何処で出会ったのか。そして何があったのかを…


斑鳩:出会ったのは、この近所の路地裏だった。天使共に襲われているのを見つけて…その時俺、普通の人間が襲われてると思ったから……天使に食って掛かってさ。


何とか倒して、あの人に場所を聞いて……此処に来た。


?:そうだったのね……。どうして光の騎士が、この場所に来れたのか…気になったんだよ。


斑鳩:…………!俺、自己紹介してないのに…どうして?(何者なんだ、この人…)


?:この至近距離で武装して、気付かないと思った?


斑鳩:…………それは…


?:別にそれについて咎めるつもりはないけど。この場所の事や、卯月君の正体は何となく分かってるんでしょ?僕はこの場所の主、一ノ瀬だよ。


君ら光の存在からは、"邪神"と呼ばれることが多いけどね。


斑鳩:邪神……?(天使共から聞いた話だと、闇の眷属の親分だったっけ…)


一ノ瀬:ま、それはいいか。好きなように呼んで頂戴。とにかく…この場所は結界が貼られてるから君には入れない筈だった。"闇を受け入れた"んでしょ?


斑鳩:うー……それは正直、分からないんだ。あの後確認したら、右腕だけが光と闇の斑になってたけど……


(斑鳩は腰の剣を少しだけ引き抜いて仮武装状態になった。そのまま右腕を一ノ瀬に見せる)


これが、受け入れたって事なのか?


一ノ瀬:……………ふむ、ちょっと触ってもいい?


斑鳩:…………ああ、触られても別に痛くはないけど…。闇の人が武装してる俺に触っても大丈夫なのか?(光の塊だもんな、平たく言うと)


一ノ瀬:おや、心配してくれるんだね…ありがとう。でも問題ないよ、僕レベルになれば…その程度ではダメージを受けないからさ。


もちろん、僕の方からも闇のダメージを与えるような真似はしないからね。


(斑になってるのは肩から指先にかけて。本人の申告通り、光と闇の境目に触れても痛くはないみたいだけど……


ただ、これが腕だけじゃなくて胴体や頭部に闇が回るとどうなるか……かな)


それにしても、何でこんな局所的なんだろう。普通全身にすぐまわるのにな。


斑鳩:卯月さんは、この右腕に舌を巻き付けて…力を注いでくれたんだ。武装してなかったけどそれも関係するのか?


一ノ瀬:………いや、多分それは関係ないよ。武装した瞬間に全身に回るからね。


(………そして、普通はその瞬間死に至る。人間で言うなら拒絶反応か。卯月君……ずいぶんと危ない賭けに出たもんだ、全くもう……)


斑鳩:…………………なぁ、これって消えないのか?


一ノ瀬:戦神の実力を持ってる君なら、その気になれば消せるはず。だから侵食も止まってるでしょ?さっきも言ったけど普通なら全身にすぐ回る……って。


斑鳩:そうか…別に消したい訳じゃないんだけど、なんか……。


一ノ瀬:え………消さないの?


斑鳩:別に見た目だけなら気にする必要はないからな。不思議な感じで、俺は好きだけどさ。


一ノ瀬:えーっと…ごめん。楽観視してるとこ悪いんだけどさ……


斑鳩君、もしその闇が身体に回っちゃったら…最悪の場合、君…死んじゃうよ。普通の人間じゃないんだしさ。


こんな事、敵にアドバイスするような内容じゃないけど…ね。

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