第8話











 カテゴリー1、2の超獣の死体の山がそこかしこに作られている。流石にこれだけの数と戦うユウヒも無傷という訳にはいかなかった。

 身体中に切り傷、打痕を受けたユウヒはマオから貰った医療キットの中身にある得体の知れない「外傷用」と書かれた飲み薬を噛み砕き、そうすると僅かにだがゆっくりと傷が塞がり始める。痛みも少しだけ緩和されたように感じた。


「再生治療薬か」


 ユウヒは苦い笑みを浮かべながらそう呟いた。

 再生治療薬というのは超獣技術を用いて作られた薬品のひとつで希少なものである。

 一粒辺りうん百万という値段が付けられる新人のスレイヤーではとても購入できない、ある意味ではナンバーズぐらいしか利用しない薬だ。


 そんな高価なものをケチケチしている場合ではなく、出し惜しみはしない。出し惜しみをすれば簡単に死ぬ。


 そこでユウヒはなにかに気づき空を見上げた。

 雲より上、かなり高空に何かが漂っている。ユウヒの視力ならそれがよく見えた。


 それは一言で言い表すなら亀であった。亀にしては胴体が長く、手足の部分からはクジラのヒレのようなものが生えている。頭部に当たる部分は下向きに巨大な眼球が一つだけついているだけで、口などはない。

 問題なのはその腹の下に大量についている白い楕円形の球体であった。


 ユウヒが怪訝な顔でその超獣を見上げていると、突如として腹の下に着いた楕円形の球体がポロポロと地面に向かって落下し始めたのだ。


 ユウヒは嫌な予感を感じて回避行動を取る。

 ユウヒの周囲に落下してきたのは人より少し大きい程度の「卵」であった。

 落下の衝撃で割れた卵の中身からは落下の衝撃で潰れかけた脳ミソに昆虫の節足をそのままつけましたみたいな見た目をしたカテゴリー2程度の超獣であった。


「…産卵したんですか? あの高度から?」


 産卵というのは子孫を残すための行為。

 空を飛ぶ超獣が行った産卵は、産卵と言うよりは爆撃であり、生物の基本ルールから逸脱した人間を殺す為の行いであった。

 そしてその超獣は悠然とユウヒの頭上を飛び去っていき、一般街の方へと飛んでいく。問題なのは「卵」が一つ二つと腹の下にまた生え始めていたことだ。

 あの高度にもなるとユウヒに出来ることは何一つない。

 その超獣に対する対空砲火や、スレイヤーによる攻撃が始まっていたが高高度かつ堅牢な外殻を持っているようで効果は薄そうであった。


 気持ち悪い鳴き声を上げて襲いかかって来る産まれたばかりの超獣共をユウヒは大剣で切断していくが、あらかたカテゴリー1、2の超獣を殲滅していたところでこれなのでもう笑うしかない。


「クソ共が」


 ユウヒは超獣の残骸が飛び散っていく中で悪態をつくが、更に嫌なことが起こる。


 壁の亀裂から顔を覗かせた巨大な超獣がユウヒのことを見下ろしている。ムカデに似たその超獣は今まで戦ってきたカテゴリー2よりも遥かに巨大で、それこそ一軒家がそのまま動いているように感じるほどの巨体を壁の亀裂からシティ内部へと侵入させてくる。


 顎脚を擦らせて気味の悪い威嚇音を立てるその超獣は、今まで戦ってきたものとは比べ物にならない程度の脅威を感じられた。


「カテゴリー3…来ましたか」


 産卵で降ってきた超獣を蹴り殺し、節足を引きちぎりながら戦っていたユウヒは動きを止めてその巨大ムカデを見据えた。


 カテゴリー3超獣。今まで戦ってきた雑魚とは比べ物にならないほど強力な超獣であり、恐らくは最もスレイヤーズを葬っているカテゴリーの超獣である。


 巨大なムカデは節足の先端で彷徨いていた超獣を踏み潰しながらユウヒに向かって顎脚を開きながら突進してくる。その巨体の癖に動きは速い。

 ユウヒをその巨大な質量で押し潰そうとする行いは最も効果的な攻撃方法だ。ある程度頭も回るのだろう。


 ユウヒは突進を避けるために跳躍し、ムカデ型超獣の上に飛び乗る。当然のようなムカデ型超獣は暴れ回るが、ユウヒはお構い無しに大剣をムカデ型超獣に向かって突き刺した。

 甲殻の節目、比較的柔らかい場所に突き刺さった大剣はムカデ型超獣が痛みで悶えるには十分な効果を発揮する。


 しかしムカデ型超獣の曳航肢が想定される挙動よりも遥かに柔軟に動いて、ユウヒのことを薙ぎ払った。ユウヒは大剣を手放し、威力を吸収するためにわざと吹き飛ばされることを選択し、廃墟のビルの壁に着地をするがムカデ型超獣はそんなユウヒに頭から突進を行いユウヒ諸共ビルは崩壊した。


 ユウヒはムカデ型超獣の顎脚を両手で掴んで足を踏み込み超獣の動きを抑え込む。小顎がガチガチと音を立てながらユウヒを喰らおうとしてくるが、ムカデ型超獣の力とユウヒの力は拮抗していた。


「お前なんかに構ってる暇は…ないッ!」


 ユウヒは気合いの籠った声と共にムカデ型超獣を押し返し、怯んだムカデ型超獣の顔面に渾身の蹴りを叩き込むとムカデ型超獣はひっくり返るように倒れた。

 ユウヒは直刀を抜刀するとムカデ型超獣の腹部、頭と胴体の関節部分に向かって直刀を突き刺し、そのままムカデ型超獣の身体をなぞるように、強引に直刀を動かして走り出した。


 切断されたムカデ型超獣の腹部から臓物と大量の体液が吹き出し、ムカデ型超獣はしばらく暴れ回っていたが、やがてひっくり返ったまま動かなくなる。


 ユウヒは呼吸を整えながら、突き刺さった大剣を回収し、念の為にムカデ型超獣の頭に大剣を突き刺してトドメを刺してから再び壁の亀裂の方に向かう。


 壁の亀裂からは再び超獣がなだれ込んできていた。容赦がない現実にユウヒは舌打ちをしつつ、再生治療薬を噛み砕く。


「対超獣結界、これ機能してませんね…。と言うよりか、あのカテゴリー5の妨害が強力になってきてる?」


 対超獣結界は生半可な妨害で機能を停止するような機構にはなっていない。壁が残っていれば稼働し続けるし、核爆弾が大気圏で爆発してEMPが降り注いだとしても稼働する。

 ユウヒはその対超獣結界が緩やかにだが弱くなってきていることに気がついた。少しでも稼働していればカテゴリー3の群れが押し寄せてくるなんてことはないだろう。


 ユウヒは疲労と痛みが蓄積してきた身体を叱咤して、入り込んできている超獣に斬り掛かった。














 ****














「なあ」


「なんだ」


「お前ならあのカテゴリー5、どうにかできるんじゃないのか」


「それはそうだ。俺にとってみればあんなの可愛い子供みてえなもんだ」


「…なら助けるべきじゃないのか?」


「これは人間がどうにかする問題だ。俺が手を出す問題じゃない。滅ぶならその程度ってことだろ」


「相変わらずだな」


「人間の自業自得に俺が手を出す義理なんざないね。まあ、あの子の為にならやってもいい」


「昔からそうだったが、ほんとにあいつが好きなんだな」


「大事な存在だよ。…まあいい。少しは手を貸してやる」













 ****














 どれだけの超獣を倒したのか、ユウヒには最早検討がつかなかった。


「戦果報告って義務でしたっけ……面倒くさそう……」


 乱れた呼吸をどうにかして整える。

 目の前にはもうなんの生物だったのか検討もつかない、様々な生物の特徴を持った肉の塊がユウヒのことを見下ろしている。

 カテゴリー3と推定できる個体が五体程度、壁の亀裂からユウヒの目の前に現れていた。その足元からは小型の超獣がこれでもかと言うほどなだれ込んできている。


 流石に持ちそうにない。


 ユウヒの感想はそれに尽きた。

 たった一人でここまで持たせたのに、カテゴリー5は未だに鎮座していて、高高度を飛んでいるあの亀型超獣は市街地に産卵を繰り返している。

 もうこの東京シティは終わりなのかもしれない。それでもユウヒには戦う理由があった。


『生きてるか?』


 無線機から聞こえてくる声。マオのものだ。


「残念ですが、まだ死ねないようですね」


『そいつはよかった。そっちに援軍が間もなく到着する。それからカテゴリー5への特効性を持つ生体崩壊薬の調合が完了した。君の頑張りは無駄ではなかったよ』


 その言葉を聞いたユウヒは安堵した。それと同時に気を引き締め直す。


「カテゴリー5はそれで殺せるんですね」


『ああ、殺せなくても撤退はするだろう。奴がいなくなれば対超獣結界が機能し直して壁の補修も可能になる。残された問題は空のあいつだけだ』


 空のあいつと聞いてユウヒは空を見上げる。そこでは悠々と空を飛びまわり、産卵という名の爆撃を繰り返している超獣がいた。


『カテゴリー4。空を飛んでくる癖にその外皮は戦車砲じゃ貫けない』


「そこのカテゴリー5を倒せば戦闘機が飛べるでしょう?」


『一度EMPを浴びた兵器が点検無しで飛べるかって聞かれたらNoだ。パイロットは貴重品だからな』


「じゃあどうするんですか」


『まあ奴のことはいい。そこそこ腕の立つスレイヤー達が産卵で降ってきた超獣を倒してる。ジリ貧だが、”対策”はすぐに済むだろう』


 ユウヒにはマオの言いたいことがいまいちよくわからなかったが、マオの『とにかく』という声で思考を切りかえた。


『ナンバーズがそっちに向かってる。まだ君を酷使することになるが、どうにか凌いでくれ』


「構いませんよ。それが仕事なので」


 ユウヒは塞がった傷口に付着していた血液を手で拭いながら立ち上がる。

 立っていることが不思議なくらい、ユウヒの体は悲鳴を上げていた。再生治療薬は傷を修復はするものの、血液の再生などはできない。

 ユウヒはだいぶ出血を繰り返していた為、既に視界はくらくらと揺らめいていた。


『…お前はヒーローだよ。本当に』


 マオはそう呟き、ひとつ間を置いてから立ち上がったユウヒに言葉をかける。


『三分持たせろ。東京シティの最高戦力の一人を向かわせてる。ランクは25位。申し分ないだろ』


「まじで東京シティの最高戦力じゃないですか」


『どうせこの戦いが終わればお前が最高戦力になるだろうけどな』


「冗談よしてくださいよ」


『冗談ではない。…来るぞ』


 マオがそう言えば壁の亀裂から巨大な超獣達が動き出す。そんな様子を見たユウヒは肩を竦めた。

 体力は限界。けれどここで死ぬ訳にはいかない。

 あいつとの約束も果たしていない。

 折角再会した姉と話してもいない。

 死ぬ訳には、いかなかった。


「かかって来い、ゴミ虫共がッ!」


 ユウヒは自身を叱咤する意味も込めて吠えた。

 大剣を手に持ってカテゴリー3の一体に斬り掛かった。


 手間などかけられない。一撃でカテゴリー3を仕留めなくてはならない。

 強くて、鋭い一撃を、弱点に叩き込め。

 そう思考すればユウヒの赤い右目が少しだけ煌めいた。


 力が漲ったような気がした。

 そしてそれは事実で、ユウヒの斬撃はカテゴリー3の丸太何個分かわからないほど太くて分厚い腕を切断し、走っていたカテゴリー3が体制を崩して転倒したところをユウヒはその大剣で体に不釣り合いな小型の馬のような頭部を切断して一匹目を倒した。


 火事場の馬鹿力だろうか。そんなことはどうでもいい。吠えろ。戦って、生き残れ。


 雑魚を蹴散らしながらユウヒは大剣を振るって二体目のカテゴリー3超獣に向かって飛びかかる。カテゴリー3の背中に生えた無数のタコに似た触腕が、ユウヒに向かって振るわれる。

 空中にいる以上回避は不可能。ユウヒは体をひねり、遠心力に任せて大剣を回転させてその勢いのまま超獣に向かって大剣を投げた。


 回転しながら真っ直ぐ飛んでいく大剣はそのまま超獣の顔面に突き刺さり、超獣は激しい咆哮をあげながら暴れ回る。

 ユウヒはその超獣の頭に着地すると、顔面に突き刺さった大剣を引き抜いてその超獣の脳天に再度大剣を突き刺した。

 超獣はしばらくのたうち回っていたが、やがて動かなくなる。


 二体のカテゴリー3超獣がユウヒのことを奪い合うように突進してくる。

 ユウヒは超獣の頭を蹴って後方に地面を滑って距離を置くと、超獣と超獣がぶつかり合った所で地面を何回も蹴りながら走り、人では認知出来ないほどの速度で二体の超獣に肉薄すると争いあっている超獣の片方の真後ろから、恐竜のような見た目の超獣の後頭部から飛び蹴りを打ち込み、二体の超獣はもつれ合うように地面に転倒した。


 ユウヒは隙の大きい押し倒された方の超獣に向かって大剣を投げる。ユウヒの「パワー」タイプの力で投げられた大剣は押し倒された超獣の人一人ほどの大きさの眼球に突き刺さった。

 超獣が絶叫を上げながら痛みに悶え苦しんでいる間に、もう一匹の恐竜のような超獣に目を向けたところでユウヒの視界外から何かが飛んできたのに気づく。


 無我夢中で反応が遅れていたが、ユウヒはそれに反応すると直刀を抜刀してそれを防ごうとした。

 だが、ユウヒの予想よりもそれは速く、ユウヒの左肩に突き刺さった。


「ッ!」


 ユウヒは地面に落下し、左肩に突き刺さったそれを見る。ヤマアラシが生やすようなその棘は返しがついているようで引き抜こうとすれば傷口を広げることになるのは明白であった。

 立ち上がって痛みを堪えながら戦おうとしたユウヒだったが、視界がグニャリと歪んだ。


「…毒か」


 それは即効性の毒だった。麻痺毒の類だろう。

 ユウヒは膝をつき顔を上げ亀裂の方を見てみる。自分にこの棘を撃ってきた超獣はヤマアラシというよりかは長い尻尾が細長い銃として機能しているような首のない蜥蜴のような見た目をした超獣であった。恐らくあの尻尾はかなり精密で高速な射撃を実現しているのだろう。


 亀裂から続々とカテゴリー3が現れ始める。倒したのはたった数匹だけ。毒を受けて戦闘の継続は困難であった。


 終わりか。

 無数の超獣がユウヒに迫ってくる。

 絶望の津波。

 まさにそう表現にするに相応しいグロテクスで憎々しい人類の敵達は、ユウヒのことを踏み潰そうとした。


 だが、ユウヒは見た。


 ユウヒの横を真後ろから真正面に、何かが生物とは思えない、寧ろこの世のものとは思えない速度で駆け抜けて行ったのを。


 遅れて届いた炸裂音と衝撃波が周辺に散らばっていた超獣の死体を舞い上がらせ、ユウヒも当然吹き飛んだ。


 毒が体を侵食し、意識が薄れていく中でユウヒは、紫の髪をツインテールに縛った少女がたった一人で絶望の津波を破壊していく様子を、どこか他人事のように眺めていたのであった。











 ****














 死体が散らばっている。

 誰のかと言えば、超獣の。


 それを作ったのはたった二人の人間で、見るものが見ればその二人が如何に別次元の強さを会得していたのかがよくわかる。

 それこそナンバーズであってもこの所業は不可能だろう。


 そんな死体の中心に立っているのは一人の少女。

 小柄な、薄い紫色の髪を黒いリボンでツインテールに縛り、金持ちが着るような高価そうなブラウスとコルセットスカートを履いた、黒いマントを身にまとった少女であった。


 少女は金色の瞳を興味のない死体から離すと、「興味」のある仰向けに倒れた少女の方に向けた。


「おやおや、この東京シティにも骨のあるニンゲンがいたんですねぇ」


 不気味に口角を吊り上げながら少女は死神を模したような大鎌を片手に倒れた少女に歩み寄る。

 その少女というのは当然ユウヒであり毒のせいで気絶しているものの、その強靭な生命力のお陰で生きていた。

 少女は大鎌の石突でつんつんとユウヒのことを突くが、ユウヒは起きる気配はなかった。


「ふむ、殺してもいいですけどやっぱり万全の状態で戦って殺した方が楽しいですよねぇ。さてさて」


 少女は不気味な笑顔を張りつけたまま顔を上げる。

 カテゴリー5が巨大で悍ましい叫び声を上げると、その巨体からは信じられないほどの跳躍力で飛び跳ね、外縁壁を超えて逃げ去っていく。


 電子的妨害がそれによりなくなり、事前に整備されこの時を待っていたのだろう無数の大型ヘリコプターが防壁の補強資材を抱えてこの場所に向かっていた。


 空を飛んでいたカテゴリー4も、地上から伸びてきた「白い槍」のようなものに貫かれてその活動を停止し、東京シティを襲った未曾有の厄災は終焉を迎えようとしている。


 少女にとってそれらのことはどうでもいい。

 このシティが滅ぼうが、少女にはどうでもいいのだ。


「…貴方は」


「おや、…誰でしたっけ」


 ずっと前から気付いていたが、少女は敢えて気づいていない振りをしつつ声を掛けてきた人物に振り返る。

 旧式の狙撃銃を手に持つ銀髪の純白のスレイヤーズの制服を着た少女が、やや警戒心を込めた目で紫髪の少女をそのスカイブルーの瞳で見据えている。


「貴方に名乗る必要はありません。…その人の身柄を保護するようにと命じられているので、大人しく退いて貰えますか」


「いいですよ」


「……意外と素直なことに驚きました」


「フフフ、私はですねぇ、動けないニンゲンを殺す程つまらないニンゲンではないんですよ。このニンゲンが万全の状態で戦ってみたいので、今は預けてあげるんですよ」


 紫髪の少女は不気味に笑う。

 銀髪の少女は肩を竦め、狙撃銃を背中に背負うと紫髪の少女の横を通り抜けて倒れるユウヒの様態を確認してから担いだ。


「この人は東京シティを救った英雄です。そう簡単に殺すと言われると困ります」


「止められるものなら止めてみろ、と言っておいた方がいいですか〜?」


「……私では貴方には勝てそうにないので」


「フフフ、賢明ですねぇ」


 対超獣結界がその機能を回復したようで超獣は一切亀裂から入り込んでくる気配はなかった。


 未曾有の厄災は一人の少女と多くのスレイヤーズによって食い止められた。

 死者は数千人。その殆どがスレイヤーズと正規軍で、一般人からの被害はほとんどなかったという。

 この報せは世界中を駆け巡り、東京シティはその功績と功労をひたすらに賞賛された。


 人類が超獣に勝利した事例など片手で数える程度しかなく、外縁壁が破壊されてシティが滅ぼなかったという事例は、世界中で見ても初めての事であった。

 通常通りであればカテゴリー5に外縁壁が破壊され、カテゴリー4以下の超獣が雪崩込み、シティは蹂躙された上で滅ぶ。


 そしてその決まりきったセオリーを、その常識を、たった一人の少女が防いだのだ。


 人々は彼女のことを英雄と呼んだ。

 こうして彼女は、ユウヒは眠っているうちに英雄となったのであった。








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