第75話 どっちが明翔でしょーか?!
明翔と一条が忙しく服を着替えてはポーズを指示され写真を撮られている。柳と颯太は男子高のヤツらと相談しながらもっと目線上! などと監督のように演技指導を入れている。
「以上で撮影終了でーす! みなさん、お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でしたー!」
どこの撮影スタジオじゃい。やっと終わったか。長かったー。
笑顔でお疲れーと頭を下げ合う明翔へと駆け寄る。
「あす――」
「高崎くん、一条くん! みなさんとのスペシャルショットを撮るからこっち来て!」
「スペシャルショット?!」
明翔もすっかり女装に慣れてしまったのか、恥ずかしげもなく笑って男子生徒に顔を寄せピースでツーショット写真に応じている。
なんだよ、女装嫌がってたくせに……。
んなニコニコ笑ってやらなくていいんだよ。もう十分謝罪はしたし、写真も提供した! もうそんなヤツらの相手しなくて良し!
壁にもたれて腕を組みながらイライラと男子生徒たちと明翔と一条が写真を撮る様子を見る。あー、早く明翔連れて帰りてえ。
机をくっつけて隣同士に座っていた明翔が、男子生徒のほっぺたに口を付けた。
やりやがった、あいつ!
柳が勝手に言いだしたことなんだから、俺が好きなら拒否ればいいのに!
恥ずかしそうに笑って、男子生徒の肩をバシバシ叩いている。
笑ってんじゃねーよ。
何をノリ良くやっちゃってんだよ。
ツンなら絶対しねーよ? ツンは孤高を守り抜くよ?
ツンが心を許すのは明翔だけなんだから。
こんなかるーく他のヤツのほっぺにチューとかしねえから。
ノリが軽いんだよ、明翔は。
ムカつく……。
もーあいつ、俺だけのものにしたい。
「深月ー! 深月も挑戦してみなよー」
「あ? 挑戦?」
「ゲーム、ゲームー!」
いつの間にか撮影会がゲーム大会になっていたらしい。
明翔が笑顔で手招きしている。
同じ髪型、同じ制服を着て椅子に座って並ぶ明翔と一条の前まで歩いて行く。
「ゲームって?」
「2択なのに、みんなおもしろいくらいに外すんだよ」
「呂久村は見抜けるかな?!」
「何を」
「後ろ向いて」
何のゲームなんだ一体。
とりあえず、言われた通りに後ろを向く。何やらガサゴソと音がする。
「いいよ、こっち向いて」
くるっと振り向くと、明翔と一条が小声でせーの、と合わせて
「どっちが明翔でしょーか?!」
とうれしそうに言った。
何がしたいんだ、このいとこ同士は。
「バカ、お前だよ」
明翔の頭にポンと手を載せる。
「え?! なんで分かったの?!」
明翔が驚いている。
「よく似てるけど全く同じ顔ではないから見分けはつくって前にも言っただろ」
「本当に見分けられるんだ?」
「嘘だと思ってたのかよ。前も言ったけど、お前たちは別人なんだから見分けるのなんか簡単。明翔は明翔。一条は一条だよ」
明翔と一条が顔を見合わせると、ふたりしてニッコリと笑った。
そうそう、仲良くしなさい。いがみ合ういとこ同士よ。
しっかし、マジよく似てる。同じ髪型で同じ服着てるからドッペルゲンガー級だ。
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