第61話 白熱の作戦会議
「颯太は小さいから萌えを狙うべきだよな。ネコ耳とか付けたら?」
白い長毛がキレイな孤高の美猫ツンを明翔のキレイな顔の横に抱き上げる。
「いいね! ショタのネコ耳姿、絶対似合うよ。かわいい!」
「えへっ。そうかなあ」
「かわいい……」
両手をグーにしてネコ耳に見立て首をかしげる颯太にみんなほっこりしているが、ネコというよりクマである。
「それは素人考えだ! この女装甲子園のチラシがあったのは濃いオタクが集う一般には知られていないオタロードだよ。主催者や観客がそんな安い萌えにつられるとは思えない!」
黒岩くんのメガネが光った気がする。
「おお! 本物のオタクがいた!」
「黒岩くん、どういう作戦がオタクに刺さると思う?」
「まず、女装という前提があるから、本物の女性にしか見えない女装男子がいると高ポイントだと思う」
「女装男子?」
「適任は佐藤くんだ。萌えを入れるなら、高崎くんと一条くんだね。柳くんでは背が高すぎてオタクは食いつかない。柳くんはセクシー担当だ」
セクシーか、なるほど。二重の切れ長の目が和風女装の何だっけ、歌舞伎の男が女の役をやるやつ。女形? を彷彿とさせる。
黒岩くんはたしかなオタクのようだ。6人目に迎え入れて正解だった。彼はオタクの神だ!
「明翔と一条は同じ衣装の方がいいのかな?」
「完全に同じではインパクトに欠ける。プリキュアが色分けされているように、統一感はありつつ個性は大事だよ」
「明翔は筋肉質だから足とか出せないけど、一条なら出せるしな」
「足出すなんてイヤだよ、ボク」
「100万のためだ、このオタク神の言葉に従ってもらう!」
「足と言えば、柳くんは出せる足? 細そうではあるけど」
「とりあえず脱毛とトリートメントは完璧だよ」
「よし、出そう」
「なんで女装もしないのに普通に脱毛してんだよ」
「データによると、今の女子は男子の脱毛に寛容だ」
「だから、どこ元のデータだ」
「衣装のイメージ画を描いてもらえるとソウルメイトに説明がしやすくて助かるから、明翔描いて」
「りょーかーい」
サラサラと紙に人型を描いていく。髪型で誰か分かるけど顔は描き込まれていない。
「デッサン人形みたいだね」
「明翔、絵うまいんだっ」
明翔はほんと何でもできるな。何か弱点がないもんかね? メンタル以外で。
「柳から登場するとして、インパクトをどこに持ってくるかだなあ」
明翔が先頭の人型をシャーペンでツンツンとつつく。落ち着きなくシャーペンを回したり投げてキャッチしたりしているからデレはシャーペンの動きを目で追っているが、ツンにはもはやネコの本能などないのか興味なさげに明翔の足の上に寝そべっている。
「この身長で女装てそもそも無理めだよな」
「いや、大丈夫。僕に秘策がある」
「頼もしい! 昨日まではただの邪魔者としか思ってなかった黒岩くんが頼もしく見えるよ!」
「邪魔者だと思ってたの?! ひどいよ、高崎くん!」
「ごめんごめん、おわびにこの子抱っこさせてあげる。深月すら抱っこさせてくれないんだって。超貴重だよ」
あ。そっか、明翔は黒岩くんがネコアレルギーだって話聞いてなかったな。まあ断るだろうと何も言わずにいると、笑顔の明翔が黒岩くんの腕に自分の手を添えてツンを抱っこさせる。
……黒岩くんとの距離が近いな、明翔。
「かわいいでしょ」
追い打ちの笑顔に、黒岩くんが名前に反して真っ赤になった。
「う……うん! 僕ネコ大好きなんだ!」
あーあ……ツンの細くて柔らかい毛は服に付くとなかなか取り切れない。やっと顔のポツポツが消えてきてたのに、明翔のかわいさに負けたばっかりに……やっぱり不憫な男だな、黒岩くん。
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