第43話 BLはファンタジー
放課後、門の前で
「今日はいいもの見せてもらったよ! 来週も期待してるね!
などと言いながら笑顔で手を振った。
「
「別に? ボクと呂久村の話だから」
「何だよ、それ! なあ、深月ー」
「早く帰るよ、
「録画しとけよ!」
「じゃあねー、バイバーイ」
「あ、深月!」
「バイバーイ!」
一条に引きずられるように明翔が連れられて行く。諦めたのか、軽くこちらを振り向いたかと思ったら笑って手を振った。
良かった、笑ってる。安心して俺も手を振る。
「ものすごいライバル同士だね。似たような顔の同級生のいとこって」
「予想以上だったねっ。まあ、なんだ、深月……がんばれっ!」
「外野感出してねえで入って来いよ、お前らも!」
「いやいや、僕は外野だから」
「俺も」
ことあるごとに
つっかれたー……。かつて学校生活においてこんなに疲れた1日があっただろうか。なかった。そしてもう2度と経験したくない。
こんなん、毎日なんてやってらんねーぞ。なんとか、この週末のうちに打開策を見付けておきたい。
打開策を、となれば、俺にはあのお人しかいない。助けて、神!
「BL的展開の罠を仕掛けられた時、どう対処すればいいのでしょうか」
一条はわざと俺を逆上させたっぽい。俺を怒らせて、俺が明翔をかばうところが見たかったんだ。
一条の、理想のBLが見たかったんだ。……そんなもんに、いちいち付き合ってられるか!
「BLに罠などありません。あるのはイベントです。BLとは、ファンタジーなのです。登場人物はほとんどイケメン。さらにはイケメンとイケメンがイチャイチャするという、まさにファンタジーの世界。ファンタジーゲームで起こるイベントにいちいち悩みますか? 楽しむでしょう? 深く考えず、イベントを楽しめば良いのです」
BLはファンタジー。
なるほど、胸にスッと入った。
そうだ、そうだよ。同じような顔の美少年と美少女に同時に迫られているこの状況。まさにファンタジーだ。
これは、実写版世紀末フェアリーズワンダホーだったんだ!
イベントね。なるほど、今日のは美少女と突然ふたりっきりに、さあ、どうするイベントだったんだ。
なんか、ファンタジーってよりも恋愛ゲームっぽいけど。桜の木の下で告白されそう。
イベントだと思えば、一条の挑発に乗って体たらくを見せることもなくもっとスマートに楽しめたかもしれない。
すっかり気が楽になった俺は、よく眠れた。
起きたら土曜日だ。今日は何の予定もない。よし、もっとBLについて積極的に攻めてみよう。一条は理想のBLを見るためにイベントを仕掛けてくるはずだ。
ある程度、イベント内容を予測できればうまく立ち回れるかもしれない。
一条だって既存のBLからヒントを得るんだろうから、BLの知識を得ることはプラスにしかならないはずだ。
無料で読める漫画もあるのか……読める所だけでも読んでみよう。別に全部公開されてなくても問題ない。俺の目的はストーリーを追うことではない。スマホで見られるだけ見よう。
参考になるのはヤクザや俳優や兄弟が出てくるものではなく、同じ学生の話だな。
適当に選んでページを開いていく。
……エロい……
夕方には俺は、顔面蒼白となっていた。
ちょっと待って、BLってエロい。無理。いくらなんでも、俺こんなん無理。
一条は俺に何をさせようとしとんじゃい。
「こんなエロゲ真っ青なBLの世界でファンタジーのイベントなんて無理です」
神へのコメントにも俺の動揺がありありと広がる。
「みんながみんなBLにエロを求めているのではない! 私のように純朴な若者が恋愛に目覚めモダモダする姿をひたすらに愛でたい読者だっているのです! 大事なのは体のエロじゃない、心のエロ!」
心のエロって何ですか! 神!
なんか、神が激昂しとる。
「表面的なものに囚われることなく、彼に足りないもの、あなたが与えられるものを考えるのです。あなたにしかできないことがきっとある。それこそが心のエロを充足させるのです」
神って、どんな人なんだろう。初めて神の人となりに興味を持った。
どんな人生を送っていたら、BLで心のエロを充足だなんて考える大人になるんだ。
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