第5話 高崎 明翔との対決イン体育館

 今日の体育は、体育館でスポーツテストだ。

 自慢じゃないが、俺はスポーツだけは万能である。


「あー、腹減った。こんなんでスポーツテストとかやってらんね」

 高崎たかさき明翔あすかはさっきから腹減ったしか言ってねえ。

「明翔、中学では野球やってたんだろ? 運動得意なの?」

「あ、自己紹介覚えてくれてたんだ!」

「え、あ、うん」

 だらけた顔して腹減った腹減った言ってたくせに、急に輝く笑顔で見上げてくるんじゃねえ。ドキッとする。なんで共学校に通いながら男相手にドキッとせにゃならんのだ。


「俺たぶん、超腹減ってても深月に負けねえと思うよ」

「へー、えらい自信だな」

「まーね」

 なめくさりやがって、残念ながら俺も得意だっつの。見てやがれ。


「握力測定空いてるぞー。まだのヤツ来いー」

 スーツ姿の体育教師が呼んでいる。

「よし、まずは握力で勝負しよーじゃねーか、明翔」

「おうよ!」


「あ、俺も行くー」

 佐藤さとう颯太そうたがテテッと走って来た。

「俺と一緒にやったんじゃヘコんじゃうんじゃね? 泣くなよ、ちびっ子」

 あーあー、颯太内心ブチギレとんな、こりゃ。

「泣かないよ! 俺だって運動はできる方だから!」

 たしかに、颯太は見た目に反してヤンキー一家でもまれてるだけあって腕力もスピードもある。


「じゃあ、ちびっ子からどうぞー」

「二度とちびっ子言うな! 佐藤颯太だ!」

「よしよし、分かった分かった。颯太くん、ファイト~」

「颯太くんもやめろ!」


 知らねえって怖いよな。いくら身長差があったって、颯太のケンカなんか見たら明翔のように女の子みたいなヤツはビビり上がるだろう。


「うっし! ほれ見ろ、47!」

「おおー、こんなちっせーのに平均越えてくるんだ?! やるな、颯太!」

「へへっ。じゃあ、大口叩くこのカワイ子ちゃんは後にするとして、先に深月やれよ」

「カワイ子ちゃんやめろ」

 ちびっ子とカワイ子ちゃんが言い争ってる間にサクッと測定を済ませる。

「ほい、55」


 明翔に測定器を渡す。

「意外と強いな、君ら。よっしゃ、やるぜー!」

 こんなテンション高くスポーツテストやる高2がいるもんなんだな。かわいいな、コイツ。

「よっしゃあ! 61!」

「え! マジか!」

「すげえ!」


 くそ! 俺は運動しか取り柄がねえんだ! こんな女の子みたいな顔したヤツに負けてられるか!

「次だ次! 反復横跳びで負かしてやらあ!」

 力があるなら敏捷性はないだろう。俺はオールマイティだけどな。


 まずは颯太が59回か。さすが、颯太も高いレベルでオールマイティだ。

「明翔、先にやるか?」

「いや、俺は最後でいいよ」

 ほお、自信があるんだろうか。俺の握力も相当なもんだから俺には敏捷性がないと同じように考えたのかもしれないな。


「よし! 63!」

 あー、しんど。汗かいてきた。


 続いて明翔がスタートする。え、マジか。はえーぞ、コイツ。

「高崎、72-」

「バケモンか、明翔!」

「あー、腹減った」

 好記録出しといて感想それか。


「ならば、柔軟性だ! さすがに柔軟性までは……」

 と言いながら、もしかしてコイツこそオールマイティなんじゃね? とは思ってた。


「長座体前屈はー、颯太65、深月63、俺70っと」

「いえーい! 深月には勝った!」


 ……まさか、颯太にまで負けるとは……

 まだだ! まだ運動場でのスポーツテストがある!

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