第6話 高崎 明翔との対決オン運動場

 体育の時間ももう後半だ。運動場に出て、スポーツテストの続きを行う。


「うっし! 33メートルー!」

「おおー、やるなあ、颯太!」


 ハンドボール投げである。

 俺、これ正直苦手……いや、運動しか取り柄のない俺に苦手などない! 

 てか、俺的に苦手でも周りと比べれば全然上位なのに、このふたりが一緒だと苦手意識になっちゃうんだよ!


「いや! やる! 俺はできる!」

「がんばれ、深月ー!」

 いや、勝負だって言ってるのに応援してくれちゃうのかよ。何なんだ、明翔は。


「でやー!」

「呂久村、36メートルー」

「やったー!」

 人生最高記録~。今まで35メートルが超えられなかったんだよな。

 いいライバル出現で、俺も好記録出しちゃったわ。この俺にかかりゃあボール投げるくらい苦手でも何でもねーわ。


「高崎、40メートルー」

「げっ」

 振り返ると、明翔が腹をさすっている。

「あー、腹」

「減ってんだな、お前は腹が減ってるんだよな」


 空腹でこの記録って、マジで何なんだ、明翔は。

 い……いや、そう言えば明翔は中学時代は野球部だったんだから、球投げるのは明翔の得意分野なはずだ。腹減ってても俺が勝てなくたって無理はない。


「次は、立ち幅跳びか」

「ふっ、カエルの異名を持つ俺の跳躍を見せてやろうじゃねーか」

「適当言うな、深月。そんな異名はお前にない」

「颯太と深月って、中学同じだったの?」

「幼稚園からの幼なじみだよ」

「へー、幼なじみ」


 男子高校生の幼なじみって美少女JKが鉄板だよな。もちろん、俺もそっちが良かったよ。こんな隠れヤンキーじゃなく。


 まずは、颯太が250センチの好記録をたたき出す。だがその程度なら去年の俺すら超えていない。颯太に負ける心配はなくなったな。

 運動しか取り柄のない俺は、スポーツテストの結果はバッチリ記憶しているのだ。


「せーの!」

 めいっぱい足を腹に引き付けて跳ぶ。たぶん、俺にはこの跳び方が一番合ってるっぽい。


「呂久村、265!」

「よし!」

 これまた人生最高記録! 俺今体力のピークなのかもしんない。

「超えられるかな~、明翔くん~」

「まー見てなって!」

 おや、自信満々じゃねーか。


 かるーく跳んだように見えるのに、滞空時間が長い気がする。うわ、コレやべーぞ。

「高崎、270ー」

「おー、俺ら全員キリのいい数字だな」

 どうでもいい!

 くっそー、265なら超えられないと思ったのに!


「残るは、50メートル走と長距離走か……」

 予感通り、50メートル走は完敗だった。

 俺だって、6.7秒と颯太の7.1秒を大きく上回ったのに、明翔6.5秒て……。


「そうへこむなよー。俺だって腹へこんじゃってんだからさ」

「それで負けたのがなおさら悔しいわ!」

「まあまあ、まだ長距離走があるじゃんー」

「その余裕、お前絶対に自信あるだろ」


 かと思いきや、明翔は長距離走はクラストップだった俺どころか背が低い分足が短くて不利そうな颯太にも大きく遅れた。

「なんであんな自信満々だったんだよ!」

「ははっ。俺持久力ねえの忘れてたわ。あー、6時間目終わったし、帰りに何か食おー」

 ほんっとに、よく分かんねえヤツだな、明翔は!

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