第36話 巨大スーパーロボと現代

 これまでは、人型ロボットといっても等身大のものを中心にしてきました。

 今回は、人型ロボットといっても、巨大スーパーロボットの話です。鉄人28号とか、ジャイアントロボとか、アストロガンガーとか、ガンダムとかですね。


 最初に巨大スーパーロボが日本に出て来たのは、鉄人28号だったようです。前述したように、欧米では人型ロボットは神への犯罪なので、思考停止状態だったのですが、日本ではしっかりアニメになっています。しかも、コントロール次第で善にも悪にもなる存在として。



 科学は中立であり、使う側の考え方によって善にも悪にもなる。



 という概念は、欧米の影響があると思います。この概念を聞くと、わたしはどうしても、原爆のことを考えてしまいます。あれだけ非人道的なことをやっておいて、核は悪にも善にもなると涼しい顔をしている人たちがいるのを見ると、科学の進歩というのは、なにを犠牲にしているんだろうと思わずにいられない。


 鉄人28号は、それをコントロールする主人公の正太郎くんが正義の味方、ということになっているようですが、正太郎くんだって人間ですから、いつもいつも正義漢ぶってるわけにもいきますまい。


鉄人28号を使えば、強力な兵器の保有者として、絶大な権力を身につけることもできるんですから。


わたしなどから見ると、正太郎くんのバランス感覚が、少々異常におもえたりもします。

 善にも悪にもなるロボットという考え方は、少しばかり偽善の匂いもしますが、このあとの巨大スーパーロボの背景は、どうみてもかなりの思考停止状態を感じます。悪党はかならず世界を征服しようとがんばり、正義の味方はそれを防ごうとがんばる。



 このアニメが放送されたのは、冷戦時代。アメリカがその武力をもって世界に君臨するか、それともソ連が対抗して世界を支配するかというせめぎあいがあった時代です。


 現在では、アメリカの一人勝ちの様相を呈していて、いわゆる「パックス・アメリカーナ」が正義になってしまっているようですが、対抗している中国は、ソ連よりももっとしたたかなやり方で、世界を支配しようとしているようです。そこに第三勢力としてISなどのテロ組織が絡んできて、国際情勢は少々混乱気味。



 過去に置いては、正義と悪は明白だったのですが、高度成長期の終わりとともに断定的な悪や正義はなくなってきました。

 そこにガンダムのようなロボットアニメが出てきて、ロボットを使う側の理屈が考えられるようになってきたのでした。科学的に見て、巨大スーパーロボは実現不可能と言われていますが(ボトムズは、可能性があるといいます)、それでも、大きな力を借りて、世界に君臨したいという願いはだれしもあると見えます。



 もし、このような機械が思考し始めたら――。

 という命題に取り組んだのが、『二〇〇一年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク)です。宇宙に飛びだったコンピュータHALが意識を持ち始め、宇宙飛行士たちを排除していこうとする物語だったはず。スーパーロボも、操縦している間に意識を持ったらどうなることやら。



 日本に置いては、世界を支配するところまではいかないかもしれませんが、現実的な科学の助力によって、以前とは労働の質が格段に上がる現状があります。



 みなさんご存じだと思いますが、介護にはパワードスーツが使われつつある、と聞いています。ベッドに横たわる人をかかえたり、床ずれにならないよう動かしたりするのに力が要りますが、パワードスーツを使うことで苦労が半減する。



 あるいは、ぶどうの収穫にも、ロボットを使うようになりつつあるようです。

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これとは別に、ぶどうの糖度をはかり、成長不良のものを排除するようにAIが指導し、腕を機械がささえて収穫の手助けをするマシンもあるようです。



 巨大スーパーロボはムリでも、農業という第一次産業にロボットが導入されれば、その基盤の上の第二次・第三次産業そのほかは、だいぶ助かります。


 というか、たとえ機械であろうと頼ってしまわざるを得ないのが現状。その意味では、巨大とは言わなくとも、農業に携わるロボットは、スーパーロボットです。けっしてカッコよくなく、アニメにもならないでしょうが、現代に置いては、こういうロボットは必需品です。

 

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