第34話 ロボットとスポーツ(ロボティックス雑感)
ロボティックスとはロボットの設計・製作・制御を行う「ロボット工学」を指します。ロボットという概念そのものはSFから出てきた概念ですが、「ロボット工学」は、そのフィクションをふまえた理論や技術を指しているようです。
もともとロボットという言葉そのものは、
チェコ人カレル・チャペックの戯曲(1920)に出てくるものです。チェコ語でロボットは「労働」を意味するらしい。なので、ロボットが世間に出て来た70年代頃の現実的なロボットは、流れ作業で車の部品を組み立てたりする、産業ロボットのことを指していました。
人間そっくりのロボットなんて、つくってはいけない――。
というのが、70年代の常識でした。(日本では、お茶くみ人形がありましたが)。
西洋に置いては、人間型ロボットは、「神の領域に手を出す」ことだから忌諱されていたんです。しかしSFの世界ではロボットが生まれたり行動したりしたらどうなるか、考えたという過去もあります。科学に神を持ち出すのは不自然だということで、SFではキリスト教的な神は、できるだけ排除されているのがタテマエです。(あくまでタテマエです 笑)。
さて、このロボット工学三原則とは、ロボットが必ず従うべきとされる三つの原則で、もともとは米国のSF作家アイザック・アシモフの作品内に登場する「2058年のロボット工学ハンドブック」(『我はロボット』)内で定義されていたものですが、現在では小説の世界の枠を超えて、現実社会のロボット工学にも少なからぬ影響を与えたと言われています。具体的には、
第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
ちなみにこのロボットには、モビルスーツタイプのものは含まれていません。
ところがこの三原則には、重要な視点がひとつ、欠けていると主張する人が出てきました。
ロボットが人間に対して安全だとか命令に従うとかいうまえに、それじゃあその人間ってなんなのか定義されてないというのがその人の意見。
極悪非道なことをしていても、人間の形をしていたら人間なのか。
反対に、ほかの人にはマネできない、おそろしいまでの利他主義な人(マザー・テレサとか)はどうなんだろうか。
日本に置いて堕胎時期を迎える前の赤ちゃんは、人間なのか?
生まれてからの赤ちゃんは、いつから人間として、認められるのか?
そんなことをごちゃごちゃ言う人もいます。
議論はともかく、日本に置いては人間型ロボットは、人間として扱おうというフィクション上のお約束ができているようです。たとえばドラえもんとか、鉄腕アトムとかですね。
日本では、人間型ロボットは人間という一般常識ができているのでしょうか。それでペッパーくんは疎まれたのかな? (笑)
ロボットをスポーツ界に取り入れよう、という動きもあります。
陸上スポーツでは、競争相手がいたほうが記録が伸びることがたしかめられているので、そのライバルをロボットにしようという試みです。
こっちのロボットは、人間型をして『いない』ようです。陸上のトラック競技と同じように、競泳用にもロボットが開発されつつあります。伴泳ロボット「Swimoid」やヒューマノイドロボット「SWUMANOID(スワマノイド)」などがそれです。これらは日本で開発されているそうです。
球技では独アディダスが、サッカー選手の力を引き出すツールとして、スマートボール「miCoach」を開発しました。ほかにもゴルフなど、個人で楽しむスポーツにも、ロボットが進出しているとか。
いままで産業ロボットという、特殊な場所にいたロボットですが、東京オリンピックにおける審判などにも、ロボットが出て来ていると言われています。
人間離れしたパワーを持つロボットを使った競技も、今後できるという噂もあります。ロボットを使うことにより、障碍者と健常者が同じフィールドで競い合える新しいスポーツが生み出されつつあるそうです。
障碍者の社会的障碍も、ロボットで解消されるといいですね。
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