第33話 コンピュータとドラマ(後編)
ドラマの中のコンピュータというと、わたしはどうしても『地上最強の美女 バイオニック・ジェミー』を出さないわけにはいきません。諜報機関OSIの局長の背後で、巨大な冷蔵庫のような筐体の中、磁気テープがグルグル回っていました。あれはホンモノだったのでしょうか? わたしにとって磁気テープというのは、カセットテープの中身でしたから、コンピュータがこれを使っているのを見て、非常に不思議に思ったことを今でも思い出します。
さて、この『バイオニック・ジェミー』のエピソード内にも、コンピュータが出てきます。エピソード名は、
「ジェミー! 地球壊滅を救え!」
というものでした。ストーリーを紹介しますと、ある日ジェミーたち視聴者の見ていた番組を、科学者を名乗る男の映像が乗っ取った。
その人は、余命幾ばくもないが核兵器が廃絶されないのを憂い、一週間以内にまた核実験があったら、自分の施設にあるコンピュータに命じて、施設の爆弾を爆破させ、地球を破壊すると脅す。
この事態に、敵対していたソ連の科学者も核兵器廃絶に乗り出すが、すべて列強の陰謀だと反発した中東のある国が、核実験を強行した。地球滅亡まであと一週間。ジェミーは、施設のコンピュータ、マックスと決闘をすることになるが……
というストーリー展開。
このマックスというコンピュータが命令に忠実なあまり、博士のほんとうの願いを無視して、「わたしが勝つまで終わらない」と意固地になって、ほんとうに地球を壊滅させようとするところが、このストーリーのキモです。
制作者のケネス・ジョンソンは、実に挑戦的な番組を作ったなあ、というのが、今のわたしの感想。理由はいろいろありますが、なにしろアメリカは原爆投下が戦争犯罪だとは、ぜったい認めてませんからね、いまでも(笑) 「わたしが勝つまで終わらない」このセリフは、当時の米ソ対立の理屈でもありました。結局、こういう意固地なところは、テロリストたちにもあるわけですが……(汗)
ともかく、コンピュータが意志を持ち、人間の意図と違うことを始める、というおなじみのパターンは、SFの黄金のパターンだと言えます。
90年代の洋ドラ、『タイムマシーンにお願い』では、セリフだけですがハイブリッド・コンピュータというものも出てきます。エゴのカタマリなのだそうです(汗) このコンピュータを使って、過去の人間を調査し、過去に起こしたミスを修正するのが主人公サム・ベケットのお仕事です。
このハイブリッド・コンピュータにはジギーという名前がついています。わたしの知る限りでは、気まぐれで情報を渡さない時もありました。
ハイブリッド・コンピュータというアイデア、わたしには不気味です。機械が人間の脳みそにつながるって、ちょっとね……。でも、心臓にペースメーカーを入れてる人もいるから、そんなに不思議ではないのかもしれない。慣れってコワイ(笑)
コンピュータは、もともとは「計算する」というラテン語との造語が語源なのだそうです(ちなみにデジタルは、数字の10が語源なのだとか)。計算は非常に得意ですから、芸術には関係ないかと思ったら、絵画を描いてみたり音楽を作曲したりと、最近のAIはすごいことになっています。
なにかのショートショートで読んだみたいに、音楽を聞いてくれるだけでその演奏者の才能を伸ばすコンピュータとか、小説を読み上げたらそれだけで文章の技術がアップされるコンピュータとか、出てくるかもしれない(滝汗)
八〇年代、いまのAIのプログラム技術の基礎を作ったと言われるプログラム、PROLOGをつかって、プログラムを組んだことがある――と、夫は言っていました。わたしは銀行のオンライン・システムに、人工知能プログラム用言語IDLを使ったことがあります。
どちらも大失敗に終わり、雑誌に「動かないコンピュータ」として取り上げられるほどになってしまいました。それから二〇年、研究を続けていった結果、いま、AIが非常に役に立つようになったのでした。
しかし、どんなコンピュータでもウィルスに感染したら意味がない。もし宇宙船の、環境を制御しているコンピュータが、ウィルスに感染したら――ということを考えて、その対処法まで提案している作品があります。『ミニスカ宇宙海賊』(アニメでは、『モーレツ宇宙海賊』)。アイデア満載の面白い作品です。未読の方は、ぜひどうぞ。
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