第31話 気象予定師というアイデア その2

気象予定師というアイデアに刺激され、ネ友がこんなアイデアを出してくださいました。



 『気象予定作製業務。居住区は故郷を再現します。日本区は梅雨と台風つき。農業用は、植物の特性にあわせており、レジャーコロニーに対してはランダムに気象を変えていきます』



 これもりっぱなSFです。レジャーコロニーという考え方はガンダムとかドラえもんにもあるそうですが、そのコロニーに対して気象がランダムに決まるなんて、SFらしくていいなぁ。



 もちろん、日本にも梅雨や台風とは無縁の場所もあります。北海道なんかがそうですね。なので、日本区のコロニーも、各都道府県の実情に合わせた気象にしていくということも、考えられます。



 八〇年代のSF少女小説、『星へ行く船』パート2では、水が貴重な火星が登場します。日本の移住者が多い火星コロニーでは、年に三回――六月の第一・第三日曜日と、九月の第三日曜日に雨が降る(あとは十二月二十四日と一月一日に雪がふる)。そこには日本の気象にあわせて雨を降らす気象管理局というものがある、という話があります。



気象コントロールには闇の部分もある。そもそも、気象って軍事にも使えますから。



 歴史上、気象の変化のために勝利した戦争もあります。たとえば、ノルマンディー作戦。連合軍は、一九四四年六月六日にノルマンディーに上陸しますが、当日天候が悪く、ドイツ軍は海の荒れように、上陸は不可能と判断します。実際にはその嵐を縫って連合軍が六日に上陸し、油断していたドイツ軍を叩くのでした。



 まあ、このあたりはトリビア的な話ですが、日本でも、戦国時代には、天候を利用して戦いを有利にした話はあるでしょう。「長篠の戦い」と「関ヶ原の戦い」はとくに有名です。



 詳細はこちら。

 https://www.bs-asahi.co.jp/rekiten/lineup/prg_003/




壮大なSFやファンタジーをつくっていくのなら、戦争に触れないわけにはいきません。当日の天候はどうなのか。地の利は? 人の和は? 天の時は? 


 そういうことを考えていくと、ノンフィクションから学ぶことはかなり多いはず。ドラクエ風ヨーロッパをつくりたい人でも、頭のどこかに歴史を入れておけば、個性的なストーリーが作れるかもしれません。



 さて、本題に戻ると、わたしの知っているSFで、気象コントロール装置がテーマになった洋ドラがあります。



 七〇年代に大ヒットした、『地上最強の美女 バイオニック・ジェミー』というドラマです。

 主人公は、スカイダイビング中の事故により、両足・右腕・右耳に致命傷を負ったジェミー・ソマーズ。彼女は、政府の極秘諜報機関OSIの局長によりサイボーグ(番組ではバイオニックと呼んでいる)となり、命を救ってくれた局長のために、一肌脱ぐというのが番組全体のストーリー。




 そのジェミーにライバルが現れます。フランクリン博士という男で、女ロボット(フェムボット)を専門とする科学者。ジェミーのようなサイボーグを敵視し、自分が権力を握れなかったことをうらんで、局長に復讐を誓うのです。



 その際、OSIの開発していた気象コントロール装置を奪い、アメリカに宣戦布告をするというストーリーでした。



 で、その気象コントロール装置は、台風や竜巻を自由自在に生み出し、アメリカをしっちゃかめっちゃかにしてしまうので、ジェミーと恋人のスティーブは、ともに手を取り合ってフランクリン博士にたちむかっていくのでした。



 ところが、肝心なときに、局長がフェムボットと入れ替わってしまうのです!



 というわけで、その後どうなったかは、記憶の彼方になってしまいました。興味のある方は、DVDが出ているようなので、買ってごらんになってください。



 何はともあれ、スーパーマン的な力を持っていても、嵐や台風にはひとたまりもないというそのストーリーを見て、人間の小ささと自然の脅威におどろきました。そして、思いました。



 古来日本では、自然は神そのものですが、西洋では神が作ったもの。

 だから、西洋では「操れる」という発想になるんだな。



 自然を崇拝していたら、コントロールなんて考えつきもしませんが、西洋では違うんだ……ということでした。



 SFを作る際には、この西洋の論理とはべつの論理を持ってきたほうが、日本人らしくていいんじゃないでしょうか。

 気象は操るのではなく、なだめて祀るものだという論理。どうでしょうか。

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