第30話 気象予定師というアイデア その1

 ネ友がまだプロじゃなかったころ、ネットに「気象予定師」というアイデアを載せたことがあります。気象予報士は、自然が巻き起こす気象を先取りして予報することを仕事にしているわけですが、気象予定師は、宇宙コロニーで気候を予定するのが仕事です。この場合の気候は、自然ではなく、人工的な気候です。




 違いを説明すると、気象予報士は、明日の天気を予測し、それを説明してTVなどのメディアに載せる。




 気象予定師は、今週・今月・今年など、一定の期間の天気を計画し、それを予定して天気をそのとおりにコントロールし、人々に天気の恩恵をもたらすのが仕事。




 宇宙コロニーに気候が必要なのかどうかは不明ですが、アイデアそのものは面白く、のちにその人がプロになったときに、栴檀は双葉より芳しというのはほんとうだったと感慨ひとしおでした。




 宇宙コロニーに天候がある、ということは、コロニーが地球そっくりの環境になっている、ということなのでしょう。気象予定師が権力に屈して変な天気が続くとかありそうです。




 宇宙コロニーが地球そっくりになったので、長い間住んでいるうちに住民が宇宙コロニーだという事実を忘れてしまう話が、ハインラインの『宇宙の孤児』という作品にあるといいます。



 似たアイデアはスタートレックにもあって、小惑星の内部が宇宙コロニーになっている世界に住んでいる異星人が、絶滅の危機に立たされる、というストーリー展開だった記憶があります。



 その宇宙コロニー内部では、中世ヨーロッパを思わせる宗教的なタブーがありましてね。そのタブーとは、この世界でいちばん高い山に登ってはいけない、というものでした。そのタブーをやぶった老人が、天にさわって、天井があることに気づき、ここが地球ではないと悟ります。



 天は突き抜けているはずなのに、天井があるなんてヘンだというわけ。で、その話をみんなにすると、神であるコンピュータの逆鱗に触れて殺されてしまう(笑)




 でも、異星人の住んでいる小惑星は、まっしぐらに太陽めがけて進路を取っている。このままでは……と危惧したスタートレックの主人公、カーク船長たちが、四苦八苦する話でした。テレビ版では見たことはありませんが、ノベライズで読んだことがあります。短編でしたが、とても面白かったです。




 そのアイデアの元ネタが、ハインラインだと知ったので、『宇宙の孤児』は読んでみたいんですが、いかんせん、字がこまかすぎて読めない(老眼はつらいよ)。



 70年代に、星新一にハマっていた時期がありましたが、ハインラインやラリー・ニーヴンなどもその頃に流行っていたので、読めばよかったんだけどねー。ハードSFぽかったので、敬遠した記憶があります。




 ともあれ、宇宙コロニーの気象予定師という仕事が現実のものとなるためには、まずは地球における、気象の正体を科学で突き止めなければならない。



 仮に、気象の正体がすべてわかり、人工的に気象をコントロール出来るようになったとして、それを宇宙コロニーで実現するとしたら、人体にどんな影響が出るでしょうか。



 そして、宇宙で気候がコントロールできるようになったら、農業にどんな影響が?



 農業に都合のいい気象が作れるとしたら、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」という詩は、通用しなくなりますね。雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ 夏ノ暑サニモ負ケヌ 丈夫ナ体ヲモチ……。って、気象がコントロール出来たら、丈夫な体は必要ないかも(笑)




 気象をコントロールするという概念は、いかにも西洋的なアイデアです。日本人にはとても思いつかないアイデアです。自然を崇拝する日本人が、気象予定師というアイデアを出したというところが、その人の作家としての素質を感じさせます。


  

 もちろん、宇宙コロニーの気象予定師なんて夢物語です。

 しかし、もし、実現できたなら――。



 いいだろうなぁ、と思います。宇宙コロニーで気象がうまくあやつれるなら、気象の異常による植物の病気とか枯死とかなさそう。寒さの夏なんて概念自体がなくなる。常夏のコロニー。将来における食糧難も解決できるかな。



  科学の発展とともに、人間がヤワになってきたという人もいます。しかし、そんなに悲観したもんじゃない。科学がすべてという時代じゃなくなりましたが、それでも進歩していくのが人間の性。山積する問題も、少しずつ片付いて行くに違いないと、希望を抱く今日この頃。

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