第28話 『イヴの時間 劇場版』雑感
2015年になると、人間型ロボットがちまたに出回るようになりました。
ペッパーくん。ご記憶ですね。
いつの間にか、うちの近所ではいなくなってしまいましたが、やはり「しょせん家電」だったからでしょうか。
そんなこんなで、『イブの時間 劇場版』です。スタジオリッカが製作しました。
ストーリーは、『ロボット倫理委員会の影響により、人間型ロボット(アンドロイド)は家電であると言う常識が一般化された少し未来。おそらく舞台は日本のある喫茶店。その喫茶店では、「ここではロボットと人間を区別しません」というのがウリになっているのでした……』。ということ。
そこで、振り返って、現在を見てみます。
CMやニュースなど、アンドロイドがふつうに現れてきました。趣味や介護の世界にと、その裾野も広がっていき、だんだん、一般的になりつつあるようです。
ですが、
「ロボットと人間を区別しません」
というこの喫茶店のウリ、果たして現実的に可能なのでしょうか。
『イブの時間 劇場版』では、アンドロイドは家電ではなく、人間そのものであるとされています。魂を持ち、自分で考えて行動する。違うのは、頭に乗っかった天使の輪だけ。
現代の実情を見る限り、アンドロイドは、いまのところ一部しか実現できていないようです(その実現されたロボットは、そっくりすぎてどこか異質で不気味です)。AIを搭載した人間そっくりのロボットが出てきたとき、それを「家電」とみるか、「人間」とみるか。
哲学は後回しにして、日常を観察しましょう。
家電と人間を隔てるものは、だんだん曖昧になりつつあります。AIスピーカーは、問いかける質問に自分で判断して答えます。掃除機ルンバは、言われなくても留守の間に掃除をしてくれます。自意識ってなんでしょう。人間とモノをわけるその境界線は。人間とはなにか。
しかしわたしは問います。人間って、そんなに特別なものなのでしょうか。
犬や猫にだって、魂があると考える人もいます。
もし、大量に廃棄される食料や、食材に、もし、魂が宿っているのなら……。お米に魂が宿るという信仰もありましたっけね。
「使い勝手が悪い」として、捨てられていく家電や写真集、マシンなど。愛着があるのに引っ越しで捨てなくてはならなくなるモノたちもある。もし、これらに魂が宿っているのなら……。
日本には、アニミズムという考え方があるそうです。万物に魂が宿っているという。お米はもちろん、石や木にまで魂があるそうです。しかし、高度成長期にその概念は崩れました。大量生産・大量消費が美徳とされ、使い捨てがカッコイイ時代が到来しました。
いずれ廃棄されていくものを生み出す。ロボットも、いずれは産廃として廃棄される。
そのとき、魂はどうなるのか。
「モノには命なんてないんだ」とばかりに、知らん顔を決め込む?
お寺や神社に持って行って、「魂を抜いてください」「供養してください」「墓をつくってください」とお願いする?
マジな話、大流行したたまごっち(1996年に発売された育成ゲーム)で育てたキャラクターが死んだので、弔って欲しいという依頼がお寺に殺到したこともあるそうです。
ロボットと人間を区別しませんということは、つまり、ゆりかごから墓場まで、おつきあいをするということでもあります。
ペットでも、マンションで問題になったりするのに、ロボットでは問題にならない?
そもそも、魂を宿すって、どういうことなんでしょうか。
「思い入れ」があれば、何でも魂が宿るのでしょうか。
その「思い入れ」というのは非常に個人的なものですが、それがロボットに宿ったとき、ロボットが「思い通りに動かないから」という理由でその個人や業者に抹殺されたら、「ロボットのたたり」とか、あるかも(笑)
日本には、人形のたたりという概念もありますから、この疑問も当然、湧いてくるわけですよ。
マンガやアニメみたいに、アンドロイドといっしょに暮らして行けたら面白いだろうけど、人間の代用品ができるなら、出産する意味なんてない。
政治家は、女性は産む機械だと言ったけど、男が人間を産むことができる時代になってきたわけですねえ。血統を重んじる日本の憲法はどうなるんだろうか。
LGBTQの問題もある。性とはなにか。という問題もある。
現代は、洋風哲学ではなく、和風哲学を生み出す必要に迫られていると感じる今日この頃。
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