第21話 おまけ:SFは中医学的に問題アリ?!
21世紀になり、SFアイテムが巷をにぎわすようになってきました。
自動調理器(材料をポットの中に入れるだけで、調理してくれる)。
ITネット冷蔵庫(足りない食材をメールで教えてくれる)。
自動掃除機ルンバ。
AIスピーカー。
ドローン。
人間型ロボット(ペッパーくん……。最近見かけない)。
こういった商品を使うことで、人間はより便利になり、空いた時間でゆとりのある生活を……出来ているのか?
このSF的便利さには、医学的に言って問題がある、と思っている人もいるようです。例をあげましょう。群ようこの『ゆるい生活』の、指の具合が悪くなった女性の話です。(207ページより)
『それが調理にはほとんど手を使わず、洗濯物も天日に干さず、雑巾も使わないし皿も洗わず、指を使うのは携帯やリモコンのボタンを押すだけと言うのでは、指の運動量がとても少ないのは事実だ』
つまり、指や足などの使いすぎで身体の具合が悪くなったのではなく、中医学的見地からいうと、使わなさすぎて具合が悪くなった例なんだそうです。
(群ようこの『ゆるい生活』は、突然のめまいに苦しんだ群さんが、近所にあった中医学の薬局に駆け込み、治療を受けて治っていくストーリーの実録エッセイです。中医学的な雑学がたっぷり入っています)。
使いすぎで悪くなった話はよく聞くが、使わなくても身体には悪いんだと群さんは驚いていました。もっとも、中医学は科学的な根拠がないらしく、迷信だとする人もいます。群さんは、治療を受けて寛解しましたから、科学で割り切れないことってありますよね。
いままでの歴史上、「より便利に」「より快適に」「より簡単に」という流れがあることは、論を待たないと思います。科学のない時代には、ものを運ぶ際には牛などの動物に手伝ってもらったり、荷車など車輪をつけて押したり引いたりしていました。自動車など動力のついた車輪を発明した歴史もありますね。便利に手軽に、いろんなことが出来るようになったのはいいことなのでしょうが、わたしは時々、簡単すぎて拍子抜けすることもある(ぜいたく)。
『ゆるい生活』は実録エッセイですが、風刺の効いたSF作品も読んだことがあります。福島SF童話賞受賞作のなかには、絶滅に瀕した異星人のナゾを解くために、小学生が大活躍をする話がありましてね。
オチをいうと、異星人は便利なコンピュータまかせでなにもかも怠けていたので、気力も体力も落ちてしまい、絶滅しかけていた……ということなのでした(これを、小学生の主人公が、意外な方法で解決しますが、ネタバレのため自粛)。
小学生が惑星一つを救ってしまう荒唐無稽さはともかく、便利さに対する風刺が面白い作品でした。
このように、便利さのなかの危うさはありそうです。西洋の科学は、中医学的には健康に悪いみたい(笑)。
便利さを追求する現代科学。中医学的には、「危険!」ということで、つまり、人間、やりすぎは禁物と言うこと。
とはいえ、人間、「進歩」をするのは本能みたいなものです。ボーッと生きているわけにはいかない。
事実、便利になった、快適になった、だから昔の人より幸せになった。
昔の日本人は、洗濯・洗い物で手指にヒビ・アカギレが多かったが、最近そういう人はいないようですし、身体のなかにツツガムシという虫がいたり、シラミなども髪の毛に山ほどいました(現代にもノミ・シラミはいるみたいだけど)。
モノやカネが幸せを運ぶ、それは一つの真理ではあります。
便利なことは幸せに通じるということで、それ以外は悪だと思ってしまう人もいます。たとえば、障碍を持っている人について、障碍は不便だ、だから不幸だ、気の毒で見ていられない、よし殺すという人も出てくる。
不幸というものは笑い話になるんですが、そういう観点は、その人には通じない。
不便ということについて、別の例を挙げましょう。
今、コロナでみなさん「ストレス」だと言っている。あれができない、これもできない。コロナという障碍があるからです。でも障碍者のすべてが不幸ではないように、そんなストレス(障碍)がみな不幸だとは限らない。今こそ、日本人の「知恵」が試されているのです。お互いに知恵を出し、支え合う時代がまた来るのでは……とわたしは思っています。
お互いに助け合わなければ、人間は生きていけないのですから。
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