第20話 ファンタジーの材料 世界(後編)
現実世界と隣接した場所の話・そのほかです。
一歩現実から離れたところにある別世界。天国とか地獄とか冥府とかいった場所。イザナギは、妻のイザナミを慕って根の国へと降りていきました。イザナミは、元の世界の人のことを覚えていましたがギリシャ神話によると、地獄を流れる『レテ河』の水を飲むと現世のことをすっかり忘れてしまうそうですから、せっかく地獄まで会いに行っても、ギリシャのイザナミはキョトンとしているかもしれない。
いくつか種類を挙げて、この隣接した場所のことを考えてみましょう。
1:物理的に隣接した場所
彼方に理想郷がある、という桃源郷の伝説を挙げるまでもなく、山や海が隣接することで、別の世界に行ってしまうというパターンもあります。たしか、日本には桃源郷伝説の他にも、
「西行浄土」という思想があったはず。西方浄土は『仏説阿弥陀経』に、「従是西方過十万億仏土有世界名曰極楽」と説かれています。現代語訳すると、「ここから西の方、十万億の仏さまの世界を過ぎたところに“極楽(浄土)”と呼ばれる世界がある」といった意味になります。
ここに阿弥陀様の力で死後つれてってもらえるのです。まあ、一種の異世界転生モノです。
2:より大きなシステムの一部
『指輪物語』は、疑似神話で有名です。この物語には、ホビットの世界だけでなく、エルフの世界や魔法使いの世界、人間の世界などが存在しています。『精霊の守り人』では、ヨゴ国のほかに、精霊たちがうごめく『ナユグ』という世界もありますね。主人公は冒険に次ぐ冒険をするパターンが期待されます。
仏教的な世界には、人間の住む世界を含めて六つの世界が想定されています。この世界観については、バラモン教の影響が見られるので、純粋に仏教かどうかは個人的には疑問がありますが、もし、仏教の輪廻転生について知りたかったら、Wikiぺディアなどで調べるといいでしょう。
3:過去
過去の世界へ行くのも、ストーリーの材料になります。行く時代によって、感覚も違いますし、文化も違います。たった50年前には、エアコンは金持ちの所有物でしたし、舌を真っ赤に染める駄菓子も売られていました。
『陰陽師』や、『帝都物語』なども、この分野に含められるでしょう。陰陽師が出てきたときには、その亜流が雨後の筍みたいにバンバンでてきたものです。
『空色勾玉』は、日本の神話をモチーフにしています。ハレとケには一切ふれずに、光と闇に終始したところは、賛否両論あるんじゃないでしょうか。
4:未来
未来もファンタジーの一つとしてとらえることができましょう。この分野でいちばん優れているとわたしの思うアニメ映画は、『天空の城ラピュタ』ですね。この映画には、かつて地上を恐怖で支配した武器が搭載されていて、飛行石の呪文だけがそれを破壊できることになってます。
アーサー・C・クラークは、「非常に発達した科学は、魔法と見分けがつかない」
と言っていました。飛行石は、シータの遺伝子にのみ反応するようになっていたのかとか、ラピュタの武器はレーザー照射兵器かとか、考えだすとSF的な部分がたっぷりありますが、そういうふうに、魔法と科学の親和性はかなり高いのです。
この分野で読んだことがあるのは、ポール・アンダーソンの『大魔王作戦』ですかね。科学が進み、魔法が解明された世界に置いて、戦闘ジェット機の代わりに魔法の箒が並んだり、敵の秘密兵器が封印された大魔王なんていう作品だったはず。しかしこの作品、少々ごちゃごちゃしていて、あまりインパクトはなかったなあ。
インパクトという点では、『マッドマックス』は衝撃的でした。この映画の予告編を見ただけで、これは近未来のヤクザ映画だなと思ったものです。
あれはファンタジーと言うよりバイオレンス系だと思いますが、未来を思い描くこの想像力にはびっくりです。
ジョージ・オーウェルの『1984』は、中国(AIによる監視システム)を連想させます。テロリストにもできる可能性があるからコワイ><
そのほかに『むかしむかし……』という伝承型のファンタジーや、地形や言語、モンスターなど、出てくるものすべてを設計する『指輪物語』のようなファンタジーもあります。
まあ、すべてを設計する技術はわたしにはないのでこの辺で。
10月4日からSFの話です。上橋菜穂子、新海誠などが出てきます。よろしくお願いします。
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