第19話 ファンタジーの材料 世界(前編)

ファンタジーのストーリーを作る際、なにもナーロッパにこだわる必要はないと思います。もちろんナーロッパには、みなさんその異世界のパターンになじんでいて、ほとんど説明ナシで読者を異世界に連れて行ける、というメリットはありますが、

「結局、なにがしたかったの?」

 という不満も残る。わたしなどは、そんな異世界に行くぐらいなら、





ご近所を写真に撮って、画像処理して遊ぶほうが楽しいです。だってわたしのEGOが満足するだけのラノベより、画像処理したら創作物は残りますからね(汗)

一時的な清涼剤を生み出す作家も必要でしょうが、そんなに大量には要りません。わたしは歯ごたえのある作品を読みたい。たとえば、上橋菜穂子みたいな。なので、自分でそれを生み出したいわけ。






21世紀になってから、日常がファンタジー化されている傾向がとみに強くなってきたため、わたしも最近になって、ファンタジー・ストーリーの材料に事欠かなくなりました。

 そこで、身の回りの世界に着目します。






 その1は、建物などに隠された場所です。

 高い塀や閉ざされた扉の向こうに、なにがあるだろう?

 この手の話で有名なのは、『ゴーメンガースト』三部作なのだそうですが、残念ながらわたしは読んだことがありません。現在、図書館から借りて読書中です(この作品はSFだという人もいますので、10月から連載予定の評論SF編に書こうと思います)。






その2は、自然環境に隠された場所。

 古代・中世ヨーロッパにとって、森は危険な場所でした。ヨーロッパの人にとっては、『ヘンゼルとグレーテル』でもわかるように、森は死と恐怖の対象ですが、日本人にとっては、山犬が出てきて喉の骨を取ってくれと泣いたりします。百姓さんが山犬を助けたりして、すごくホノボノします。



 山や森などは、ファンタジーの源泉でもあります。森を怖がるヨーロッパ人には珍しく、シェークスピアの『真夏の夜の夢』は、森の中で話が展開します。日本では、海がタイムトラベルの場所だったり(浦島太郎)、裏山が妖怪のすみかだったり(天狗や狐などが出る話)、森からヤマンバが出てきて、小僧を追いかけたり(三枚のお札)、というファンタジーが展開します。

 

 その3、宗教的な場所

 神社とか、お寺とか、広場とか、墓地とか、お地蔵さんとか、遺跡、モニュメントなどです。



 かつて社会現象にまでなった『Pokemon GO』には、さまざまなモニュメントがポケストップになっていて、「こんなところに、こんなものが!」という発見の驚きがありました。



 日常に隠されているものに着目すると、ファンタジーになるかもしれません。わたしはそれをモチーフにして、カクヨムで『スマホゲーム《広島を巡ろう》』という作品を作りました。お手本にするにはヘボい作品ですが、まあ、アイデアにはなるのでは?



 こういう、隠されたものの中にドラマを見つけるのもアリ。お城の奥にひそむ幽霊や妖怪。最新ビルの中に、ポケモンのコラッタが現れたのを見て、「きゃー、ネズミ!」と驚いたり(笑)






 その4 過去に死者の出た場所 

墓地とか、古戦場とか、自殺者の出た場所とか。なんだかおどろおどろしい雰囲気のあるお話が作れそうです。コワイ雰囲気を醸し出し、ラストは楽しいハッピーエンドというのがストーリーの王道です。






 その5 ベッドの下、部屋の隅、ガード下など、暗闇の生まれそうな場所

 暗闇には、人のホンネを引き出す効用があるとか。西洋では、ベッドの下に怪物がいることになっているそうです。それもファンタジーですね。





 ガード下といえば、広島でも、田舎のガードレール近くで、崖に落ちそうになっている人を助けようとした営業マンが、駆けよって見ると崖には誰もいなかった、という話があります。






その6 地形の境界線や分岐

門や坂、浜や水辺、十字路や橋などです。 大昔には、川や関所などが村々を区切っていました。それを超えることで、ファンタジーの世界に入り込んでしまう。



その話で有名なのは、『かくれ里』でしょうか。日常から別の世界に入り込んでしまう話の多くは、地形の境界線を越えることから始まります。

後編は、現実世界に隣接した世界・そのほかの話です。

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