第18話 ファンタジーの発想 03
ファンタジーの発想その3です。
『笑い』も発想のキーワードに加えておきましょう。
人を笑わせるのはたいへんですが、西条みつとしの『笑わせる技術』では、共感の笑いが王道であると書いてあります。
つまり、「あるある」「そんなことあった! あった!」「それわかるー」といった気持ちのことで、共感させることができたら、その人を巻き込むことができ、笑いを取るだけの下地ができるという考えですね。難易度はいちばん低いといいます。
振り返ってみるに、
わたしのファンタジー評論は、共感の笑いとはほど遠い感じもします(汗) 難易度が低い共感の笑いでもできてないんだから、ファンタジー評論を書いている意味があるのかという思いもなきにしもあらず……(涙)
とにかく、ファンタジーと共感は、どこかつながっているところがあるかもしれません。
ある本によると、意図的な間違いもまた、ファンタジーの発想として見逃せないということでした。漫才でボケがよくやる間違いを、ツッコミが指摘するヤツですね。あれも、使いようによっては、ファンタジーの発想になる。
間違いということについて、注意深く観察してみましょう。
TVやネットでやっている漫才を、ただストレス解消として見るのではなく、なにか勉強になることはないかと考える。
ストレス解消が終わったら、今度は勉強ってわけ。
そういうことが面倒な人は、そもそも向いていなかったんですから、別なことをやった方が身のためです。
人を笑わせるには、相手の趣味や職業、地元ネタなど、ターゲット層にあわせたジャンルを選びなさいと言う人もいます。これはどんなジャンルの媒体にも言えることだと思います。
ゲーム好きな人に、勉強をしろと言っても聞きません。ゲームが好きなら、それに合わせた表現方法で、勉強をしたくなるように持って行かねばならない。水のあるところに馬を持って行くことはできても、水を飲むのは馬ですからね。
笑いのなかには、『安心の笑い』というのもあります。『ああよかった』、『助かった!』と相手に思わせることができたら、それで成功というもの。
この『安心の笑い』は、良質なフィクションでは必ずあるといって過言ではありません。主人公は危機に陥ったり、サイテーの立場に陥りますが、なんとか難題に立ち向かい、勝利するというのがパターン。
ファンタジーに、これを使わないテはありません。相手を怖がらせたり、心配させたり、ドキドキさせて、緊張状態を作りだし、それを突破させて相手にスカっとさせる。別に笑いだけに限らず、泣かせるもアリですが、泣く方が笑わせるより簡単なようです。
最後ですが、格の変化を挙げましょう。
物の価値、品格を変化させるということです。人形は、流し雛などといったもともと神聖な儀式に使われる道具でしたが、いつしか子どものオモチャになりました。(ひな人形とか、人形ごっことか)。
こういうふうに、昔は神聖だったものが俗化したものもありますし、大昔は禁忌の対象だった人造人間のひとりフランケンシュタインの怪物は、藤子・F・不二雄の『怪物くん』というアニメでは、コメディの登場人物になってます。ドラゴンボールの『フリーザ』さまは、駅伝に出てきて走者を応援したりします。
昔の日本でたたり神として恐れられていた平将門なんか、映画になってしまいましたが、作者がたたられた話は、とんと聞きません(汗)。
この格の変化には、先入観の払拭が欠かせません。たとえば、現在、生命倫理と言われて、人間が遺伝子に関わることを禁忌する傾向がありますが、人類は昔から、犬や猫、豚などの品種改良をして、遺伝子に関わってきました。
その沿線上に遺伝子工学があるのなら、なぜ人間が遺伝子をいじっちゃダメなのか? 長い時間をかけるのと、短い時間でやってのけるのと、どう違うのか?
という考え方なども、ファンタジーに通じる話かもしれません。同じアイデアでも、どこかが違っていないと、個性のないものをつくることになりますのでご注意を。
遺伝子という概念はサイエンス的で、ファンタジーとは関係ないという考え方もあります。もちろん、サイエンス・フィクションとファンタジーとは別物ですが、共通する部分も多々あります。先入観の排除というのも、その一つでしょう。
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