第16話 ファンタジーの発想 01
ファンタジー アイデアの出し方についてです。
ドラゴンや魔王、勇者やエルフなど、おなじみのものさえ出しておけばファンタジーだ、と思っている人も多いでしょうが、それは一種のパラレルワールドモノだとわたしは思ってます。
一時的に売れる作品を作って、掃いて捨てるライトノベル作家になりたいんだったら、わたしもそれを止める筋合いじゃあないんですが、長い間読み継がれていくライトノベル作家になりたいのなら、
その基本姿勢から改めなくてはなりません。
わたしも、今年の8月からはじめていますが、まずは他人を観察するようにしています。それが、ファンタジーとどうつながっていくかというと、その背景を想像することで、人間というものを理解したいからです。
ファンタジーは、『ありえざるもの』を描く分野だと、わたしのシリーズではたびたび言っていますが、その『ありえざるもの』もまた、人間の営みのひとつであり、
その世界では日常だったりするわけなんです。
日常への感性を研ぎ澄ませることは、ファンタジー創作への第一歩と考え、実践中です。
具体的に、どういうふうに観察しているのか。
たとえば、道を行く人を見て、年齢が幾つぐらいか、どこへ行くのだろうかと考える。
なぜ、その色の服を着て歩いているのか。その色が好きなのか? どこでその服を買ったのか?
1:家族構成はどうなっているのか、親はどうしているのか、一人暮らしなのか、子どもはいるのか。
2:胃の中にはなにが入っているのか
3:持ちものはどんなものなのか。
4:マスクの色は何色か、柄やキャラクターなどが入っているのか、あるいはマスクをしていないのか。
5:職業は何か、
6:好きな食べものや嫌いな食べものは?
7:両親はいるのか、大切にしているのか
8:今かかえている悩みごとは?
9:家へ帰ってまっさきにすることは?
まだまだ、いろいろ想像するネタはあるんですが、この辺でやめておきましょう。
これに、童話で使われる6つの発想のキーワードを加えるのです。
今回から、3回に分けてお話しします。
A)増幅・縮小
なんでも増幅・縮小しちゃう発想です。生体エネルギー発生(気功)スマホとか、超ミニホオジロサメとか。なんでも「万能」とか「極小」とか「超」とか「エモい」とか「ヤバい」とかつけると、らしくなるかもしれません。
日常生活にありふれたものを、ともかく拡張したり、小さくしてみたりしてみる。
「こんな○○は、イヤだ!」
みたいなのもOK。
眉村卓などは、ある商品などの特徴の長所・短所をとことん拡張していけば、ショートショートの題材になる、と言っていたようです。もちろんいまのまだこの段階では、アイデアにしか過ぎませんから、頭の中で想像したことを、こまめにメモしたりすることも忘れてはなりません。
目についたモノの長所・短所を考え、それについて増幅・縮小をしてみることは、想像力の訓練になります。ビジネスパーソンだったら電車の中の人を見て考える。学生だったら、同じクラスの人を見て考える。
コイツの長所や短所はなんだろう、それを増幅・縮小したらどうなるだろうと観察・想像するのが、基礎的訓練になるでしょう。
その点で参考になるのは、『ちびまる子ちゃん』だと思います。それぞれのクラスメイトが、どのように描写されているのかを着目すると、そのキャラクターの立て方などがわかると思います。(言うは易し)
B)反転・欠如
これは、あるものの価値を反転させたり、なくしたりする発想のキーワードです。
スーパースーツの取説をなくし、空を飛ぶのも汗だくのスーパーマン。
主人公には聞こえるけれど、ほかの人には聞こえない音楽が流れるラジオ。
木の実から生まれたので、両親の実の子ではない自分。
これらの発想は、日常から生まれているとわたしは思います。
取説をなくしたので、電器の使い方がよくわからない――。
実家では、よくあるパターンでした。せっかくの文明の利器が、ただの鉄の塊になってしまった悲しさは、いまでも忘れられません。
また、耳鳴りがしているのに、ほかの人には聞こえなかったこともあります。耳鳴りを音楽だと考えた人がいるのです。また、桃太郎の話がモチーフになっている作品(『十二国記』)などを考えると、普段から日常に疑問を持つことの大切さがよくわかります。(以下次号に続く)
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