第14話 ファンタジーと中医学
中医学とファンタジーについてです。
中医学とは2000年以上の歴史を持つ中国伝統医学のことです。
人体を構成する必須要素には、「気・血・津液」というものがある、と中医学は考えます。
生命活動を維持するために必要な基本の3つの要素が「気」「血(けつ)」「津液(しんえき)」であり、これらが十分に満たされていて、体内をスムーズに巡ることで体のバランスが保たれていると。
なかでも「気」は生命活動のエネルギー源であり、臓腑や組織の新陳代謝にかかわっているそうです。
しかし、これは科学的に証明はされていません。
そもそも、生命活動のエネルギーという考え方は、21世紀になってから徐々に西洋にも受け容れられてきた思想です。それまでは、西洋はこの経験からの医学をバカにしていた傾向があります。
しかし、この『気』に着目したファンタジーが、有名な漫画にあるんです。
鳥山明の『ドラゴンボール』シリーズです。
『ドラゴンボール』では、主人公の孫悟空が、亀仙人から「カメハメ波」という武術の極意を学びます。
カメハメ波は、自分の生命エネルギーをまとめて相手にぶつけて、相手を倒す秘術です。
これは、言うまでもなく、『気』と関係のある概念です。孫悟空が危機に陥り、敵をやっつけるアニメのシーンでは、視聴者に、悟空が、「みんなの元気を分けてくれ!」というシーンがあったりしますが、これは生命活動のエネルギーを分けてくれ、と解釈することができます。気を扱ったファンタジーとしては、このシリーズは特筆すべき存在だと思います。
中医学からヒントを得たと思われる著作物は、ほかにもあります。
たとえば、『北斗の拳』に出てくる、『秘孔を突く』というワザ。
これは、わたしの思うに、中医学の鍼灸で良く言われる、「ツボをつく」というのと似ています。ツボをつく=急所をつく、という考え方になったのではないかと。
人間にはいろんな急所があります。これを、『北斗の拳』の作者が流用したらしい。
参考(Wiki)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E7%B5%A1%E7%A7%98%E5%AD%94
気功や発勁は、高千穂遙の『ドラゴンカンフーシリーズ』やゲームの『ストリートファイター』などに見られ、中国拳法の必殺技だろう、という人もいます。
拳法の達人や忍者が気合で相手を倒す遠当の術なんてのもあったそうです。
医学は、人を救うハズですが、逆に人を破滅に追い込む分野なのでしょうか。西洋では、医学に携わる人は、『ヒポクラテスの誓い』というものを立てていたという過去があったりします。
このヒポクラテスの誓いには、医学の神アポロが出てきます。アポロは、気に入らない人間の耳をロバに変えたこともあります(ミダス王がそれですね。『王さまの耳はロバの耳』って聞いたことありませんか?)。また、アポロを慕う女性は、ヒマワリに変身し、いまだに太陽に花の顔を向けています。つまりアポロには、ちょっと残酷な面もあるってことです。
そういった西洋の観念は日本では無視され、中国の影響を受けた日本独自のファンタジーをつくってしまっている。思想がなくても、ファンタジーは作れるわけです。
でも、それは漫画だから許されているのかもしれません。わたしは『ドラゴンボール』も『北斗の拳』も好きですが、小説を書くとしたら、もっと日本らしい話を書いてみたいなあ、なんて思ってます。
とくに『北斗の拳』には、荒廃した未来をテーマにした米国映画の影響も見受けられています。ディストピア的なテイストを見せているところは、まったくのオリジナルというわけではない。もちろん『ドラゴンボール』もオリジナルは『西遊記』ですが、金斗雲のほかはまったくのオリジナルだとわたしは判断しています。
漫画の方が、小説よりも自由に空想が羽ばたくので、ファンタジーも描きやすいのでしょうか。
わたしはあまり、中医学をモチーフにしたファンタジーを、小説で読んだことはありません。中国の後宮小説とか、王権をモチーフにした小説は、読んだことがありますが。
『彩雲国物語』は、中国の影響を受けているでしょうし、もちろん『十二国記』だって中華風です。しかし、ドラゴンボールみたいに、元気玉とかカメハメ波とかに似た小説は見たことがない。著作権上問題があるのかな。単に視野が狭いだけかな……。
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