第12話 ファンタジーの大御所(外国版)

ファンタジーの大御所たちについてです(外国版)。

洋モノのファンタジーで有名人と言えば、J.R.R.トールキンか、C.S.ルイス。それと女性ではアーシュラ・K・ル=グインでしょうね。


トールキンは『指輪物語』、ルイスは『ナルニア国物語』。ル=グインは『ゲド戦記』で有名です。また、『ゲド戦記』はジブリがアニメ化しましたが、原作者がブチギレしたので有名です(汗)。



 今回は、そのル=グインから話をしていきましょう。



 残念ながら、わたしはアニメの方はチラリとしか見たことはありませんが、『ゲド戦記』の第一巻は読みました。影とのたたかいとその結末。自分の驕りと自尊心のために、影を解き放ってしまったゲドは、けっきょく自分の中の影を受け容れることで、成長していった……という話だと思ってます。



 アニメでは、魔法の根源にある名前についていろいろ語っていたシーンがあったようですが(テレビ放送されているのをチラと見た)、モノやヒトの名前を知ることで、それらの支配ができる、みたいな言い方をされていました。


 これは、古代の日本などにも通じる考え方で、日本では本名を知られないために、わざと通り名を使っていた時代もあったようです。ル=グインは、アメリカの先住民族と話す機会が多かったし、彼女自身も多神教だったそうですから、影響されている部分はあろうかと思います。



 わたしが珍しいなと思ったのは、キリスト教圏内で多神教を信じるのはかなり難しいだろうに、よくやったなということでした。とくに、ある本によると、ル=グインは、キリスト教的ドグマがはっきり見える『ナルニア国物語』を作ったC.S.ルイスにも影響を与えた、とされています。


 どこがどう影響されたのかはわたしにはわかりませんが、もし、それが本当なら、キリスト教だけがすべてと言わんばかりの人にも、少しは勉強になったのか、などと思ったりもします。



 宮崎駿の『千と千尋の神隠し』は、わたしには違和感はなかったんですが、『ゲド戦記』の世界観は、わたしには違和感がありました。どこがどう引っかかるのか、

 よくよく考えてみたんですが、ル=グインの多神教というのは、なにかこう、キリスト教に抑圧された神々の恨み節みたいな空気を感じるんですね(気のせいだろうか)。その点、宮崎駿はのびのび、多神教の世界で遊んでる感じがする。



 ル=グインと同じように違和感を感じるのは、ミヒャエル・エンデの『果てしない物語』ですね。映画をテレビで見ましたが、パート1はラストがめちゃくちゃ。パート2は暗くてドロドロ、という感じ。この暗さが、ル=グインの『ゲド戦記』に通じるみたいな気がしたものです(まあ、明るければなんでもいいってわけでもないけどね)。



 エンデは、時間泥棒の出てくる『モモ』でも有名です。個人的には、『モモ』の方が好きです。



 閑話休題。



 ル=グインは、古典ファンタジーの大御所のひとりのはずですが、固有の世界観、メッセージがあるのに、ジブリが触れるまでほとんど知られていなかった。ジブリはその意味では評価できます(原作の意図をまったく汲んでいないところは、ちょっとねえ)。



 ディズニーが映画化した『ナルニア国物語』(『ライオンと魔女』)も、わたしは違和感がたっぷりあります。


 原作の文学的味わいが損なわれている気がする。なんかこう、お子さま向けファンタジーの典型、みたいな感じがしました。なによりアスランが、しゃべるライオンにしか過ぎない印象で。ルーシーも、あまり器量がよくなかったし(原作でも、あまり器量はよくなかったけど、明るい雰囲気はあった)。



 これを見るくらいなら、映画化された『指輪物語』のほうがずっと質が高い。映像化のレベルは、こっちの方がずっと上だと思いました。原作者のレベルの違いだと思われるだろうか、と思ったりもして、ちょっと不満に思いました(だってわたしは『ナルニア国物語』の大ファンなんですもの)。



 文章嫌いな子どもが最初に触れるのは、絵本とか漫画とかテレビとかいった、映像媒体です。その映像媒体の質が良くないと、原作に触れようって気分にはならない。



 その点では、ライトノベルは恵まれていると思います。アニメ化されても質の落ちた作品は、これまで巡り会ったことがない。文芸作品も、見習って欲しい今日この頃。

 

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