264 エーランブラム山大噴火
『ふふっ♪ それじゃあ私は、金の月エルテナに帰るわね☆彡 エルナちゃん、また会いましょうね❣』
そう言うとカーベルカ―ロッタは、直ぐに黒翼を羽ばたかせ天に帰ってしまった。
「もう帰ってしまったのぅ。【御主】様は忙しないのぅ」
「でも、エナさん。【御主】様が直ぐに帰ってくれたお陰で、私随分と身体が楽になりましたよ」
「うにゅ。それはわちもなのじゃ。しゃっきまでと全然違って楽ちんなのじゃ」
エルナは平気だったが、如何やら他の皆はカーベルカ―ロッタの力の影響を諸に受けていた様だ。でも、今はカーベルカ―ロッタは去り、そのプレッシャーから解放された皆の身体に活力が戻って来ている途中の様だ。なんせ皆、カーベルカ―ロッタが降臨している間キツそうに見えたもんな。
まあ、それを見てたからカーベルカ―ロッタは直ぐに月に帰ったのかもね。
そんな訳で、カーベルカロッタを見送ったあと。
皆と話をしている間に、周囲の光景は一変する。
但し、良いとは言い切れない感じでだ。
そこには、灰灰の呪界及びウルザスマの神域の崩壊の余波。そして、カーベルカ―ロッタの死の力の影響。その両方が一気に取り除かれ、エーランブラム山が本来のエルアクシア世界の星域へと戻って行く。
だがその実エーランブラム山は、散々霊脈龍脈からエネルギーを搾られている上に、急造されたウルザスマの神域の崩壊とカーベルカ―ロッタの死の力の影響は凄まじく、当然の如くエーランブラム山は異界化が解けてもボロボロのままだ。
要するにエーランブラム山は短期間でダメージを受け過ぎたのだ。
それに、見るからに霊脈龍脈から昇って来るエネルギーが激減しているし、日に照らされた草木の無い山頂が皮肉な事に灰色に染まって見える位である。
異界化領域が解け太陽が山頂を照らしていると言うのに、「わぁ~綺麗」と素直に言えない様な状況だ。
まあ、結論を言うと。ただ敵を倒しただけではエーランブラム山は本来の姿を取り戻せなかったのだ。と言っても。そんな事は織り込み済みだったエーランブラム山の星精が、宝物庫を通してエルナ達に送って来たのが使い捨ての神具『龍脈星髄』のなのだ。この状況下でも、問題無く使えるし間違いなく役に立つだろうな。
「ふむ。星精はこうなる事を見越して、宝物庫のお宝に祭神具『龍脈星髄』を入れておった様じゃのぅ」
「そう見たいだね。それに、サンアルペディラリウムで作り出した領域は今私の星輝で満ちているし、『龍脈星髄』を使うのにバッチリな状態なんだよね」
討伐報酬は前払いだった見たいだし、だから余計にクエスト達成報酬が気になるから、とっととこの祭神具を使ってしまおう。
ティアーズクロワの収納から、虹色に輝くメロンサイズの大きな宝珠に青い龍が巻き付いた外観をした宝玉を取り出す。これが祭神具『龍脈星髄』だ。
宝玉を地面に置き、起動詠唱のための祝詞を唱える。
『世界から齎されし星の精髄を集め天地を廻る宙界の龍よ。この地に新たな命脈の廻りを齎し大いなる循環の一助とし、霊命星髄の繁栄を齎し給え!』
クォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
祝詞を唱え終わると、宝玉の龍が動き嘶く様な咆哮を上げ見る間に巨大化して往く!!
龍が巻き付いていた宝珠も結晶状態だった物が、膨大な星輝由来(星輝が元になってるのは分かるが詳しくは分からない)のエネルギーの塊へと変化して往く。そして、巨大化した青い龍がそのエネルギー塊を銜え天に向かって飛翔する!
クォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!
上空で星の様に輝く青い龍が、再び嘶く様な咆哮を上げ今度は流星の如く急降下する!!
パァ――――――――――ン!!!!
龍が地面に激突すると、幾重にも重なり広がる光の奔流が四方八方に弾ける。それはまるで大河とその支流、あるいは樹冠や樹の根を思わせる様に、エーランブラム山の地下と上空に広がって行く!!
ドドドドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!
その光の奔流が、星の命脈たる星輝の流れに繋がると。エーランブラム山の今新しく作られた命脈と枯れかけた命脈に、星輝を含む莫大な量の高エネルギーが一気に流れ込む!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!! 『龍脈星髄』が齎した莫大な高エネルギーが、エーランブラム山の眠っていたマグマ溜まりを強く刺激したらしく、大きな火山性の地震を引き起こす!!
「っ! これってもしかして噴火するの!?」
「むぅぅ! 如何やらその様じゃ! 皆、此処から離れるのじゃ!!」
「りょなのじゃ!!」
「大姉様、了解です!」
「エルナさんに掴まりますね!」
「マジかっ!? 金色千手阿修羅高速飛行光背展開!!」
桜を頭に載せ、慌てて虹翼を広げ山から離れる様に空飛ぶ!
異界化領域が解除されている筈だから問題無く離れられる筈だ。
もちろん、サンアルペディラリウムは回収したよ。
だが、山から離れて直ぐに不味いと気が付く。
「ああっ!? パープシャル村や修行者の人達どうしよう!!」
「むぅ! そうか。この霊山には人が住んでおるのか! 厄介じゃのぅ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!!!
星輝由来の命脈から噴き上がる光とは別に、マグマの発する熱と圧力でエーランブラム山が膨張する!!
これは、いよいよ噴火するな。
何とかして山中の二つの修行者達の集落と、麓のパープシャル村を噴火から守らないとヤバい事になるぞ! 特にこの噴火の被害は、下手すると俺達の所為にされる可能性が大だ。マジで何とかしないと!
火山の噴火何てどうにかなるかなぁ、と思いつつエーランブラム山のマグマ溜まりの溶岩に干渉を試みる。
「ん? アレ? これ、意外といけるかも? でも、何でだろう?」
思ったよりも溶岩溜まりに干渉するのが楽に感じ、疑問を口にしたのだがその答えは桜が直ぐに教えてくれる。
「なんでと言うと。エルナさんは、溶岩操作のスキルと溶岩を操る事が出来るラーヴァフロシュアを装備してますよね。それに、逃げる時にサンアルペディラリウムの効果を解除して来ましたけど、サンアルペディラリウムで作り出したエルナさんの星輝で満たされた星域の空間自体はしっかり残っている見たいですし、そこを起点に干渉するなら結構簡単にやれると思いますよ?」
「確かに、そう言われると寧ろ出来ない方が不自然かも」
「ですです。でも、噴火自体は避けられないでしょうから、溶岩流や火山弾が山中の集落と麓の村に行かない様にする位が理想的でしょうか」
「うん。そうだね。それなら本当に簡単に出来そうだよ」
被害を最小限に抑えるために、溶岩の大部分はエルナが制御する。
どうしても避けられない物は、桜とチエが何とかしてくれると言うので、被害が少しでも小さくなる様にエーランブラム山の山体の中に溶岩の道を作り、噴火口の位置をこちらで決める。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォオオオオオオオオオオオオッッ!!!!! そろそろ、噴火を抑えるのは限界だ。
「桜、チエ! 私、噴火を抑えるのそろそろキツイんだけど!」
「大丈夫です、準備出来ました!」
「主様、わたしも行けます!」
その言葉を聞いて、直ぐにマグマを抑え付ける動きを止める。
流石に噴火を抑えるのは簡単にはいかない。サッと溶岩を操作するのなら兎も角、噴火を抑えるには操作を持続させないと行けないから結構キツイのだ。
ドゴゴゴゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!! パープシャル村の有る麓とは反対側の山の中腹から火柱が噴き上がる!! 同時に噴き上がる粉塵は空高くに舞い上がる。
うん。あまり遠くに飛ぶような物は流石に対処できないなぁ。
それでも、噴き出す溶岩の動きを穏やかに緩やかに動く様に制御を掛ける。
『『
桜とチエが自身の権能と神器を使い、エーランブラム山とその周囲の被害を可能な限り減らすためのユニオンアビリティを発動する!!
朝日が射し込むエーランブラム山に、聖域と言う名の夜の帳がおり山に再び夜が訪れる。
夜の帳は制御から外れた火山弾を柔らかく受け消し去る。
おおっ、これなら何とかなりそうだな!
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