263 〈呪霊灰山 山頂 呪界儀式門〉10 【御主】の降臨
春の雪解けの様に『氷天境隔絶壁』の閉ざされた冬の氷壁がみるみる溶けて行く。
『フム。氷壁に籠るのをやめたか、こちらとしては、ずっと籠ってて貰った方が有り難いのだがな?』
「まあ、君を倒す算段ついたからね」
燃えカス君ことウルザスマの事を自然と『君』呼びしてしまったけど、エルナって相手の事を『君』って言うんだな。
『算段がついただと? フハハハッ! 笑わせてくれる! 何をしようが貴様らに出来るのは、精々時間稼ぎをするだけであろう! ならば、その領域の中で先程の氷壁の中で大人くしていた方が、まだ勝ち目があったのではないか?』
「ウルザスマよ。さっきエルナが言った様に、お主を倒す算段が付いたと言ったであろう? お主はわし等の装備を見て何も感じないのかのぅ? 鈍い奴じゃ」
エナが分かり易く挑発すると、ウルザスマがパーティの面々を備に見る。
『装備だと? 確かに貴様らの装備だけは【呪鬼】様にも通じそうだが……ムッ? いや……待て……ナ……何ダ、それはっ!? 力ある神器でも、大いなる者達が授ける大神器でもない……! 小娘! 何故貴様が、大神神器を持っている!!』
ウルザスマが、エルナの左手を指差し声を上げる。ここに来て漸くウルザスマは、エルナの左手中指に着けたアルシュマの存在に気が付いたようだ。
まあ、指摘されなければ気付くのは難しいかな?
なんせアルシュマは、大神神器の本体では無く。アルシュマ本体の分霊? 見たいな物らしいからな。だから、大神器と勘違いしても可笑しくは無いな。
『クッ! 何故気付けなかった……!? 見れば明らかに異常な死気と、我らが
「確かに、これだけならそうだね。……これだけならね!」
俺はアルシュマを本来の大鎌の姿に戻し、儀式スペルアーツ『黒翼の乙女の祈り』の準備に入る。
『マテ……! ナ、何をする気だ!?』
「ふむ。分からんのか? お主は既に答えを知っておるじゃろ? それをわし等の方が先にやるだけじゃよ」
『バカナッ! そんなエネルギーが何処に有ると言うのだ!』
「エルナの頭の上じゃな」
エナがウルザスマに分かる様に、エルナの頭上の天使の輪の先にある結晶を指差す。
『ナ、ナ、星輝結晶ダト!? それが有れば、我が
そう言うや否や、ウルザスマが紅蓮の炎を吹き上げながら突っ込んで来る!
『ソレヲヨコセェェェッ!!!!』
「はい、残念!」
ゴバチィ――ン!! 『簡易神域 湖底竜渦』,『聖征星壇サンアルペディラリウム』。二つの領域の力が合わさったそれは、強力な結界となってエルナ達に突っ込んで来たウルザスマを激しく跳ね返す!!
『グハァッ!?』
吹き飛ばされたウルザスマは直ぐに起き上がり、一気に自身の力を爆発させる!
どうしても星輝結晶が欲しいのだろう。だけど……。
『灰灰の獄戒にて紅蓮の灰禍は炎獄を為し、劫火業炎因果の果てに散華せよぉぉっ!!! 『獄戒紅蓮灰禍
「ふん! やらせる訳なかろうっ!! 『沈め!静め!鎮め! 冬の水底地の深淵!冥府凍獄奈落の底へ!! 永遠に氷海へ沈め!!!! 『
グオォォン!! まさに冥府の氷海とも言うべき光を一切通さない絶対零度の黒い水が、ウルザスマとその渾身の一撃を全て纏めて飲み込む!!
当然の様にエナが対処し、『神威』を発揮できる三人がウルザスマに応戦する。
『グガァアアアッ!!? 邪魔ヲスルナァァァッ!!!!』
「そんなの邪魔するに決まってるじゃないですか!」
「うにゅ! わちらは、お
そう、時間はもうウルザスマの味方では無い。エルナ達の味方なのだ。
『オノレェェェッ!!!』
うん、二重ブーストのお陰で十分対処出来るし、これで安心して『黒翼の乙女の祈り』の準備が出来るな。
アルシュマの柄を突き立て、権能【死の黒翼】を発動させる。
見る間に、エルナの髪が漆黒に染まりその一部は赤に染まる。虹翼は輝ける漆黒の翼となり闇を生み出し、瞳は黒と緋色のオッドアイへと変わる。そして、それに合わせる様に、エルナの身に着ける装備が全て漆黒に鮮烈な赤が映える色合いへと変化を遂げる。変身完了だ。
『無限に繰り返す死と悪夢の主』
エルナが声を発すると、山頂のフィールドの気温がグっと下がった様に感じる。
『無限の死から無限の生を生み、新たな生死の理を生みし死の化身、黒翼の天使達の主よ』
灰色の空が漆黒に染まる。そう、決して夜になった訳ではない。
『御身が黒翼を授かりし、黒翼の雛が願い奉ります』
エルナ達の、そしてウルザスマの神域が黒く染まって逝く。
『我は願う。黒翼の雛の命と魂を狙う蛇が如き炎の悪鬼を滅する事を』
世界が震える。死その
『我は願う。雛を狙う盗人に無限の死と悪夢を齎し、真の死を与える事を』
空に漆黒の太陽が輝き、世界に死が溢れ出す。
『此処に星の命輝きを納め、それを対価に願いの成就を希う』
エルウェンアイテルの先に作り出された星輝結晶が、虹色の光となって天に昇り漆黒の太陽に吸い込まれて逝く!
『ふふふっ♪ 愛しい愛しい私の黒翼の雛、私が貴方に怖い思いをさせる全ての
ゾクッ!! と背筋に悪寒が走る。
黒い太陽が降りて来る、濃密な死の気配と共に。そこから世界が死んで逝く。風が死に、水が死に、大地が死に、炎が死ぬ、草木はもちろん全ての生物、時間も空間も次元も関係なく概念すらも死んで逝く。
そして、夢だったのかと甦るのだ。それが、終わる事の無い生と死を無限に繰り返す、夢幻の悪夢の始まりだと知らずに……。
自分達には影響が無い筈なのだが震えが止まらない。それに全く動けない。
しかもこれは、ただカーベルカ―ロッタ様が近くに居ると言うだけで引き起こされる現象なのだ。
『アアッ……来テシマッタ、それも災厄な存在ガ……!』
この状況で基本何とか動く事が出来るのは、神格を有するエナ達とウルザスマだけの筈だ。しかし、既にウルザスマの身体は死に蝕まれているようだ。
「むぅぅ! これはキツイのぅ! これで保護を受けている状態とはのぅ!」
「身体に力が入らないです」
「にゅぅ」
地上に降りて来た黒い太陽がドッと弾け漆黒の羽が舞い散る!
黒い太陽に見えていたのはカーベルカ―ロッタ様の翼だったのだ。
『ふふっ♪ 久々に地上に降りたわ。楽しいわね♡』
黒い羽が舞い散る中、赤メッシュの入った濡羽色の髪。そのアシンメトリーなツインテールの、髪のキューティクルがキラッと輝く。ちなみに、左のテールが短く右が長い。本来のカラーリングの黒主体に赤いラインの入ったアルシュマを持ち、ボディスーツの様な物の上から黒と赤のツートンカラーのドレスを着ている様に見える。ゴスロリっぽい服装だ。
物凄く綺麗で今にも消えてしまいそうな儚さを感じるのに、同時に生き生き溌剌とした雰囲気の相反するものを感じさせる。これはアレかな? 死に近く儚げであると同時に、命が最後に見せる死の間際の輝き、その両方がビジュアルに表しているってかんじだろうか。
美少女で可愛いし、正確も悪く無さそうなのに、何故かめっちゃ怖いんだよなぁ。
まあ、大神の格下殺しの力の影響なんだろうけど、地上に降りたのが久々ってそれが関係してるんだろうな。
『ふふっ、そうね♪ 私が地上に降りると、私の力の影響で皆困ってしまうもの。だから自分からは、あまり行かない様にしているのよ。でも、今回はエルナちゃんが呼んでくれたから気兼ねなくこれのよ。エルナちゃん、お姉さんを頼ってくれてありがとう❣』
助けて貰うために来てもらったのに、何故かお礼を言われてしまったな。
『ウゴゴッゴァ! 例え我が
気力を振り絞ったウルザスマが、隙だらけに見えるカーベルカ―ロッタに炎槍の一撃を繰り出す!!
『
ウルザスマの炎槍を躱しざま、カーベルカ―ロッタの大鎌がカウンターとして振るわれる! 大鎌が振り上げられた瞬間、ウルザスマの周囲に無数の影の様な物が浮かび上がり、振り下ろされると同時に大鎌の先端に集束して往き、そのままウルザスマをあっさりと真っ二つにする。
『アアアアアアアアアアァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
『はい、おしまい♪』
カーベルカ―ロッタ様が終わりを告げる。
すると真っ二つになったウルザスマの炎の身体が、みるみる小さく為って行き何とそのまま消えてしまった。
おおっ! カウンターで一撃!
でも、何時のもパターンだと復活して来るんだけど。どうなんだ……?
¶サーガクエストBOSS 五色鬼灰神 炎獄紅蓮灰禍ウルザスマ真諦
サーガクエスト【灰呪教第九布石】が攻略されました。
ウルザスマの討伐報酬は、既にあなたは手にして居るのでありません。
【灰呪教第九布石】攻略達成特別報酬をギフトボックスに送りました。
後程ご確認ください。
クエストの昇格を乗り越え良く成し遂げました!
ベルちゃんの助けがあったとは云え良く頑張りました。褒めてあげますよ♪
by創天の意思
マジかぁ~、本当に終わったぞ。最後あっさり過ぎじゃね?
いやまあ、もちろん。あっさり終わって良かったんだけどさ!
でも、なんか複雑だよね~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます