259 〈呪霊灰山 山頂 呪界儀式門〉6 五色鬼灰神 炎獄紅蓮灰禍ウルザスマ真諦

「『スターライトリジェネ』『フィジカルリジェネレイション』! 『コスモアバター・リジェネレイション』!」


 パーティ全員を素早く回復させ、スリップダメージ対策に装備強化で追加された新しいリジェネと、コスモアバター用のリジェネを盛る。

 ちなみに、『フィジカルリジェネレイション』は、流麗命輝ベルセレスアンジェ専用のダメージデバフに対応した再生アーツで、骨折や欠損,内臓破裂,神経切断,出血,炎症,火傷,凍傷等々様々な症状に対応しているのだ。

 なので。これは火傷に効くし、炭化や灰化現象にも効きそうだから使ってみた。

 あと、今は全然関係無いけど、神経切断のダメージデバフってなんか怖いよね。


『フム。まずは我が分霊を苦しめた貴様らの力を我に見せてみよ……『業炎苦集諦カルマアグニ・ドゥッカサムダヤ・サティヤ』』


 尽きない欲望から際限なく生れる苦しみ、それらを掻き集めた因果の炎が瞬く間に炎呪神域に広がって行く!!


「むぅ! 『雪降り積もる冬の静けさに真の冷氷が宿る! 『真静氷雪』』じゃ!!」


 エナが、ウルザスマの攻撃に反応して直ぐ様『真静氷雪』を発動。『真静氷雪』の生み出す、概念に働きかける冬の冷気と氷雪が因果の炎を相殺する!!


『フム。其れ位は出来よう。ホレ、追加だ。『業炎劫火』』


 ウルザスマが無造作に腕を振ると、空間を歪ませる炎塊が放たれる!

 炎塊は吸い寄せられる様にエルナ達に命中し、守りなどまるで意味が無いかの様にエルナ達の身体が内側から燃え上がる! それは、金色千手阿修羅に乗るサレスも同様でコスモアバターを直接焼き焦がす! 追尾効果有りの防御無視攻撃!?


「くぅっ! 『ブレイクカース』『アステルセラフィア』! 『コスモアバター・レストレーション』!」


 身体の内側から焼かれる痛みに耐え、直感的に『ブレイクカース』を使い回復を行う! 

 『ブレイクカース』で炎が散り、自分を含むパーティメンバーが無事回復する。

 上手く行った。無理やり因果を、呪いに見立てて『ブレイクカース』を使って見たんけど使って良かった。なんか普通に回復しても、炎が消えない気がしたんだよね。


『フム。まだまだ追加してやろう。『業炎劫火』』


 ウルザスマは軽く手を振り、『業炎劫火』を連続で放つ! おいおい! この攻撃ウルザスマにとっては通常攻撃って事なのか!? ヤバ過ぎだろ!?

 とにかくこれは、反撃しないとジリ貧になるヤツだぞ!


「良し躱せますね! 反撃です!」


 『業炎劫火』の炎が桜に命中する瞬間、桜の姿が残像を残す様にブレ、炎は残像に当たって消える。桜はノーダメージだ。

 原理は何と無くしか分からないが、桜は『業炎劫火』の因果の炎に対応出来たようだ。


「さあ、因果には因果をぶつけますよ! 『物理干渉フィジックスインターフィアレンス』『因果応報・業斬』!!」


 ギュォォ――――――ン!!

 『物理干渉フィジックスインターフィアレンス』によって無理矢理因果律に干渉、斬苦獄刑ヘルデモリッションブレードの必殺アーツ、『因果応報・業斬』の力を増大させる!!


 パッカァ――――――――ン!!!!

 世界がモノクロになり、『因果応報・業斬!!』の文字と共に、ウルザスマの放った因果の炎とウルザスマ自身を縦に断ち切る!!


『ほう。対応して見せたか。なかなかやる』


 ウルザスマの縦にズリ落ち、炎を吹き上げる身体が何でもない様に戻る。


「私の攻撃、全然効いて無さそうですね……」

「大丈夫。平気そうに見えるけど、ちゃんとダメージは入ってるよ」


 そうなのだ。

 『星覚』から得られる情報で、確かにダメージは入って居ると分かって居る。

 だが、ウルザスマはそれをちっとも表に出さないのだ。

 それどころか、余裕さえ感じる程だ。何なんだろうな?

 まあ、なんにせよ攻めるしかないけどな!


『フハハッ! この程度のダメージで一々動揺したりせんよ』

「なら、あなた分霊が嫌がったこの力は如何ですか! ラーフ!『空絶黒導明滅』!!」


 グォオオオオオオオオン!!!! 光と言う光を飲み込み巨大な闇が生まれる!!


『なるほど……これは厄介だ。我が力が損なわれて行くのを感じるな』


 闇の中で、ウルザスマの余裕のある声が響く。

 なんだ? これでも余裕が有るのか? かなりのダメージが有るのに?


「むぅ、これは不味いのぅ。今ので奴の分霊を削れないとは……」


 ん? エナのこの発言、ウルザスマが余裕な理由を分かってるのか?

 パーティチャットで直ぐにエナに尋ねる。


エルナ:エナ。もしかしてウルザスマが余裕な態度を崩さない理由知ってるの?

エナ;うむ。神ならば分かって当然の事じゃ。

   と言っても、神になったばかりのチエには、今一ピンとこん話じゃろうがな。

チエ:? そうなのです?

エナ:うむ。神ならば分かって当然とは分霊の事じゃからな。

   チエはまだ、一体しか分霊を生み出しておらんからのぅ。


 ここまで、見ればもう分かる。そう、思い出したのだ。

 分霊は神本体から見れば、ある種の命のストックだと言う事をだ。


エナ:神の本体を倒すには、分霊と言う命のストックを削り切り、

   その上で、本体に止めを刺す必要があるのじゃ。

   長く生きる神ほど、多くの分霊を作っておるのじゃよ。

   まあ、その神の実力により、ある程度限度は有るのじゃがな。

   そんな訳で、わしらが分霊に止めを刺せなかったのは手痛い失敗なのじゃよ。

   しかも、二重の意味でじゃ。

エルナ:え、二重の意味って?

エナ;うむ。まず分霊を倒していればこのクエストは終わって居たのじゃ。

   そして、分霊とは言え倒せば『神殺し』の称号が得られたという事じゃな。

エルナ;なるほど。ウルザスマの分霊に止めを刺してたら、

    このクエストが終わってたって言うのは、確かに手痛い失敗だね。

    それで、『神殺し』の称号の効果って?

エナ:うむ。『神殺し』は、神の本体を倒すのに必須の称号と言われておるじゃ。

   何でも、相手の神の分霊の力を効率よく削る物らしいのじゃ。

   それに『神殺し』の称号は、大神相手にも有効じゃと言われておるしのぅ。

チエ:ええっと。話の流れからして、大姉様は『神殺し』の称号はお持ちではない?

エナ;うむ。だから、手痛い失敗なんじゃよ。困ったのぅ。


 うわぁ。これって分かり易く言うと、残機不明の敵ボスとの先の見えない戦って事ですよね。しかも、ウルザスマの態度から残機の事だけじゃなく、ウルザスマがまだ本気を出してないって分かるし。アレ? もしかしてこれって詰んだ?


 それにしても、『神殺し』の称号は、大神にも有効ってガチで必須の称号じゃね?

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