253 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉39 城塞巨兵サンガラーマ

 ボッ! 砂煙の中から巨大な影が立ち上がる。

 姿を現したのは、存外シンプルな城壁の直線を活かした巨大なゴーレムだ。


「あう……、勢いで吹き飛ばしてしましまいました。これじゃまた召喚されてしまいますね。失敗です。すみません」


 ああ、あの『次元変換出力機構エクスチェンジエミットドライブ爆炎エクスプロード』は勢いだったのか!

 失敗したと、桜がちょっとしょんぼりしてる。


「うにゅ。きっとエルナに似たのじゃ。気にしたら負けなのじゃ!」

「そうでしょうか?」

「しょうなのじゃ!」


 うん? チナさん? さり気にディスってません?


 それはさておき、僧兵達を乗せ現れたこのゴーレムは相当デカい。高さだけでも70mは優に超えるだろう。

 それと今更だが、岩鬼兵は兵種の様な物が有るようで、今まで出て来た物のサイズは3~5mだ。どうせまた召喚して来るだろうから書いて置く。


『城塞巨兵サンガラーマよ! 奴らを叩き潰せ!』


 GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!

 まだ滞留する砂煙を吹き払い城塞巨兵が前進する!!


『法術部隊! 城塞砲兵部隊! 砲撃を開始せよ!!』

『ってーっ!!』


 ドドォ――ン!! 前進する城塞巨兵上部や狭間から魔法攻撃と砲撃が放たれる!

 更に城塞巨兵の足元から、2~3倍ほどに巨大化した岩鬼兵が次々と姿を現す!!


 もちろん、わざわざ攻撃を受けるつもりは無いので。攻撃を回避しつつ反撃だ。


『火球流星撃!』

『ギガロックカノン!』


 エルナが素早く振るったセレスティアラインからは激しく燃え光る火球が放たれ。そして、金色千手阿修羅が構えた破照魔からは、50mは有りそうな岩石弾が城塞巨兵に向かって放たれる!

 エルナの放った火球もだが、あのめちゃデカい岩石弾が直撃したらただでは済まない。しかし、『ギガロックカノン』の岩石弾デカ過ぎません?


『っ!? 障壁展開ぃーっ!!』

『『『『『はっ! 意思なき岩石の兵共よ! その身を使い我らを守る岩壁へと姿を変えよ! 『岩鬼兵堵』!!』』』』』


 城塞巨兵の足元に湧き出る岩鬼兵達が、瞬時にその身を巨大な壁へと変える!

 ドゴォ――ン!! しかし、エルナの放った火球が、壁が出来る前に擦り抜け城塞巨兵の右肩に命中し爆発する!!


 ドゴバガァ――――――――ン!!!!

 火球よりも弾速の遅い岩石弾は、岩鬼兵の巨壁に激突し岩石弾共砕け散る!!


「今じゃな! 『壊濫霓龍爪』!!」


 ズオン!! ズドゴゴォ――――――――ン!!!

 岩塵を一掃するかの如く虹の輝きを帯びた超高圧の水爪が飛翔し、その後を追う様に荒ぶる水の龍達が城塞巨兵に殺到する!!


 GOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!

『ぎゃーっ!!』

『ぐわぁーっ!!』


 水爪は城塞巨兵に大きな傷を作り、その傷を水の龍達が砕き破り城塞内部の僧兵達を蹂躙する!! 


 ちなみに、『壊濫霓龍爪』のアーツは、龍気を宿した虹の水爪部分だけで、後追った水の龍はパッシブ効果の『重掌濫龍』による物だ。やっぱり、このパッシブ効果エグイな。


 GOOOOOOOOOOOOO!!!! 『ギガロング・ウォールナックル』!!!!

 城塞巨兵が大きく拳を突き出す!!


 ズッ!! ドォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 突き出された拳は、フィールドを分かつ新たな壁を築くかの如く巨大化し突き抜ける!!


「にゃんのっ! 『幻水煌焔閃』なのじゃ!」


 ズバァッ!!!! 城塞巨兵の拳が作り出した即席の巨大長壁が、チナのハルトネクタが生み出したプラズマの刃で真っ二つに切断される!!


 GOGO!? GOGOOOOOOOO!!!!

『なにぃっ!? なんだこれはっ!? こんな馬鹿な事が!?』


 流石に敵も、これには動揺を隠せない様だ。

 そして、そんな動揺を見越して、チエがアルウェロスの新たなアーツを発動する!


「追撃です。『波涛神輝』!」


 チエが、扇であるアルウェロスを舞を舞う様に優雅に扇ぐ。

 パッ! パッ! パパパッ!! と光の波が走り、ジュウワァッ!! と城塞巨兵の岩石の身体を蒸発させる!! 常に湧き続けている岩鬼兵も、崩れる様に蒸発して消えて往く!!


 えぇっ? もしかしてこれも、プラズマ攻撃なの?

 この威力で多段HIT&範囲も広いとか、これもエグイなぁ~。


『ぐあああっ!? 城塞巨兵に早く龍脈の力を流せ! このままでは城塞が落ちる!!』

『ぐぅっ!? 直ちに!』


「させませんよ! 『影鎖次元縛縄シャドウディメンションバインド』!!」


 ジャラララララララララァァァッッッ!!!!!

 城塞巨兵と城塞巨兵内部に発生した大量の影鎖が、僧兵達と城塞巨兵その物を拘束する!!


『こっ、これはぁ!?』

『身動きがぁぁ……!?』


 どうやら敵にはもう為す術が無いようだ。

 うん。これはもう完全に勝ったな。


「止めです! 『影鎖次元削刃シャドウディメンションスクラッチ』!!」


 ギャリギャリギャリ!!グゴォギャッ!!バッカァ――――――ン!!!!

 敵を拘束した大量の影鎖が、次元を削り引き裂く無慈悲な刃へと姿を変え、僧兵達と城塞巨兵の巨体をバラバラに削り裂く!!


『こんな筈ではっ!! ギドュニ様さえ居ればこんな事にわぁぁっ!!』

 GOGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!


 ドゴゴォ――――――ン!! 城塞巨兵が完全に崩れ落ち、湧き出続けた岩鬼兵も只の石塊とかす。


¶フィールドBOSS 城塞巨兵サンガラーマを撃退しました。

一定時間、〈呪霊灰山 山頂 呪界儀式門〉への交通が可能に為ります。


 お、アナウンスが流れたぞ。

 しかし、討伐では無く撃退で、山頂に行けるのは時間制限付きか。

 報酬も無いし。これはクエストクリアするまで、何度も復活するタイプのボスなのかな?


「やりました!」

「勝ったのじゃ!」


 うん。桜とチナが勝利を喜んでるし、このクエストは今日でケリを着ける心算だし、まあいいか。


「ふむ。創天様からの褒美はどうやら無いようじゃな。ちと残念じゃのぅ~」


 それはそう。でも弱かったし、何度も復活するタイプの様だから仕方ないんだろうなぁ。それにここは、ただでさえドロップを掠め取られる仕様だし、恐らく報酬何かに回されるエネルギーが、強制的にリスポーンに使われてるんだろう。


「討伐報酬が無いのは残念だけど。いよいよ山頂だし、気合を入れて行こう!」

「ふにゅ! 気合を入れるのじゃ!」

「がんばりますよ!」

「あと一息だし、気合を入れ直すか!」

「ふむ。この山のボスの顔を拝みに行くとするかのぅ」

「ふふっ♪ わたしを酷い目に遭わせた坊主に復讐です!」


 皆やる気だ。特にチエは、蛇に相応しい冷酷な表情を浮かべ、自身を変異呪物カースドエネミーに変えた元凶に復讐する気満々だ。


 それじゃあ回復して、バフをしっかり盛って山頂に向かうとしますかぁ!

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