250 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉36 宝物庫5

 今回はエルナ専用とは言え、今まで何度か見て来た大きな宝箱は流石に普通ではない雰囲気を感じる。まあ、今までのヤツは昇輝石しか出て来てないんだがな。


「それじゃあ、最後の宝箱を開けるよ」

「ふむ。取りじゃな」

「ふにゅ。エルナのお宝は、何が入ってるのか楽しみなのじゃ」

「ふふっ、きっと主様に相応しい物に決まってるのです♪」


 皆の視線を受けながら宝箱の蓋を開ける。

 大きな宝箱なだけあって光も派手に溢れ出し、アイテムが一つだけ出現する。

 んん!? どう見ても、極大昇輝石一個だけなんだが!?


「もしかして、昇輝石一個だけなの!?」

「いや、エルナよ。あれを見ると良いのじゃ。どうやら昇輝石一つではない様じゃぞ?」


 まさかの昇輝石一個だけか? と思ったのだが。

 エナの言葉とその指が差す方に視線をやると、大きな宝箱はまだ消えておらず。

 その宝箱からは未だに光が溢れ出し、宝箱の上に様々な色の光が尾を引きながら集まり膨れ上がって往く。


 集まった光がパァっと弾け、様々な色の光の尾を引きながらエルナに向かって降り注ぎ、その光はエルナに吸い込まれて往く。


「ええっ!? これは何が起こってるの!?」

「うむ。わしにも分からん!」


 そんなエナの言葉に何故か冷静になり、自分に飛び込んで来る光を良く見る事に。

 すると光は、一部を除きエルナの身体では無く。エルナが常に身に着けている、エルナの初期装備である神器の中にバンバン入り込んでいる事が分かる。

 そう、宝箱から飛び出してきた光が入り込むとエルナの神器が輝き、その数が増える毎に神器はより強い輝きを放つのだ。


「むむ。この光から神力を感じるのじゃ。エルナの装備に干渉しておるのか?」


 時間が経ち大きな宝箱が消え、エルナに向かって来る光も無く為り、神器の輝きもだんだんと収まって往く。


「終わった?」

「うむ。その様じゃな」


 完全に光が収まり、自身が身に着けている神器を見てみるが、何所も見た目が変わった様子は無い。


「何も変わってない?」

「いや、そうでは……!?」

『うにゃああああああああああっ!!!! 何晒してくれてんですかぁっ!! ソフィーちゃんの頑張りが水の泡じゃないですか!! 幾ら礎神の方々とは言えソフィーちゃんが姫様とお話したいのを我慢して作った自己強化案を台無しにするなんて絶対許せないのですよーっ!! ソフィーちゃん激おこなのです!!激おこなのですよーっ!!』


 ビックリしたぁ~。いきなり、ソフィーちゃんの絶叫で耳キーンってなったよ?


『う~、これじゃまたやり直しなのです……。パワーUPしたのは嬉しいですけど、こちらの事も考えて欲しいのです!』


 まだソフィーちゃんが何事かを呟いているのだが、ふと隣に気配を感じ目をやるとドレス姿の半透明の少女が、プンプン! とコミカルタッチなリアクションをして浮いていた。ゆ、幽霊……!? ってなんか違うな? もしかしてソフィーちゃん?


『ふぅ~、落ち着きました。姫様、お騒がせして申し訳ありません』


 さっきまでコミカルタッチだった半透明の少女が、急にキリっとして落ち着いた雰囲気を出す。


 ちなみに、エナ達の視線がその少女に向いてる事から、皆にも見えているし声も聞こえている模様。


「ええっと、ソフィーちゃんで良いんだよね?」

『はい、姫様。先程の礎神の方々の御力によって、姫様専用神器であるわたくし達が強化されました。お陰でわたくしは、精霊としてこの様な姿を得る事になりました。なので皆様、改めて以後お見知りおきを』


 ドレス姿の半透明の少女が、澄まし顔でエルナ達に向かって綺麗なカテーシーをする。うん。ソフィーちゃんてやっぱり二重人格だよね?


「うむ。よろしくの」

「よろしくなのじゃ!」

「よろ」


 エナ,チナとソフィーちゃんにちゃんと挨拶し、サレスは緩く適当に返す。


「主様の神器に宿る精霊なのです? つまり主様に仕える先輩なのです!? 先輩!よろしくお願いするのです!!」

『ふふふっ、チエさん。なかなか見所がありますね。同じ主君を仰ぐ先達としてわたくしがしっかりと指導してあげましょう』


 ソフィーちゃん、めっちゃ先輩風吹かすじゃん。

 チエにとってはぽっと出の先輩なのに、まあ当人同士が何か嬉しそうだから別に良いか。


「ソフィーちゃんさん、同じ精霊同士よろしくお願いしますね」

『ええ、よろしくお願いしますね。!』

「え、はい?」


 ソフィーちゃん、何でか桜に対して妙に凄んで話すなぁ。

 この二人、なんかあったっけ? う~ん。そう言えば桜を皆に紹介した時に、ソフィーちゃんが何故か桜をライバル視してたっけ? まあ別に、その時ソフィーちゃんと桜が、意思疎通を取れてたって訳じゃないんだけどな。


 ちなみに、神器精霊としての姿を得たソフィーちゃんの見た目は、所々差し色の様に薄い蒼が入った白銀のドレスに、これまた同じ色合いのティアラの様にも見える天使の輪? そして、同じ様な色合いの丸みをを帯びた可愛らしいロングブーツhソールが厚めだ。

 目は若干つり目がちの猫目っぽく、瞳の色は青味がかった銀色で、髪はオレンジ,ピンク,水色とトゥインクルソファイアの宝石を思わせる様なメッシュが入った、貴金属の様な光沢を持った白銀の長髪、それをハーフツインにしている。身長は124㎝位かな?


「それで、ソフィーちゃんはこの後どうするの? また自己強化案?の作成をするの?」

『そうですねぇ。こうなると次は進化の準備なのですが、星壇で姫様のBALV300のLVLOCKが解除しなければ、わたくし達も進化する事は出来ませんし、暫くは姫様のサポートに回りましょう。不本意では有りますが、わたくし達もパワーUPしましたからね。お役に立ちますよ』

「ほう。それは頼もしいのぅ」


 BALV300のLVLOCKね。となると、それまでソフィーちゃんも進化出来ないか。本来はそのLVの時にLVキャップが有って、種族進化するとLVキャップが解放されるんだけど。エルナの場合は、【紅月】の紅い鎖の力が疑似的なLVキャップになってるんだっけ。エルナ自身が星壇みたいなもんだけど、多分それダメだろうしちゃんとした星壇に行く必要が有るよなぁ。

 ま、エルナのBALV全然上がって無いんだけどね。

 とりまこのクエストが終わったら、エナにちゃんとした星壇に案内して貰おっと。


『それでは姫様、わたくし下がらせていただきますね』

「え、あ、うん。分かったよ」


 ソフィーちゃんの姿がスゥッと消える。


『それではシズル様。早速、礎神の方々に強化された、わたくし達の情報を提供いたしますね』


 消えたと思ったら早速、ソフィーちゃんが俺にしか聞こえない念話で話しかけて来る。ま、所謂内密の話ってヤツだね。


『確か、エルナが最初から身に着けている神器が、皆強化されたんだよね?』

『はい。それと、わたくし達以外にも強化された神器が二つありますね』

『マジで?』

本気マジです』


 そっかぁ。やっぱりあの宝箱、ただデカいってだけじゃなかったのか。




※エルナの装備更新まで話が進まなかったので、思ったより早く書き上がりました。

でも、ちょっと8月4日には間に合わなかったですね。すみません。

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