246 〈呪霊灰山 8,9合目 灰影庭園〉32 宝物庫1

 馬鹿見たいに広かったバトルフィールドが縮小して往き、宝が置かれる場所へと通じる扉が現れる。そして、その豪華絢爛な扉を見てチナとチエがはしゃぎだす。


「お宝楽しみなのじゃ!」

「期待大なのです!」


 本当にエングレイブドを倒したんだと安心する。

 チナとチエは、直ぐにお宝をGETしたいんだろうけど。

 これはちょっと一休みしたいよなぁ。


「漸くロボットさんを倒せましたけど。少し疲れましたね~」

「うむ。そうじゃのぅ。まあ、多少時間は掛かった様じゃが、問題無く倒せたし少しゆっくりしたいのぅ」


 お? 如何やらエナにとっては、エングレイブドとの戦闘は多少時間が掛かった程度と言う感じらしい。


「えっ!? あれで多少なんですか!? 時間の巻き戻しとか、体感的にはかなり時間が掛かったと思うのですけど?」

「ふむ。神格を有さないモノとしては、面倒な方では有ったかも知れんが、余力を残して尚且つこの速さで倒したのなら、多少時間が掛かった程度じゃとわしは思うのぅ」


 あ、なるほどね。神格持ちとの戦闘はめっちゃ時間が掛かる。静流覚えた。

 まあ、察したとも言える。で、そんなやり取りをして居ると。


「ふにゅ! しょれよりも早くお宝GETなのじゃ!」


 チナが我慢できないとエルナの袖を引っ張る。


「ああ、そっかそうだね! チナはお宝が気になるよね!」

「主様! わたしも気になります!」


 チナ言葉に触発されて、チエもチナとは反対の袖を掴んでエルナを引っ張る。


「ええっと、チエも? ちょっと休みたかったけど、もう行くの?」

「うにゅ! 早く行くのじゃ!」

「行くのです!」


 チナとチエにズルズルと扉の方に引き摺られる。


「ささ、主様、扉を開けて欲しいのです!」

「ふにゅ! 早くお宝みたいのじゃ!」


 チナとチエが、宝物の有る部屋へと続く豪華な扉をポンポン叩いて、早く開けてとエルナを急かす。


 う~む。少しくらい休みたかったけど、お宝が気になるのも事実。

 なので、宝物の有る場所へ通じる豪華絢爛な扉を開け放つ。


「お宝なのじゃ!」

「お宝なのです!」


 扉を開けると、真っ先にチナとチエがダッシュで部屋に飛び込む。


「いや~、チナとチエは元気だねぇ」

「うむ。ちと元気過ぎる気もするがのぅ」


 エルナが宝物部屋に足を踏み入れると、所謂金銀財宝と一際目立つ大きな宝箱に十の普通サイズの宝箱が並べられており、先に部屋に入ったチナとチエは金銀財宝で戯れていた。うん。ほんとに元気だね。


「アレ? なんか何時もの宝箱と違う感じだね?」

「確かに、何時も物とは違う宝箱が有りますね?」


 何時もの宝箱も有るにはあるのだが。それは、十一ある宝箱の内の五つだけで、大きな宝箱を含む残り六つの宝箱は特別な色合いと装飾の施された宝箱は、如何いかにも特別仕様と云った作りである。その宝箱をよく見ると。宝箱にそれぞれ別の名前が書かれており、それはエルナ達の名前だったのだ。


「ほう! これは、わしら個人個人に向けた宝箱じゃな! これはとんでもなく期待できるのう!」

「わちのお宝なのじゃ!?」


 エナの言葉を聞いてチナが、日に照らされた水面の様な明るい水色の宝箱に素早く抱き着く。あと丁度、外力甲冑から降りたサレスが地味に宝物部屋に入って来てた。


「ふにゅ~♪ これはわちのお宝なのじゃ♪ にゅへへぇ~♪」

「すると、この紅白の目出度い感じの宝箱がわたしのです?」


 チエの名前が書かれた宝箱は紅白と云っても、日本人が良く知る感じのあのデザインでは無く。宝箱の真ん中が宝石の様な赤で、後は白銀の色をした豪華な宝飾が施された宝箱だ。それぞれのイメージカラー的な物で合わせて有るのかな?

 うん。無駄に豪華だな。


「まさかの私専用の宝箱ですか……ごくりっ!」


 桜の宝箱は非常に分かり易く夜桜が描かれた物。エナの宝箱は深い青、サレスの宝箱は金と蒼のマーブル模様、エルナの宝箱は光の加減で縁が青から紫に変わる白金の宝箱だ。いやほんと、無駄にデザイン凝ってるよな。開けたら消えちゃうのにな。


「俺の宝箱なんでマーブル模様なの?」


 うむ。それは俺にも分からん!

 さて、それじゃまずは、個人に用意された物以外の宝箱五つを開けようと思う。

 五つの宝箱は、当然の様に最高レアリティの神樹の宝箱だ。


 宝箱を開けると演出効果の光が舞い、宝箱の中身が姿を現す。


 で、肝心な宝箱の中身だが。内訳は装備が二つで魔道具らしき物が二つ、残りの一つは昇輝石が沢山入っていた。

 装備品は、一つが青の月リネールをモチーフにした髪飾り(たぶん、アニマソムニアシリーズの最後の髪飾り)、もう一つが金字の意匠が施された黒い装丁の魔導書らしき物の二つだ。

 魔道具だと思もった物については、手に持って居ても装備品扱いされなかったし、見た目も玉を抱え込んだ龍の置き物とカップ型のトロフィーの様な物の二つだったが、多分これは魔道具なんだろうなと思っただけだな。

 ま、詳しくはティアーズクロワに収納して見ないと分からないな。


 ちなみに、昇輝石は見た所、大サイズの物までしか入って無い様だった。解せぬ。

 なのでまずは、昇輝石をティアーズクロワで確認したのだが。

 やはり昇輝石は、大サイズの物までしか入っておらず、ちょっと残念だった。

 まあ、数は28個と多かったんだけどね。


 では改めて、まずは魔道具だと思った二つのアイテムの結果がこれだ。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

龍脈星髄

新たな龍脈や霊脈を作り出す、または既存の龍脈,霊脈の再生等に使用される儀式消費型の祭神具。


聖征星壇サンアルペディラリウム

どの様な領域や異界で有ろうとも、聖征星壇サンアルペディラリウムを設置起動する事で星輝法則に則った領域を生み出し、更にその領域の拡大と定着を促す星神具。

その力で、星域展開による他の領域や異界等へ逆侵攻を行う事が出来る。また星輝を外部から供給する事で、供給量に応じてその力と効果を大幅に強化出来る。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ほうほう、なるほどなるほど。

 龍脈星髄の効果は、既存の龍脈,霊脈の再生等に使えるねぇ?

 うん。これは、どう考えても灰呪教及び【呪鬼】の影響を取り除いたら、エーランブラム山を元に戻すために使えって言われてる様にしか思えないな!

 全部終わったら脈筋を直す儀式をするのかぁ、儀式エナが居るから大丈夫だよね?


 で、この聖征星壇サンアルペディラリウムだけど。

 う~む。効果を見る限りエーランブラム山の星精さんは、今回の【呪鬼】の侵攻にガチギレしてるんだろうなぁって思う。

 いやだってこれ、異界に逆侵攻出来る神具だよ?

 どう考えてもめっちゃキレてますよねこれ?

 まあ、異界化領域の攻略にもめっちゃ使えると思うし、別に良いんだけどね?


「ふむ。山全体の霊脈も相当弱っておるし、わし等が登って来た8,9合目の力の脈筋はボロボロじゃった。龍脈星髄がお宝として入って居たのは順当な所じゃのぅ。それに、聖征星壇サンアルペディラリウムじゃったか? この様な強力な神具はわしも初めて見るのじゃ。それだけ期待されておるという事かのぅ」

「エナさん。何にせよ良い物が手に入ったと言う事で良いんですよね?」

「うむ。そうじゃの。このお宝だけでもあの守護者を倒した甲斐が十分あるのじゃ。しかもじゃ! まだ、わし等のために用意されたお宝が有るのじゃから、これは堪らんのう!」


 あ、流石に自分専用の宝箱にはエナも期待が隠せないらしく。

 ワクワクとエナの尻尾が左右に揺れ、思わず顔が緩みニマニマしてしまうようだ。

 まあ、ワクワクそわそわしてるのは、チナとチエも同じ見たいなんだけどね。

 それと、まだ髪飾りと本の装備をチェックをして無いから少し我慢してくれ。

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